【TOPIC】ベントレーとロイヤル・カレッジ・オブ・アートによる「未来の英国的ラグジュアリー像」
公開日 : 2018/10/19 07:55 最終更新日 : 2018/10/19 12:26
2050年のベントレーを創造する。
芸術やデザインの分野で世界をリードする教育機関「ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)」にインテリジェント・モビリティ・プログラムという専攻課程があるのをご存じだろうか。いわば未来の自動車デザイナーと設計者を育てるコースだ。そこで学ぶ学生たちにベントレーが、ある研究テーマを持ちかけた。題して「英国的ラグジュアリーの未来(the future of British luxury)」
自身RCAのビークルデザイン プログラムの卒業生で、現在ベントレーのデザイン・ディレクターを勤めるステファン・ジーラフが今回のアプローチを次のように説明する。
「ベントレーは常にラグジュアリーカーの最前線に立っています。このアプローチを通してミレニアル世代の学生たちに将来のビジョンを問いかけようと思いました」
最前線のポジションをキープするためのひとつの方法だという。そしてジーラフはもう一歩具体的に解説する。
「私たちは、世界のデジタル・ネイティブ(=生まれたときからデジタル機器に囲まれて育った世代)の視点を通して、新しく、興味深い方向にベントレーを導く可能性のあるアイデアやコンセプトを探求しようと考えたのです」
2050年の高級車像を模索するのがテーマ。インテリジェント・モビリティの学生は未来の自動車をデザインする人材なだけに、この目的には恰好な対象だったといい、今回のチャレンジが胸躍る結果をもたらしたとコメントする。
「英国的ラグジュアリーの未来とは」というテーマを受けて、24名の学生から回答があった。その中でRCAの講師とベントレーのデザイン・チームがとりわけ刺激を受けたアイデアをいくつか紹介しよう。
『ラグジュアリー・サウンドスケープ(贅沢な音の風景)』
未来の高級車では「音」が重要な役割を果たすという考え。望まない音やストレスになる騒音をブロックする一方、快適な音を残せる自動車をテーマとして、「音の風景」が乗員の健康、体感する心地よさや旅の経験に及ぼす影響を考察した。《Irene Chiu 作》
『マテリアル・ヒューマニティ(形を有する人間性)』
2050年に顧客が高級車に求める資質とは「意外性」と「エモーション」だという考え。未来の世界が完全に自動化され、電動化されたとしても、時にはエンジン付きの自動車を自分自身で運転する選択肢を残すことが真の贅沢であるとの提言。今日の高級機械式腕時計と同様、伝統的なエンジンが貴重品となり、人々はメカニカルな仕組みに惹かれるだろうという。《Kate NamGoong 作》
『ストラトスフェリック・グランドツーリング(成層圏へのグランドツーリング)』
自宅がどこにあろうと海外への出張を制限しないというシナリオ。成層圏へいたる旅が持続可能になるという考え。《Jack Watson 作》
『エレガント・オートノミー(優雅な自動化)』
運転手のいないスマート・シティ用のクルマでも、エレガンスや英国的な礼儀正しさが重要だという見解。乗車時および降車時のエチケットは馬車の時代から現代の自動車まで引き継がれており、自動運転化の世界でも発達し続けることに着目した。《Eunji Choi 作》
いかがだろう。自動車好きの共感を呼びそうな主張もあれば、いささか荒唐無稽に思える発想もある。RCAでインテリジェント・モビリティのシニア・チューターを務めるクリス・ソープ博士は次のように述べて、ベントレーのアプローチを歓迎する。
「明日のパーソナルな旅も今と同様、エモーショナルな体験になるでしょう。進化する文化、ディスラプティブテクノロジー(=既存の技術を根本から覆す技術)、そしてなにより一人ひとりの欲求が未来のクルマを変えるのですから。ベントレーが25年後の自動車の『ラグジュアリー』を見たいと希望したときから、ここの学生たちはその問いかけに取り組みました」
傍目には悠々と独自の道を歩んでいるように見えるベントレーだが、今回紹介したように産学共同の地道な研究を怠ることなく、未来を模索しているのである。
TEXT/相原俊樹(Toshiki AIHARA)
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