【EVENT】祝50周年! 歴代ジャガーXJと過ごす贅沢な旅。

2018/10/21 19:00

50 YEARS OF JAGUAR XJ

ジャガーXJシリーズ 50周年記念イベント

 

REPORT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

 

 

XJの故郷からパリまで全8モデルをイッキ乗り!

 

2018年は記念すべき120回目の開催になるというパリ・モーターショーで、ジャガーがXJシリーズの50周年を記念した特別展示を行うという情報は事前に聞いてはいたものの、よもやその貴重なモデル達を、XJシリーズの故郷ともいえるジャガーのキャッスル・ブロムウィッチ工場から一路イングランドを南下、ウエスタン・チャンネルをフェリーで渡った後に最終目的地のパリまでドライブするという、重要な役割を自分が担うことになるとは。実際にその話を頂くまでは想像すらできなかった。

 

ビッグマイナーチェンジを含めれば、8世代とカウントすることができるジャガーXJシリーズが誕生したのは1968年のこと。それから半世紀の間にXJがどのように進化を遂げたのか、そしてXJという伝統の称号とともに何を継承してきたのかを味わいながら、8世代すべてのステアリングを握ることで再確認してみようというのが今回のツアーの目的なのだという。1938年に戦闘機工場として建設され、その後ジャガーによってXJを始めとするさまざまなモデルが生産されたキャッスル・ブロムウィッチ工場、ここをツアーのスタートとしたのも歴史を知れば当然の話だ。

 

 

世界中からこのイベントに招かれたメディアをふたつのコンボイに分けてスタートした。このツアーでまず目指したのは、30分ほどのドライブで到着したジャガー・ランドローバーが2017年に設立した、ジャガー・ランドローバー・クラシックワークスがあるジャガー伝統のコヴェントリー工場だった。クラシックカービジネスには、近年多くのメーカーが参入を果たしているが、ジャガー・ランドローバーは、そのためにコベントリー工場内に1.4万平米の専用施設を新設。10年以上前に新車生産が中止されたモデルをクラシックと定義し、54のワークベイを持つファクトリーでメンテナンスやレストアを行うほか、レジェンド・プログラムとして、さまざまな事情から生産できないままになっていたクラシックモデルの生産も行っている。かつてデリバリー前に火事によって9台が焼失したXKSSもこのプログラムで再生されたモデルの代表作だ。

 

 

本来ならば、このジャガー・ランドローバー・クラシック・ワークスのファクトリー、そしてガレージだけでも一日をフルに楽しめるだけの話題に満ち溢れているのだが、今回はあくまでもツアー途中のコーヒーストップとして立ち寄ったのみ。ここからがツアーの本番であることは手渡されたルートマップを見れば誰の目にも一目瞭然だった。ましてや今日は、夕方にはポーツマスを出港し、ウェスタン・チャンネルをわたるカーフェリーに、ふたつのコンボイに分かれたすべてのXJ、そしてサポートカーやカメラカーなどを載せなければならないという何より優先すべき制約もある。

 

 

我々のコンボイに与えられたXJは、1973年式「ディムラー・ダブルシックス・ヴァンデンプラス・リムジン(シリーズ1)」、1978年式「ジャガーXJクーペ V12(シリーズ2)」、1987年式「ジャガー・ソブリン4.2(シリーズ3)」、1988年式「ディムラー・3.6 AUTO(XJ40)」、2001年式「ジャガー・XJ8 AUTO(X308)」、2008年式「ディムラー・スーパー V8(X350)」、そして現行のX351からは、史上最速のXJとも評される「XJ575 SWB」と、XJ生誕50周年を記念した特別仕様車の「XJ50」という実に豪華絢爛なラインナップだった。これらのモデルをグッドウッドやル・マンといった、こちらもジャガーの歴史を華やかに彩る場所を訪ねながら最終目的地のパリへとドライブしようというのだからツアーへの期待は大きい。

 

 

