【INTERVIEW】アンディ・パーマーCEOに訊く「アストンマーティン」の現状と未来。


Dr. ANDY PALMER

Dr. アンディ・パーマー

Exclusive Officer of ASTON MARTIN LAGONDA LTD.

 

 

ライバル視されるフェラーリ。

そして成功の鍵は「緻密な戦略」。

 

2018年は、アストンマーティンにとって、まさに歴史的な年となった。創業から105年もの時を経て、ついにアストンマーティンはロンドン市場に株式を上場したのだ。自動車のラグジュアリーブランドの株式上場としては、たびたびフェラーリが先例として語られるが、今後もこの両社は常にライバル関係として評価されることになるだろう。

 

このビッグイベントからほぼ1ヵ月が経った11月上旬、アストンマーティンのアンディ・パーマーCEOにインタビューする機会が与えられた。アストンマーティンにはこれから変化が表れるのか、それともこれまでどおりのプランが確実に実行されていくのか。アストンマーティンのカスタマーやファンにとって、それは最も気になるところだろう。

 

 

——アストンマーティンの株式上場は、ニューヨークで上場したラグジュアリーカーブランドのフェラーリの時と同様に、市場ではとても大きな話題になったと思います。

 

「そうですね。投資家の方々はもちろんフェラーリを直接の比較対象として見るでしょう。我々の公募価格は1株あたり19ポンドでしたが、現在の段階では株価は必ずしも満足な動きをしているとはいえないかもしれません。ただ上場からはまだわずかな期間が経過したのみですし、2014年10月1日に私がスタートした中期成長計画、セカンド・センチュリー・プランもスムーズに進行しています。新車開発のための十分なキャッシュフローも準備されていますから、徐々に株価にもそれらが反映されてくると考えられます」

 

 

——セカンド・センチュリー・プランは、現在どのような進捗状況にあるのでしょうか。また上場によって、そのプランに変化が生じることはあり得ますか?

 

「私はそれをロードショーと呼んでいたのですが、上場前に株主となる350社ほどの企業のすべてのトップに直接会って、セカンド・センチュリー・プランの詳細を説明しました。現在進行中のセカンド・センチュリー・プランは、フェイズ1が経営の安定化、フェイズ2がエンジニアリングのコアとなる部分の入れ替え、そしてフェイズ3がラインナップの拡大、つまりニューモデルの投入に分かれており、つまり現在はフェイズ2とフェイズ3が重なった場所にあるといえます。さらに我々には、7タイプのカスタマーが存在すると想定しており、ひとつのモデルのライフサイクルは7年。つまり7年ごとに7モデルが常に新作に生まれ変わるのです。さらに、2タイプのラゴンダも加わりますね」

 

 

——さらにアストンマーティンには、サブブランドとしてAMRがありますが、こちらはすでに存在感が希薄になっているような印象を受けるような気もします。例えばDB11AMRでは、その上にすぐDBSスーパーレッジェーラもラインナップされていますから。

 

「AMRはメルセデス・ベンツにとってのAMGのような存在です。今後はすべてのモデルに、AMRモデルを設定していくことになるでしょう。もちろん、AMRはレースと密接な関係を持っていて、今のところ私は十分に成功していると考えています。DB11にAMRが設定され、標準的なV12がラインオフしたのは、最初にDB11を発表する時に、まず標準的なV12エンジンを搭載するべきだろうと考えたからです。それとのパフォーマンス、そしてキャラクターの差をより大きく感じるために、V12モデルをAMRに統一したのです。ちなみにDB11はグランドツーリング、DBSスーパーレッジェーラはスーパー・グランドツーリングと、アストンマーティンではカテゴライズされます」

 

 

——アストンマーティンのようなイギリスの自動車メーカーにとって、今後大きな問題になるのが、EUからの離脱だと思いますが、実際にはどのような影響があるでしょうか?

 

「現実的な影響はふたつ考えられると思います。ひとつは財務的な影響です。現在アストンマーティンは、EUに約25%、UKで約35%を販売していますが、その比率はEU離脱後も大きく変わることはないと思います。ただし輸出分には関税がかかりますから、これは確実な負担増となるでしょう。そしてもうひとつは部品の調達で、現在アストンマーティンは、約60%、3900種類の部品をEUから調達していますが、この関税はもちろんのこと、通関に必要な時間も大きな問題です。港をドーバーのほかに確保するのか、あるいは飛行機による輸入を行うのか、もしくは現在3日分をストックしている部品を5日分に拡大するのか等々、さまざまな方向から対応策を考えていかなければなりませんね」

 

 

——日本市場の成長性についてはどのようにお考えですか。我々にはまだ成長の可能性があるでしょうか?

 

「もちろん、日本はまだ成長の可能性を秘めた市場だと確信しています。我々は最終的には1万6000台という年間のグローバルセールスを狙っていますが、この数字が達成された時には、日本は1500台規模の市場へと成長を遂げていることになるでしょう。当然そのための投資も必要です。まずは既存のディーラーネットワークへの投資、そして日本でも最も期待できる商品となるSUVのDBXをセールスするための対応。ラゴンダ・ブランドのためにも、やはり専用のショールームは必要になるのではないかと考えています」

 

アンディ・パーマーCEOの強いリーダーシップのもと進められているセカンド・センチュリー・プラン。その進捗の速さは、我々の目を大いに刺激してくれそうだ。数年後、まさに劇的な変化を遂げたアストンマーティンの姿を、世界はどう受け止めるのだろうか。

 

 

INTERVIEWER/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)