【初試乗】遊べるハンドリングを目指したという「アウディ e-tron」の感触とは。

2018/11/12 17:55

Audi e-tron

アウディ eトロン

 

 

アウディ初の量産EVモデル。

 

フロントタイヤのグリップが失われる兆候がステアリングを通じてかすかに伝わってくる。それでも「アウディe-tron プロトタイプ」は滑りやすい粘土質の砂を必死に捉え、アンダーステアに陥るのを懸命に回避している。ただし、スタビリティコントロールやトルクベクタリングが作動している無粋な振動は一切看取されない。ただフロントタイヤがアウト側に逃げようとしている感触と、それとは裏腹にノーズはあくまでもステアリングを切った方向を向き続けている事実から、なんらかの制御が働いているのだろうと想像されるのみである。

 

 

アウディが初めて量産する電気自動車「e-tron」。その市場投入に先立ち、アウディはe-tronの特徴を解説する一連のワークショップを開催してきたが、その最終章として、ナミビアのオフロードでe-tronプロトタイプを走行し、そのダイナミックなハンドリングを体験するというプログラムが組まれた。

 

 

ところで、なぜ試乗会場にアフリカ南部のナミビアが選ばれたのか? もともとアウディは雪上でこのイベントを催すつもりだった。しかし、北半球が夏から秋に移るこの時期に、安定したスノードライビングを楽しめるコースは地球上のどこにも存在しない。そこでナミビアの砂漠に点在する「パン」という名の場所で試乗を行なうことになった。一見したところ乾いた塩湖のように見えるパンは、実は粘土質の砂が乾いてできた特殊な地形で、塩湖さながらに真っ平らなことが特徴。しかも、粒が細かい砂はまるで雪のように摩擦係数が低く、e-tronプロトタイプの試乗を行なうにはお誂え向けだったという。

 

 

このパンに設定された2〜3kmほどの特設コースが今回の試乗会場となった。ここをまず、ドライビング・モード:オート、ESC:オンで走行したところ、アンダーステアになるのをシステムが必死になって防いでいることが推察された。ただし、システムが作動していることをドライバーは知ることができない。冒頭で描いたのは、このときの様子である。

 

 

続いて同じコースをドライビング・モード:オート、ESC:オフで走る。もっとも、ESCを切ったからといって簡単にテールが振り出すわけではなく、e-tronプロトタイプは引き続き高いスタビリティを示す。これは、ステアリング特性が崩れそうになると前後のトルク配分をコントロールしてその変化をキャンセルするためという。

 

 

ただし、現実にはESCは作動していないので、コーナリングで大きなヨーを与え続けたり、フェイントモーションを使ってテールを反対側に振り出そうとすれば、ドリフトの態勢を作り出すこともできる。それでも、私がドライブしているときにe-tronプロトタイプがスピンすることはとうとうなかった。やはり、基本となるスタビリティは相当高いようだ。

 

 

最後にドライビング・モード:ダイナミック、ESC:オフを試す。こうするとリヤへのトルク配分がそれまでよりも増え、さらにテールハッピーなハンドリングを示すという。なるほど、今度はスロットルオンでリヤが積極的にアウトに流れ出ようとする。

 

 

ただし、ステアリングを軽く切ってスロットルを踏み込むだけでテールを振り出すほどリヤのスタビリティは低くない。基本的には、ドライビング・モード:オート、ESC:オフのときと同じように何らかのきっかけがなければオーバーステアにはならないが、それでもテールがスライドし始める閾値は確実に下がり、テールスライドの量もより大きくなっている。腕利きであれば、かなりドリフトを楽しめるセッティングといえるだろう。

 

 

アウディは、なぜe-tronをこのようなハンドリングに仕上げようとしているのか?

 

すでにお気づきのとおり、e-tronはフルタイム4WD、すなわちクワトロである。1980年にオンロード用フルタイム4WDのコンセプトをいち早く提示したアウディは、フルタイム4WDのハンドリングと誰よりも長く向き合ってきた。そのなかで、彼らがもっとも重視したのが「コントローラブルなハンドリング特性」だった。

 

 

一般ユーザーが扱うロードカーである以上、一定のスタビリティが求められるのはいうまでもない。しかし、せっかくフルタイム4WDを採用していながら、徹頭徹尾弱アンダーステアを示すだけでは面白みに欠ける。そこでアウディは4WDの前後トルク配分、サスペンションのアライメントやジオメトリー、車両の基本レイアウトなどを徹底的に検証し、十分なスタビリティを確保しながらも「遊べるハンドリング」の実現に邁進してきた。その成果は、クワトロを採用した現行アウディのすべてに息づいているといっても過言ではない。

 

 

いま、自動車はEVの時代を迎えようとしている。すると、自動車のキャラクターを決める大きな柱だったエンジンというファクターが明確な特色を演出しにくい電気モーターに置き換わることになる。そのとき、各ブランドはいかにして自分たちのアイデンティティを発揮すればいいのか?

 

 

この問いかけに対するアウディからの回答がe-tronなのである。e-tronは前後車軸にそれぞれモーターを装備。ふたつのモーターが発生するトルクをコントロールすることで、いままで以上に自由に、そして瞬時にハンドリング特性を制御する術を得た。これをベースに開発されたのがe-tronであり、そのハンドリングを確かめるために私ははるばるナミビアを訪れたのであった。

 

EV時代を迎えてもアウディの個性は不変・・・。そのメッセージは、力強く私の心に響いた。

 

 

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)

 

 

【コンセプトモデル ギャラリー】

 

【試乗会 ギャラリー】

 

 

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