実際にステアリングを握った順番は別として、個人的に最も大きな感動を得たのは、やはりXJシリーズの始まりであるシリーズ1の走りが、GT=グランドツアラーとして現代にも十分に通用するパフォーマンス、そしてラグジュアリー性を秘めていることを全身で感じた瞬間だった。しかも今回ドライブしたのは、1973年式と、シリーズ1としては最終モデルにあたるダブルシッックス=V12のロングホイールべース。ヴァンデンプラスの名前を冠しているだけあり、フルレストアが施されたインテリアは、まさに高級感に満ち溢れたものだった。これならばどれだけ長い距離を移動しても残るのは満足感だけだろう。常にスムーズでトルクフルな印象を崩さない5.3リッターのV12エンジンは、間違いなくこの時代を象徴する名作といえる。

 

 

後にXJ-Sシリーズが誕生したことで、XJとしてはシリーズ2にのみ設定されたクーペは、その造形を鑑賞するのも、そして実際に走りを楽しむことにも、いつまでも飽きなかった1台だ。最初に訪問したクラシック・ワークスのファクトリーで、まず我々ゲストを出迎えてくれたのも実はこのXJクーペだったから、あるいはこのモデルに対する人気や興味は、ここ最近さらに高まっているのかもしれない。驚かされたのは、やはり5.3リッターのV12エンジンのパフォーマンスで、「2ドアリムジン」とはまさに的を射た表現で、その乗り心地とハンドリングの巧みなバランスや、後席での快適性などさまざまな要素を考えても2ドアとしてのデメリットはほとんど感じさせない。

 

 

1980年代を目前に誕生したシリーズ3以降のXJになると、それらは個人的にもかなり身近な存在になってくる。シリーズ2のビッグマイナーチェンジ版ともいえるシリーズ3は、自分自身にとってはジャガー、あるいはディムラー・ブランドのエントランスといった印象を今でも持ち続けているジェネレーション。今回のツアーでは4.2リッターの直列6気筒エンジンを搭載するソブリンをドライブしたが、ほとんど新車に近いコンディションで、再びこの時代のXJに乗ることができるとは思わなかった。

 

 

そのシリーズ3の市場を受け継ぐXJは、完全なフルモデルチェンジによって誕生することになった。それは同時に創業者であるウィリアム・ライオンズが開発を指揮した最後のXJでもあるから、ジャガーのカスタマーやファンにとっては特別な存在でもあるだろう。まず大きな変化を見せたのは、やはりエクステリアとインテリアのデザイン。今回の50周年ツアーでも、XJ40と呼ばれるこのジェネレーションのモデルの順番が回ってくると、キャビンの雰囲気は一気に現代的に、そして製品クオリティも同時に大きく高まっていることが視覚的にも感触としても理解できるようになる。

 

実際にステアリングを握ったのは、ディムラーの3.6だった。このモデルもジャガー・ランドローバー・クラシックのヘリテージ・ビークル・コレクションの1台で、2017年に購入されてからレストア作業を受けたものとされるが、オドメーターにはわずかに1万4000km程度の数字が表示されているのみ。走りは新車当時のものと考えて間違いないだろう。

 

 

さらに2001年のXJ8、2008年のディムラー・スーパー V8と、いわゆるヤングタイマー、あるいはネオ・クラッシックともいうべきモデルを次々にドライブしていくが、この時代のXJは改めてその走りを味わうと、ジャガーならではの魅力というものがダイレクトに伝わってきて本当に楽しい。

 

 

いや現代のXJ、例えば今回用意されたXJ575の驚異的なパフォーマンスは、もはやオンロードでは使い切ることは不可能に近いし、XJ50もXJシリーズのファンには見逃せないスペシャルモデルだ。ジャガーというブランドは、人の心を刺激するということに関しては本当にさまざまな、そして伝統と経験に裏付けされた手法を持つブランドだ。

 

 

歴代XJでのロングツアーを終えた晩、パリ市内のレストランでジャガー主催のディナーが行われた。ここでスピーチを行ったジャガーのデザイナーであり、これまでさまざまなXJシリーズでも手腕を奮ってきたイアン・カラム氏は、どのXJのデザインが最も素晴らしかったかを我々メディアに質問した。そして結果的に最も多くの得票を得たのはシリーズ1だったのだが、カラム氏の答えは違った。彼が考える最も素晴らしいデザインのXJ、それは近い将来誕生するであろう次世代XJなのだという。

 

ジャガーXJ、半世紀にわたって築き上げられてきたプレミアムカー市場におけるその存在感は、これからの半世紀も変わることはない。