【INTERVIEW】勢いに乗る「マクラーレン」の戦略を訊く。

公開日 : 2018/10/24 11:55 最終更新日 : 2018/12/15 19:23

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2025年までに年産6000台を目指す根拠とは。

 

2009年の設立以来、マクラーレン・オートモーティブの勢いは凄まじい。近く公開されるアルティメットシリーズの最新作「BP23=スピードテール」の話題もさることながら、その直前には「セナ」を、そして「600LT」なる新作を次々に送り出し、しかもカスタマーだけでなく、我々ジャーナリストも含めて絶賛され続けている。

 

そんなマクラーレンは、その勢いを象徴するかのように2016年の時点で「Track25」という新たなビジネスプランを発表。2025年までに18のニューモデルを導入し、全シリーズをハイブリッド化、新たなマーケットへの参入を検討するうえ、生産台数を年間6000台にまで増やすと公言した。無論、これはスポーツカーのみで、けっしてSUVやサルーンを含めた数ではない。

 

マクラーレン・オートモーティブ・アジアのマネージング・ディレクターを務めるジョージ・ビックスが語る。

 

George Biggs

マクラーレン・オートモーティブ・アジア

マネージング・ディレクター

 

 

「2025年までに6000台という計画は、当然ながら根拠があっての数字です。我々が独自で市場の動向や傾向を分析したところ、これだけの台数が売れると判断しました。もちろん、他社の実績も含めたうえでの結論です」

 

この6000台という数値は、フェラーリの年間生産台数に迫る勢いだ。しかし、フェラーリは、ルッソシリーズに12気筒とV8モデルという2ラインナップ体勢で4シーターモデルを用意するうえ、エントリーモデルにポルトフィーノのような2+2シーターオープンまで揃える。マクラーレンは、2シーターのみ。しかもスポーツカーしか造らないとまで断言している。

 

「2016年に明確な答えを見つけることができました。この年だけで約2倍の伸び率です。アジアパシフィック地域だけでみても、4〜5年前までは全体の10〜12%でしたが、2016年以降、今現在で17〜20%のシェアを記録しています。ヨーロッパも増えていますし、今後も確実に増えると見込んでいます」

 

 

ビックスはそう語りながら、さらに言葉を重ねる。

 

「我々がこうして伸びてこられた理由は複数ありますが、その中でもまずはプロダクトを高く評価されたからだと思います。そして、ドライビング・エクスペリエンスなどのカスタマーイベントです。実際にマクラーレンのパフォーマンスを実体験することによって、私たちが届けるクオリティの高さをあらためて知って頂けているためです」

 

そしてこれからも、そういったカスタマーイベントのドライビング・レッスンやロングツーリングなど色々なかたちで交流できる機会を設けたいとビックスは語る。とはいえ、それもさらに高い完成度を実現したプロダクトにかかっているとも加えた。

 

 

小さい会社だからこそ実現可能な高次元のクオリティ。

 

その一方、同時に来日していた、デザイン・ディレクターのロブ・メルヴィルはこう語り始めた。

 

Rob Melville

マクラーレン・オートモーティブ

デザイン・ディレクター

 

 

「マクラーレンは小さな会社ですが、それだけに一体感があります。今のモデルは、けっしてデザインだけでは成立できません。技術チームと協力しあって、タッグを組むようにして開発は進められます」

 

マクラーレンのデザインには一貫性がある。それでいて、スーパーシリーズ、スポーツシリーズ、そしてアルティメットシリーズなど、実用性や機能性、さらにパフォーマンスも大きく違ってくるが・・・。

 

「デザインするうえで重要視しているのは、基本的に『純粋性』と『真実性』です。とはいえ、まずイメージをスケッチに描いてから技術チームとディスカッションを重ねます。600LTもそうですが、排気口を上方に配置するなど、私たちも最先端の技術を取り入れたうえでデザインを成立させる必要があります。思うように仕上げられないなどといったことは今までありません。むしろ、新しい試みが生まれるなど、チームだからこそ成し得るデザインに仕上がっていると思います」

 

最近のスーパースポーツカー界では、エアロダイナミクスへの取り組みが著しい。その中でもマクラーレンは一歩抜きん出ているのは確かだ。そういった条件の中、デザイナーは何を思うのだろうか?

 

「美しさと機能は一体です。技術チームからのリクエストもあれば、デザイナーから希望を伝えることもあります。小さな会社だからこそ、こうしたチームワークが生きてプロダクトに『機能』と『美』が生まれる。これが我々のやり方で、メリットからデメリットまで何でも話し合って生産化に結びつけます。エアロダイナミクスに関してもそうです。技術チームの条件から美が生まれることは当然なのです」

 

 

マクラーレンの計画「Truck25」には今後すべてのモデルを対象にハイブリッド化するとあるが、メルヴィルはどう思っているのだろうか?

 

「ハイブリッド化するには様々な条件が課せられることは重々理解しています。バッテリーやモーターによって重量は増していきますから。しかし、それを踏まえたうえで、エアロダイナミクスを煮詰めていきます。かなりやり甲斐のある仕事となるでしょう。エアを逃がす方法やオープンエリアをどうするかなど、プロセスも高度化していきますが、徹底的に取り組むつもりです。期待していてください」

 

ところで、マクラーレンをデザインするうえで何をイメージしているのだろうか? 素朴な疑問を投げてみたところ、こう答えた。

 

「720Sの時は400m級、セナは100m級のスプリンター、そしてBP23(スピードテール)は、水泳選手をイメージしました。特にアルティメットシリーズは、テクニカル面で求められるものが多いですが、デザイナーの立場から言わせてもらうと極めてユニーク。それに実用的なところも創造します。スポーツシリーズであれば日常性を考慮したり、スーパーシリーズは性能的なところを重視したりとデザイナーにとっても機能を形にしていく作業は永遠のテーマです」

 

確かにそう主張するだけの説得力があるのも事実。初期の頃のマクラーレンは、本当にカバンの置き場所にも困るほどストイックだったが、今の570GTなど、機内持ち込みサイズのスーツケースが入るくらいのスペースは確保されている。これはカスタマーの声を反映させた結果だと加えた。メルヴィは、「これからも皆さまから頂いた声を反映していきます」と語り、このインタビューを締めくくった。

 

 

TEXT/野口 優(Masaru NOGUCHI)

PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

 

 

マクラーレン麻布

今回、インタビューを行ったのは、東京都港区に新ショールームをオープンした「マクラーレン麻布」。広尾に近く外苑西通りに面した一等地にマクラーレンの新CIに基づいてデザインされている。車両3台の展示に、映像を通じてマクラーレンの世界観を演出するほか、MSOなど特殊な仕様やグッズ類をギャラリー的に展示・構成されている。

 

 

マクラーレン麻布

住所 東京都港区南麻布5-2-32

電話 03-3446-0555

営業時間 10:00〜19:00(水曜日 定休)

http://www.azabu.mclaren.com/