【再考】頼もしい意外性「キャデラックXT5 クロスオーバー」
公開日 : 2018/10/23 11:55 最終更新日 : 2018/10/23 15:37
CADILLAC XT5 CROSSOVER
キャデラックほど誤解されているブランドはないと思う。欧州車派の多い日本では無理もないことかもしれないが、しかし、乗ってみれば一目瞭然、衝撃を受ける可能性すらある。その代表こそこの「XT5」だ。その理由をお伝えしよう。
REPORT◎野口 優(Masaru Noguchi)
PHOTO◎小林邦寿(Kunihisa Kobayashi)
現在、キャデラックのSUVは、エスカレードの他にこの「XT5クロスオーバー」がラインナップされている。欧州車派の多い昨今においては、おそらくさほど気にしていない存在かもしれないが、しかし一度でもそのステアリングを握ったら分かるはずだ。その昔のアメ車ではないことを。何しろ、私自身がそうである。デカくて重くてユルい印象を長年にわたって勝手に引きずっていたことを深く反省したくなるほど最新のキャデラックは違う。それほど驚くくらいのレベルに仕上がっている。
まず、走り出し早々に思い知らされる。良いクルマというのは10mも動かせば分かると言われているが、XT5もまさにそれ。4輪がしっかりとスクラムを組み、抜群の接地感をドライバーに伝えてくる。これだけでも感心してしまうのだが、さらに驚くの乗り味だ。特にここで試乗したのがプラチナムという上級グレードだけに、リアルタイムダンピングサスペンションを搭載しているとあって、路面の状況を瞬時に判断し、減衰力を自動調整して常に快適な乗り心地を維持する。フロントにマクファーソン・ストラット、リヤにマルチリンクという基本構成と相まって、その感触はほぼ欧州車的と言ってもいいだろう。
だから、ちょっとした街乗りはもちろん、長距離ドライブに出かけても不快感など皆無で、むしろ高速道などでは、スタビリティの高さもあるため、巡航速度は上がってしまう傾向にあるのは間違いない。それに加えてハンドリングも的確だ。だからカーブひとつ曲がるにも、ほとんど昨今のヨーロッパ産SUVと比較しても遜色ないどころか、むしろ曲がることを楽しめてしまう。そんなセリフは信じられなかもしれないが、これは紛れもない事実である。ボディ剛性も高く、そして軽量化も体感できるほど完成度は優れている。
搭載エンジンにしてもそうだ。3.6リッターV型6気筒DOHCユニットは自然吸気式ということもあって、回り方が実にナチュラル。最高出力の314psは6700rpm、最大トルクは375Nmを5000rpmで発生させるため、スペック的には低回転域に不満が残りそうに思われるが、実際には非常に扱いやすくセッティングされていて、けっして遅いなどとは思わない。しかも振動も少なく、Boseのアクティブノイズキャンセ—ションを搭載しているおかげで極度なエンジンの主張を感じないのがかえって好感がもてる。アクセルの踏み出しに対しても動きが滑らかだから普段使いには最適で自然に足として使いたくなる。もちろん、その気になりたければスポーツモードを選択すればいい。レスポンスは向上し、8速ATも高回転域でシフトしていくから、その加速にも十分に満足するだろう。
そして内装。シンプルながらも上質に仕上げられている。それに加え、ウルトラビューパノラミック電動サンルーフは開放感が得られるし、ラゲッジスペースも広大。アップル・カープレイやアンドロイド・オートとの連動も可能で、リヤカメラモニターの搭載や先進のACC&レーンキープアシストも信頼できるレベルにあるから申し分ない。
このXT5、超高性能車ではないとはいえ、SUVの場合これくらいがちょうど良いと思うのは私だけではないはずだ。やみくもにスポーツばかりを謳い文句にする最近のSUV界にとって、ベーシックとは何かを教えてくれる1台だと思う。
【SPECIFICATIONS】
キャデラック XT5 クロスオーバー プラチナム
ボディサイズ:全長4825×全幅1915×全高1700mm
ホイールベース:2860mm
車両重量:1990kg
エンジン:V型6気筒DOHC
総排気量:3649cc
最高出力:231kW(314ps)/6700rpm
最大トルク:368Nm(37.5㎏m)/5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式:前マクファーレンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後235/55R20
車両本体価格:754万9200円(税込)
【問い合わせ】
GMジャパン・カスタマーセンター 0120-711-276
- CATEGORY : IMPRESSION 国内テスト
- TAG : キャデラック、XT、クロスオーバー