【初試乗】島下泰久が絶賛! 新型「BMW Z4」は期待を裏切らない完成度。

2018/11/07 08:01

BMW Z4 M40i

 

 

開発スタート時は共同、

仕立てはBMW独自。

 

「残念ながら先代Z4はユーザーの期待値を満たすほどスポーティなクルマとは言えなかった。だから今回はそこに重点を置き、徹底的に開発を行なったんだ」

 

試乗後に話を訊くと、開発チームのひとりはそう打ち明けてくれた。リトラクタブルハードトップを初めて採用し、開けても閉じても美しいスタイリングを実現していた先代Z4は、しかしながら彼の言う通り、そもそも真っ直ぐ走らないし、コーナリング中に挙動が豹変するなど、走りの面では満足感が高いとは言い難かった。そういう評価、評判は、身に沁みて解っていたのだろう。

 

 

そうは言ってもBMWとて、収益性の高いとは言えないこのセグメントのスポーツカーを単独でそこまで開発していくのは難しい。そこに現れたのがご存知の通りトヨタである。やはり単独ではリアルスポーツとしてのスープラの開発は荷が重いと考えたトヨタからの共同開発のアプローチは、BMWにとってまさに渡りに船だったに違いない。

 

 

トヨタという言葉を発した途端に広報がすっ飛んでくるような状況だったので詳しく話を聞けたわけではないが、実は当初リアルスポーツとしての性能へのこだわりは、トヨタの方が強かったとも言われる。その熱意に押されるかたちでエンジン搭載位置が下げられるなど、両社のコラボレーションはいいかたちで進んでいたようだ。世間で誤解されているように、BMWが開発したクルマのガワを変えてスープラにするのではなく、両社はスタート地点から一緒になって試行錯誤を行ない、基本設計を終えた後には各々が個別の開発フェイズに入り、クルマを仕立ててきた。

 

 

結局、シャシーは先代とはまったく別物になった。従来比プラス85mmの4324mmの全長に対して、ホイールベースは26mm短い2470mmに。全幅は74mmも拡大されて1864mmにも達している。そして全高は13mmプラスの1304mmというのが、このディメンションだ。サスペンションはフロントがダブルジョイントストラット、リヤが5リンク。軽量化のためアルミ製パーツが多用されている。

 

 

エンジンは直列4気筒2リッターターボが2種類、直列6気筒3リッターターボが1種類の計3種類が用意される。興味深いことに、どのエンジンを選んでも50:50の前後重量配分はキープされるという。

 

今回テストしたのは、そのうちの最高峰グレード「M40i」。その名の通りBMW M社が開発を手がけたシャシーは、10mmローダウンのサスペンションと可変ダンピングシステム、Mスポーツディファレンシャルと呼ばれる電子制御式LSDなどを備える。エンジンスペックは最高出力340ps、最大トルク500Nmを発生する。トランスミッションは8速ATだけが用意される。

 

 

 

スイートフィールの直6エンジンに、

快感のコーナリング性能!

 

試乗はポルトガルはリスボン近郊のエストリルからアルマダに抜け、セトゥバルまで回って帰ってくる一般道。早朝、まだルーフを閉じたまま走り出すと、数百メートルも走るまでもなく、コレはいい! と好感触を得ることになった。ソフトトップ・オープンにも関わらずボディは非常にしっかりしていて、コラム剛性の高そうなステアリングの操舵感も良い。直進性は高く、そこから切り込んでいった時のレスポンスもきわめてナチュラル且つダイレクトで、全体に物凄い凝縮感を味わえるのだ。

 

練られたディメンションを持ち、ギア比可変ステアリングも、後輪操舵も無いからこその、この感触。基本が良ければ、最近のBMWがご執心のそうした「余計な」ものは要らないのである。

 

 

可変ダンピング機構付きとは言え乗り心地は硬く、常にコツコツ来るが、それでも乗り心地は十分に許容範囲と言える。ちなみに足元の19インチタイヤは前後異サイズのミシュラン パイロットスーパースポーツ。このシューズが乗り心地を助けている部分は小さくないはずだ。

 

そして、何よりスイートなフィーリングをもたらすのが直列6気筒3リッターターボエンジンである。低回転域から淀み無くフラットにトルクを供給するのはもちろん、回すほどに目が詰まってくるように緻密に吹け上がり、心地良いサウンドともども頭を真っ白にさせる。何度も同じことを口にしてしまうが、やはりストレート6は良い。

 

 

8速ATのギア比は2速と3速がやや離れているが、トルクがあるので実際に困ることはなさそう。変速はトルコンATとしては文句なしに速いが、切れ味はまだDCTには及んでいない。また攻めた走りを続けていると温度上昇のせいか変速がもたつき気味になるのも気になった部分である。

 

そんなZ4 M40iが最高に輝く舞台は、やはりワインディングロードだ。操舵に対してノーズが引き込まれるだけでなく、クルマ全体がくるりと向きを変えていくコーナリングは快感で、まるでクルマが身体の延長線上にあるかのよう。バリアブルレシオの設定も巧みで、タイトコーナーで更に切り足した時など、ドンピシャリの反応でエイペックスを舐めて行くことができる。

 

 

立ち上がりだけは、なまじトルクがあるだけに繊細な操作が求められる。限界が高いせいもあるが、一旦流れ出した時の挙動変化が割に速めなのだ。電子制御式LSD入りなのだから、こういう場面ではもう少しクルマを前に進める方向の躾けでもいいとは思うが、BMWはそれよりもアジリティを優先したということなのだろう。

 

一方、ブレーキの出来栄えは秀逸だった。コントロール性、効きともに高いパフォーマンスに十分見合うものとなっている。

 

 

つい走りの話ばかりになってしまったが、新型Z4は2シーターオープンカーとしても完成度が高い。再びの採用となったソフトトップを開けてもボディの剛性感の変化はほとんど無く、走りは快適。風の巻き込みは、オプションのドラフトストップをロールバー間にはめ込むだけで劇的に改善されるから、これは必須の装備だ。

 

 

更に有り難いのは、シートの背後にカバンなどの小物を置いておけるだけのスペースが確保されていること。また、ラゲッジスペースも先代の実に5割増し、大型スーツケースも余裕で飲み込む281リットルもの容量が確保されているから、実用性はきわめて高い。

 

 

BMWはこうじゃなければと思わせる質高いスポーツ性を感じさせる走りとオープンの気持ち良さ、そして高い実用性を兼ね備えた新型Z4は、走りにこだわりを持つ人にとっては間違いなく嬉しい進化を遂げた。特に今回ステアリングを握ったM40iは、そこにストレート6の魅力も加わるのだから、基本は4気筒だけとなるポルシェ718ボクスターにとっては目障りな存在となるだろう。

 

新型Z4のデリバリーは来年3月からの予定。日本にもそう遅れることなく導入されるだろう。あのクルマとの比較も含めて、興味をソソる1台の上陸が今から待ち遠しい。

 

 

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)