【完全解説】新型「ポルシェ 911カレラS & 4S」の全容に迫る!

2018/11/29 15:41

New Porsche 911 Carrera S

 

 

992型となってもタイムレス!

 

ロサンゼルス・モーターショー2018の開幕前夜、渋滞がなければダウンタウンから30分ほどの距離にある、ポルシェ・エクスペリエンス・センターを訪れた。ロサンゼルスのエクスペリエンス・センターは、アメリカではアトランタに続いて2016年に開設されたもの。ポルシェはここを、1963年に誕生した初代モデルから数え、第8世代目となる新型911のプレビューイベントの舞台に選んだのだ。

 

 

なぜポルシェはアメリカのロサンゼルスに新型911をメディアに初披露する場としたのだろうか。それはアメリカがポルシェにとって、その中でもとりわけカリフォルニア州がいかに重要な市場であるのかを考えれば自然なことといえる。参考までにすでに発表されている、2018年の1〜9月期のアメリカ市場でのポルシェの新車販売は4万2626台。これは前年同期比で約3%増となるが、カリフォルニア州のシェアはこの中で23%ほどになるという。カリフォルニアから新型911のニュースを発信することには大きな意味があるのだ。

 

 

歴代911シリーズから始まった「992」のデビュー。

 

901、930、964、993、996、997、そして991。プレビューイベントはまず、ドイツ・シュツットガルトのポルシェ・ミュージアムが所有する、ベストコンディションの歴代911の登場から始まった。それは911というプロダクトが今回の新型911を開発するうえでのキーワードのひとつである「タイムレス・マシーン」を実現していることを確実に理解させるには最も効果的な演出だったともいえる。

 

 

全長で20mm、全幅は44mm拡大。

 

タイプ992という社内コードで開発が進められてきた第8世代の911は、まずその魅力的なエクステリアデザインで見る者に大きな感動を生み出すモデルだった。ボディサイズは全長×全幅×全高で4519×1852×1302mm。これは先代の991型911と比較して全長では20mm、全幅では44mmが拡大されている計算になるが、確かに前後フェンダーのグラマラスな造形は、新型911に見る者の熱い視線を集中させるには十分なアイキャッチだ。ホイールベースの2450㎜は変わらなかった。

 

 

カレラシリーズはすべて共通のボディ。

 

ちなみに今回ロサンゼルス・モーターショーで発表された新型911は、「カレラS」と「カレラ4S」の2モデルのみだが、これまでと大きくことなるのは、後輪駆動のカレラSも4WDのカレラ4Sも共通のボディを使用すること。これまでのように駆動方式によってボディを使い分けるという、実際には4WDモデルにワイドなボディを与える戦略は、すでに過去のものになったということになる。そして左右方向に貫かれるテールランプも、もはや4WDモデルの証ではなくなったのだ。

 

 

エアロダイナミクスは、Cd値0.29を実現。

 

新型911のエクステリアをスタイリッシュに見せるエレメントは、ほかにもある。水平方向に端正なラインを描くフロントマスクのデザインや、さらにスムーズを帯びたヘッドランプ。フロントフェンダーとボンネットの巧みなラインのコンビネーション。フロントに20インチ、リヤに21インチ径を採用したタイヤとホイールもグラマラスなフェンダーとともにスポーツカーならではのフットワークの力強さを想像させて頼もしい。クローズ時にはドアとフラット化されることになった電動ポップアップハンドルなど、エアロダイナミクスの最適化にも、もちろんポルシェは積極的。注目のCd値は、カレラS、カレラ4Sともに0.29と発表されている。

 

 

最新のLED技術を用いたヘッドライト。

 

最新のLED技術によるヘッドランプは、4ポイントのデイタイムランニングライトを採用したものだ。さらにオプションではハイビーム使用時にも対向車や前走車に対しての眩しさをカットするなどの機能を持つ、PDLSプラス(ポルシェダイナミックライトシステムプラス)とメインビームアシストなどをオプションで選択することができる。

 

 

「ウエット・モード」を新設。

 

このほかにも、ポルシェはさまざまな安全装備や運転支援装備を新型911に設定している。エマージェンシーブレーキアシストやアダプティブクルーズコントロール、パークアシスト・ウィズ・サラウンドビュー、ナイトビジョンアシストなどはその代表的な例だが、プレビュー・イベントではさらにもうひとつの大きな新技術として、新型911へのウエット・モードの採用がアナウンスされた。これはフロントフェンダー内に装備されたセンサーからの周波数情報等をもとに車両が路面状況を判断。車体を安定方向へと導くための最適制御を行うものと説明されている。

 

 

901型を思わせるコクピット。

 

