【初試乗】驚愕の「マクラーレン セナ」に見た超高性能の実態。

2018/10/12 18:00

McLaren SENNA

 

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)

 

 

本当の凄さはちょっと分かりにくい。

 

もしも1000psを越えるパワーや電気仕掛けのハイテク装備を搭載していたら話は違っていただろう。けれども「セナ」の見どころは軽量化、エアロダイナミクスの改良、サスペンションの進化などがメインで、それによって得られる効果を説明するのは難しい。しかし、価格およそ1億円で500台が限定生産されるセナは、2018年3月のジュネーブショーで発表されたときにはすでに完売していた。セナのどこがマクラーレン・ファンの関心をこれほど鋭く惹きつけたのか? まずはそこを説明しよう。

 

 

セナのベースとなったのはマクラーレンの最新モデルである720S。カーボンモノコックを用い、ボディパネルにもコンポジット素材が全面的に採用された720Sの乾燥重量は1283kgとすでに十分以上に軽いが、セナはそこからさらに100kg近くも削り取って1198kgの超軽量設計を実現した。もともと余分なものをたくさん積んでいたのであれば100kgの軽量化もさして難しくなかっただろうが、軽量設計を旨とするマクラーレンにとって100kgのダイエットを実現するには、それこそ血の滲むような努力が必要だったはず。

 

たとえば、カーボンコンポジット製フロントフェンダーの重量はわずか660g(!)しかなく、単体で手にするとそれこそ紙のように軽い。強大なダウンフォースを受け持つリヤウイングでさえ、その重量はたったの4.87kgで、強固な構造で安全性の高いカーボンコンポジット製のシートシェルは1脚あたり3.35kgに留まっている。そうやって、様々な部品の重量をわずかずつ削減して1198kgという驚異的な乾燥重量を達成したのだ。

 

 

ちなみにこの車重は、マクラーレンの伝説的名作であるF1ロードカーの1018kgに次ぐもので、歴代マクラーレンとしては2番目の軽さだという。ただし、F1がデビューした1990年代初頭は安全性の基準がいまほど厳しくなく、エアバッグなどを搭載する必要がなかった。このため、もしもF1が最新の安全規制に従って製作されていたらセナよりも重くなっていただろうとマクラーレンの関係者は言明していた。

 

エアロダイナミクスへのこだわりも常識を越えている。なにしろ250km/h走行時には歴代マクラーレンとして最高値となる800kgものダウンフォースを生み出すという。つまり、高速時には車重の2/3近い力が気流によって生み出され、ボディをさらに強く路面に押しつけてタイヤのグリップ力を飛躍的に向上させるのだ。