【初試乗】驚愕の「マクラーレン セナ」に見た超高性能の実態。

公開日 : 2018/10/12 18:00 最終更新日 : 2019/07/21 19:21

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ここで大きな役割を果たしているのが前方に向かって鋭く突き出したフロントスプリッター、そしてリヤのダブルデッカー・ディフューザーと巨大なリヤウイングである。ちなみにフロントスプリッターの長さは、2013年にデビューしたアルティメット・シリーズの初作であるP1を150mmもしのぐ。また、ダブルデッカー・ディフューザーは2009年にF1チームのブロウンGPが編み出したもの。その効果は絶大で、プライベートチームに過ぎないブロウンGPをその年のワールドチャンピオンに押し上げたほど。このためFIAはただちにダブルデッカー・ディフューザーを禁止したという、曰く付きの空力デバイスである。

 

ただし、セナは800kgものダウンフォースをのべつまくなし生み出すわけではない。フロントはヘッドライト下のエアインテーク内に設けられたアクティブエアロブレードにより、リヤはウイングの迎角により、常に最適なエアロダイナミクスを生み出すように制御されるのだ。たとえばフルブレーキング時にはリヤウイングの迎角が25度まで立ち上がってボディが前のめりになるのを防ぐと同時に、リヤタイヤを強く路面に押しつけてブレーキングパワーを拡大する。反対に、直線を高速で走行する際には前後のダウンフォースを極力減らして空気抵抗を減少させ、ストレートスピードを伸ばす。いずれも、やはり効果が大き過ぎるとしてモータースポーツの世界では禁止された可変空力デバイスの思想に基づくものだ。

 

 

エアロダイナミクスでもうひとつ興味深いのは、ダウンフォースの合計が800kgを上回らないように常に制御されることだ。これは後述するサスペンションにも関連することだが、ボディに加わる下向きの荷重があまりにも大きすぎると、サスペンションが支えきれずにボディが底付きを起こす。これを防ぐためにサスペンションを硬めれば、いかにサーキットといえども足まわりがしなやかにストロークしないためにタイヤの接地性が失われるほか、公道(そう、セナは公道走行が可能なロードカーでもあるのだ)では乗り心地がハード過ぎて実用的ではなくなる恐れがある。そこで車速が250km/hを越えると前後の可変空力デバイスを精妙に制御し、ダウンフォースが800kgを越えないように工夫されているのだ。

 

サスペンションにも最新のテクノロジーが注ぎ込まれた。そのシステムはレースアクティブ・シャシー・コントロールⅡ(RCCⅡ)と呼ばれるもの。その原型であるレースアクティブ・シャシー・コントロール(RCC)はP1に搭載されてデビューしたが、原理は金属バネを油圧系とアキュムレーターで置き換えたハイドロニューマティック・サスペンションに近い。その目的は、車高の制御が可能であることと、ダウンフォースによって大きな荷重がのしかかったときにスプリング・レートが急激に上昇してボディの底付きを防ぐ特性にある。つまり、RCCⅡとアクティブ・エアロダイナミクスは常に連携しながら最高のパフォーマンスを実現しようとするのだ。

 

 

では、RCCとRCCⅡの違いはどこにあるのか? 720Sのサスペンションはハイドロニューマチック式ではなく金属バネを用いるが、そのダンパーにはマクラーレン独自のプロアクティブ・シャシー・コントロール(PCC)を進化させたプロアクティブ・シャシー・コントロールⅡ(PCCⅡ)を採用する。これはホイールハブに取り付けた加速度センサーとダンパーの油圧流入出量を検出するセンサーの計3個(ダンパーは伸び側と圧縮側のそれぞれにセンサーを設置)を4輪に設けることでホイールの動きを正確に検知し、フィードバックというよりはフィードフォワード的に減衰率を制御するシステムで、従来のPCCよりもさらにボディの姿勢を緻密にコントロールできる。つまり、このPCCⅡとハイドロニューマティック・サスペンションを組み合わせたものがRCCⅡで、マクラーレンの最新の英知とノウハウを結集した足まわりといえるだろう。