【DEBUT】伝説のモビーディック「ポルシェ935」が復活!

公開日 : 2018/10/04 18:30 最終更新日 : 2018/10/04 18:30

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New PORSCHE 935

 

「モビー・ディック」と聞いてピンときたあなたは相当なポルシェフリークだ。1976年より世界メーカー選手権の掛かったグループ5(シルエットフォーミュラ)カテゴリーに参戦するべくポルシェが製作したレーシングカーが935。その935シリーズの頂点に位置するのが1978年シーズン用の935/78、通称「モビー・ディック」である。

 

 

モビー・ディックとは、ハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』に登場する巨大な白いクジラのこと。935/78はホワイトを主体にしたボディカラーと、長く伸びたテールゆえそう呼ばれる。3211ccのツインターボフラット6から845psを発揮、空力に優れたボディ形状を活かして、78年のル・マンでは366km/hを記録。マンフレート・シュルティとロルフ・シュトメレンのドライビングクルーにより総合8位に入賞した。

 

それから40年を経た今年の9月27日、ポルシェはアメリカ・カリフォルニア州ラグナ・セカで開催されたイベント、レンシュポルト・リユニオンにて「ポルシェ935」を発表した。「ポルシェが世界中のファンに送るバースデイプレゼントです」。モータースポーツ部門の副社長フランク-シュテフェン・ヴァリザー博士が語るように、創設70周年を迎えた同社の記念モデルだ。

 

「ポルシェ935」をひと言で言うならモビー・ディックへのトリビュートだが、単なる復刻版のレベルを超えた充実した内容を誇る。歴代マシンへのオマージュと、最新のテクノロジーと組み合わせたディテールを眺めていくことにしよう。

 

 

ベースはタイプ991.2の911 GT2 RSである。935/78の形状を見事に再現したボディシェルはアルミとスチールの混成で、CFRPとケブラーを素材にしたパーツを追加するなど、空力特性は完全な新設計に生まれ変わっている。フロントフェアリングに設けられたエアベントはその一例で、前輪に掛かるダウンフォースを強化する。当時のマルティニカラーを再現していることはいうまでもなく、「ポルシェ935」最大の見どころのひとつになっている。

 

 

空力的なホイールカバーは935/78を再現する一方で、リヤウイングエンドプレートのLEDテールライトは919ハイブリッドLMP1用を使う。サイドミラーは今年のル・マンのウイニングマシン911 RSR用を流用し、チタン製テールパイプは1968年の908に倣っている。

 

 

過去へのオマージュと最新のテクノロジーのペアリングはコクピットでも反復される。ギヤシフトノブはあの917を連想させるウッド。一方、CFRP製ステアリングホイールとカラーディスプレイは2019モデルイヤーの911 GT3 R用そのものだ。なお、計器クラスターにはデーターロガー一体型の「コスワースICD」が備わり、スポーツクロノウオッチとブースト計はヴィンテージ流の仕上げを施される。

 

 

現代のレーシングカーだけに安全性への配慮にも抜かりなく、巨大なセイフティケージと、6点式ハーネス付のレカロ製レース用バケットシートに加えて、ルーフにはFIAレギュレーションに準拠するエスケープハッチが備わる。PSM(ポルシェ・スタビリティ・マネジメント)、ABS、トラクションおよびスタビリティ・コントロールなど、最新デバイスを完備するのは心強い。これらは個々に調整することも、完全にカットオフすることもできる。なお、「ポルシェ935」はシングルシーターだが、オプションで2座席にできるし、エアコンが快適な操縦環境を提供する。

 

 

エンジンは911 GT2 RS用の3.8リッターツインターボフラット6をほぼそのまま使う。最高パワーは700hp。これに組み合わされるパドル付の7速PDKはフレームにリジッドマウントされる。

 

サスペンションはフロントがマクファーソンストラットで、鍛造アームが剛性を確保する。ダンパーは3ウェイのレース仕様。リヤはマルチリンクで、ユニボールジョイントを採用した。全輪ともホイールはセンターロック。ステアリングに可変レシオの電動パワーアシストが備わるところが現代のレーシングマシンらしい。

 

車重1380kgに対して700hpを誇る「ポルシェ935」は、制動性能も盤石だ。フロントは6ピストン・アルミモノブロックのレース仕様キャリパー。380mm径のベンチレーテッドディスクは鋳鉄製。リヤは4ピストンのキャリパーと355 mm径のディスクで、前後ブレーキバランス機構を備える。

 

 

受注はすでに始まっており、ベース価格は70万1948ユーロ。換算すると約9300万円ほどだ。現代のテクノロジーを駆使すれば、個人でもポルシェ935/78のレプリカを製作することは不可能ではないだろう。しかしそれには途方もない費用を要するはず。一方、「ポルシェ935」はすでに立証済みのコンポーネントを使った純然たるファクトリーモデル。安全性も信頼性もメーカーのお墨付きであることを考えると、バーゲンプライスと言っていいかもしれない。

 

 

ポルシェ自身この935を「クラブスポーツ・レーサー」と呼んでおり、これはまさに的を射た位置づけだろう。一見40年前のレーシングカーが、最新のスポーツレーシングカーをクラブマンイベントでカモる! 想像するだけでワクワクするではないか。

「ポルシェ935」は77台の限定生産。2019年6月「エクスクルーシブなイベント」にて納車という。最後の思わせぶりな言い方ひとつ取っても、ポルシェは実にマニアのハートを捕らえるのがうまい。

 

 

TEXT/相原俊樹(Toshiki AIHARA)

 

 

【オフィシャルサイト】

https://www.porsche.com/japan/jp/