新型911のエクステリアデザインには、過去の911シリーズを連想させるさまざまなディテールが採り込まれているが、その印象はインテリアでも変わらない。いやインテリアに関しては、とりわけ初代モデルである901型911に強いインスピレーションを得た、と考えるのが自然なところだろうか。それを証明するのが、水平方向に直線的に描かれるラインと、タコメーターをセンターにレイアウトし、その左右に2個ずつのメーターをレイアウトする伝統的なメーターパネルのデザインだ。

 

 

シンプルすぎるシフト周り。

 

だがここは最新世代のモデルらしく、タコメーターのほかは7インチサイズの薄型ディスプレイとされ、ドライバーは必要な情報を任意に選択して表示することが可能となる。さらにセンタースクリーンには10.9インチサイズのタッチディスプレイを装備。オンラインナビゲーションを含む、PCM(ポルシェコミュニケーションマネジメント)の操作も、ここから直感的に行うことができる。センターコンソールは、上部にドライブトレーンやシャシーの機能に直接アクセスするための5個のアナログスイッチをシンプルに配置。今回発表されたカレラS、カレラ4Sはいずれも新たに8速化されたPDK仕様だが、そのためシフトレバーまわりも実にシンプルで、機能的なデザインとされているのが分かる。

 

 

エンジンは、30ps向上の450ps!

 

リヤに搭載されるエンジンは、2981cc仕様水平対向6気筒ツインターボ。今回新型911に搭載するにあたり、ポルシェはダイレクトインジェクションシステムの改良など、さまざまな改良をこのエンジンに施し、結果として991型911のカレラS、カレラ4S比でプラス30psとなる、450psの最高出力と530Nmの最大トルクを達成。991型の例から予測するのならば、将来的に追加設定されることが確実視されるベーシックモデルのカレラ、カレラ4には、400psクラスのエンジンを搭載すると考えるのが妥当なところだろうか。

 

組み合わせられるトランスミッションは、前でも触れたとおり現在の段階では8速PDKが唯一の設定となるが、2019年後半にはギア数は明らかにされなかったが、3ペダルのMT仕様も追加設定されることが今回同時にアナウンスされている。

 

 

変更されたエンジン搭載位置。

 

エキゾーストシステムは、スタンダードな左右デュアル式のほかに、左右楕円シングルデザインのスポーツエグゾーストを設定。またポルシェは、この水平対向6気筒ツインターボエンジンを前作よりもさらに車体の中心近くに搭載することに成功しており、それによって振動の低減、走行安定性の向上を実現した。カレラ4Sに搭載される4WDシステムは、これまでと同様に、電子制御多板クラッチを使用したポルシェトラクションマネジメントシステム(PTM)を採用している。

 

 

当然、制御系もアップデート!

 

ポルシェスタビリティマネジメントシステム(PSM)や、さらにアップグレードされた、ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネジメントシステム(PASM)も、新型911の走りをさらに魅力的なものに演出するための重要なデバイスだ。オプションではPASMスポーツシャシーも用意され、これを選択すると車高は10㎜低く設定されるほか、さらにバランスに優れたスポーツ走行が可能になる。ポルシェ・トルクベクタリング・プラス(PTVプラス)や、ポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロールシステム(PDCC)など、これまで991型911でもお馴染みだった装備は、この新型911にも確実にそれらが継承されている。

 

 

ブレーキには、もちろんポルシェセラミックコンポジットブレーキ(PCCB)の設定もある。フロントに410mm、リヤに390mmのディスクを備え、モノブロックキャリパーはイエローでカラーリングされるのが特徴だ。

 

 

魅力的な「スポーツクロノパッケージ」

 

新型911に用意されるさまざまなオプション装備の中でも、最も気になる存在といえるのは、やはりこれまでと同様にスポーツクロノパッケージだろう。このパッケージを装備すると、サーキット走行でラップタイム計測などさまざまな用途に活用できる専用アプリ、ポルシェトアックプレシジョンのほかに、ステアリングホイール上に走行モード選択スイッチが装備されることになる。このスイッチでカスタマーは、「ノーマル」、「スポーツ」、「スポーツプラス」、「インディビジュアル」に加え、前述の「ウエット」の各走行モードを選択できるほか、中央のプッシュボタンでスポーツレスポンス機能を約20秒間にわたり継続させることもできるようになる。

 

 

最高速は306km/h!

 

スポーツクロノパッケージを装備したカレラ4Sで、ローンチコントロール機能を使用した場合、0→100km/h加速をわずか3.4秒。最高速は306km/hを記録するという。そのパフォーマンスは、もちろんスポーツカー市場においては大いに魅力的なものだろう。まさに時間を超えたコンセプトを受け継ぐ、タイムレス・マシンたる911。新たに始まった992型911のストーリーは、これからどのような広がりを見せていくのだろうか。早くも新型911のさらなる進化が楽しみになってきた。

 

 

TEXT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)