【DEBUT】軽量&ハイパワーオープンの「フェラーリ488ピスタ スパイダー」初披露

2018/10/05 18:30

Ferrari 488 Pista Spider

 

2018年のペブルビーチ・コンクール・デレガンスで初めて姿を現した「フェラーリ488 ピスタ スパイダー」をご記憶の方は多いだろう。フェラーリは10月2日に開幕したパリ・サロンにこの488 ピスタ スパイダーを展示、晴れて正式なデビューを果たした。フェラーリとって50台目のオープントップモデルにして、同社史上もっともパワフルなスパイダーと謳われる488 ピスタ スパイダー、その概要を見ていこう。

 

 

488 ピスタ スパイダーをひと言で言うなら、先にリリースした488ピスタのリトラクタブルハードトップ版だ。しかしそこにはフェラーリの最新技術が随所に凝らされている。まずはエンジン。排気量3902ccのvV8ツインターボエンジンは、720ps/8000 rpm(488スパイダー比で+50ps)の最高パワーと、770 Nm/3000 rpm(同じく+10 Nm以上)の最大トルクを発揮する。最高出力とリッター当りの出力(185ps/リットル)の両方で、もっともパワフルなV8オープンモデルになった。

 

 

このV8の性能を極限まで使い切るのに有効なツールが、レブリミッターのセッティングに隠されている。488 ピスタ スパイダーのレブリミッターは、レッドラインの8000rpmに向かうに連れて徐々に回転の伸びを抑えるのではなく、リミットを超えた時点で一気に作動するのだ。これでエンジン性能をとことん使い切りたいとき、リミット直近の高回転域でも踏めば最大のパワーが得られるという。

 

 

すでに488スパイダーで高い効率を追求したV8だが、488 ピスタ スパイダーでこれほどのパワー&トルクの上乗せに成功したカギのひとつは、冷却能力に強化にある。インタークーラーを488 スパイダー比で25%も大型化した。しかしこれに伴って放熱面を広く取ると、重量とCd値が増えてしまう。そこでエンジン担当のエンジニアチームは空力チームと連係し、ボディ全体を見直した。その結果、放熱面積の拡大を7%に抑えることに成功したという。

 

 

フロントに置かれたラジエターのレイアウトも注目に値する。従来とは逆にラジエターをリヤ方向に傾け、熱気をフロントホイール前のアンダーボディに導いて排出させる。これで、リヤに搭載したインタークーラーの冷却性能が10%改善しただけでなく、アンダーボディを通過する気流を増やすことができた。

 

 

488 スパイダー比で効率が20%も改善されたエアロダイナミクス面にも見どころは多い。まずF1由来のSダクト。フロントバンパー内のインテークから入った気流はノーズ内部のダクト(これがS字形をしているのでそう呼ばれる)を抜けて、ボンネット上のベントから排出され、フロントアクスル上に効くダウンフォースを生み出す。またフロントインテークに工夫を凝らすことで、この部分のCd値の増加をわずか2%に抑えながら、488スパイダー比でダウンフォースを18%強化している。

 

 

アンダーボディのボーテックスジェネレーターも最適化され、形状と長さを見直したことでダウンフォースを10%強化した。リヤではブロウンスポイラーとリヤホイール後方のベントがダウンフォースの強化に貢献する。ブロウンスポイラーとはリヤウインドー基部にスリットを開けて、前方から流れてくる気流の一部を後方に抜くことでドラッグを軽減させる空力処理。このスポイラーは488 スパイダーと比べて30mm高く、40mm長い。しかもスポイラー下を通過する気流を整えた結果、488スパイダー比でダウンフォースは25%高まった。

 

 

ビークルダイナミクスに関しての注目は、フェラーリ・ダイナミック・エンハンサー(FDE)。サイドスリップアングルを始めとする横方向のダイナミクスを制御するデバイスだ。具体的には、旋回中やコーナー脱出時にキャリパーを軽く作動させてブレーキディスクとの間隔を詰める。つまりサイドスリップアングルの変化を管理することで、ドライバーは容易に横方向の動きを予測し制御できる。新世代のサイドスリップ・コントロールシステムSSC 6.0システムにFDEを組み込むことによって、ドライバーの技量に関係なく、限界域での性能をより簡単に引き出し、意のままにコントロールできるようになった。

 

 

マラネロの技術陣は超軽量素材を積極的に導入して軽量化を推し進めた。エンジンカバー、前後バンパー、リヤスポイラーなどをCFRP製とし、リヤウインドウにレクサンを採用したのはその一例だ。結果として、空車重量は1485 kgに仕上がった。

 

ブレーキシステムはゼロから見直し、サーキット走行に備えて冷却性能を改善した。サーボは488 チャレンジの改良型を装備。あらゆるコンポーネントを軽量化した結果、200-0 km/hの制動距離は488 スパイダーよりも1m短縮された。

 

 

フェラーリで初めて20インチのCFRP製ワンピース・ホイールがオプションで用意されるのもトピックだ。鋳造ホイールより20%軽いだけでなく、航空宇宙産業から生まれた特殊コーティングの働きで、制動中に生じる熱を効率的に発散させる。組み合わされるタイヤはミシュラン・スポーツカップ2だ。

 

488 ピスタ スパイダーは0→100 km/hを2.85秒で加速し、フィオラーノのラップタイム1分21秒5をマークする、フェラーリ史上もっとも高性能なスパイダーである。おもに公道車輌として開発されたモデルだが、サーキットでも卓越した性能を発揮するよう設計されているのは言うまでもないだろう。コート ダジュールの海岸線に沿ったプロムナードをオープンでゆったり流すもよし、クラブイベントでサーキットを全力疾走するのもまたよし。まさにスポーツドライバーが夢見る「the best of both worlds」を形にしたフェラーリである。

 

 

TEXT/相原俊樹(Toshiki AIHARA)