【TOPIC】栄光の凱旋パレード「ポルシェ919ハイブリッド」が最後に公道を走行!

栄光の凱旋パレードだった! 10月25日朝、2台の「ポルシェ919ハイブリッド」がポルシェシュトラーセ911番地のヴァイザッハR&Dセンターからツッフェンハウゼン ポルシェプラーツ1番地の同社ミュージアムまでの公道を走った。その距離25km。操るのはご存じ、マーク・ウェバーとマルク・リープの二人だ。このパレードをもって919ハイブリッドはミュージアム入りを果たし、かつての名車とともに余生を過ごすことになる。

 

この日、公道を走った2台の919ハイブリッドのうちの1台「919ハイブリッド Evo」のステアリングを握ったのはウェバーだった。919 Evoは、919の短距離走版。ポルシェが2017年シーズン終了をもって長距離耐久レースのWECから撤退したのち、タイムアタックに特化して作ったマシンだ。

 

 

919 Evoは恐るべきスプリント力を発揮した。今年4月にはスイス人ドライバー、ニール・ジャニの操縦により、スパ・フランコルシャンを1分41秒77で周回してみせた。2017年にルイス・ハミルトンがF1マシンのメルセデスAMGで出した予選最速タイムを上回る驚愕の記録だった。

 

さらなるサプライズが続く。6月にはティモ・ベルンハルト駆る919 Evoが、ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェで、5分19秒55のコースレコードを樹立する。従来の記録は、1983年5月、シュテファン・ベロフがポルシェ956で出した6分11秒13。まず破られることはないと言われていた絶対記録をポルシェは自ら塗り替えたことになる。

 

 

2015年に919ハイブリッドでWECチャンピオンに輝いたマーク・ウェバーは笑顔でこう語る。

 

「こんな野獣を公道のトラフィックのなかで走らせるなんて正気の沙汰ではないですよね。でも楽しみました。こういうクールなパフォーマンスをやってみせるところが、いかにもポルシェらしい。919でWECを戦ったシーズンは私にとって大きな意味があります。919 Evoを『ホーム』に返すパレードに参加できて光栄です」

 

 

マルク・リープはWEC仕様の919ハイブリッドに乗った。

 

「今日のドライブはポルシェ、919、そして私自身にとって素晴らしいフィナーレでした」とやはり晴れやかに語る。ポルシェの地元シュトゥットガルト出身のリープは、919ハイブリッドを駆って2016年のルマンに優勝し、その年のWECのドライバーズタイトルを獲得した。

 

「実は、今日のルートの一部は毎日走っていました。私の自宅はルートヴィッヒスブルクにあって、ヴァイザッハまでの通勤路なのです。愛車はカイエンですから、919のはるかに低い着座位置からだといつもの風景がまるで違って見えました」

 

 

919ハイブリッド。それはきら星のごとく並ぶポルシェの歴代レーシングマシンのなかでも燦然と輝く名マシンだ。2014年シーズン以降のWECにハイブリッドパワートレインを導入すると定めたFIAの意向を受けて、ポルシェがこのシリーズ戦へ復帰することを決めたのは2011年のことだった。彼らにとって切っても切れない関係にあるル・マンでは、1998年を最後に優勝から遠ざかっていることもこの決断を下す後押しになった。

 

かくしてまったくのクリーンシートから設計されたのが919ハイブリッドだった。マシンはポルシェ首脳陣の期待に見事に応えた。2015〜17年まで3年連続でWECのドライバーとマニファクチャラー両方のタイトルを獲得し、ルマンの総合優勝回数を19に伸ばしたのだ。

 

 

設計は2011年に始まった。ポルシェはこの新型マシンに持てる技術のすべてを投入した。WEC仕様ではコンパクトな2リッターV4ターボエンジンから500hpを得る。これにブレーキ時の運動エネルギーとエンジン排気の熱エネルギーを利用した2つのエネルギー回生システムが組み合わされる。

 

両システムが生むエネルギーは一時的にリチウムイオンバッテリーに蓄積される。内燃エンジンは後輪を、出力400hpのモーターは前輪を駆動する。従ってWEC仕様のシステム出力はおよそ900hpだ。なお919ハイブリッドが採用した800Vのテクノロジーは、2019に出る市販型EVのパイオニア的役割を果たした。

 

 

1周だけ超クイックラップを出せれば目的を達成する919 Evoでは、FIAのレギュレーションから解放されて39kgの軽量化を果たし、車重は849kgに仕上がった。WEC仕様と同じバイオエタノールを20%含有するガソリンを使いながら、ECUを書き換えるなどしてシステム出力は1160hpにまで向上している。

 

アクティブ空力デバイス、ブレーキ バイ ワイア、強烈なダウンフォースに対応する強化サスペンション、専用のミシュランタイヤなど、WEC仕様からの変更は多岐にわたる。

 

 

ポルシェミュージアムの館長アヒム・ステヤスカルに919ハイブリッドを引き渡したLMP1の副社長フリッツ・エンジンガーは感慨深げにこう語る。

 

「チームにとって919ハイブリッドのミュージアム入りは、ひとつの時代の終わりを意味します。2015〜17年シーズンにかけて3度ルマンに優勝し、世界選手権タイトルを計6回獲得しました。2018年の『トリビュートツアー』では、スパとノルトシュライフェでラップタイム記録を更新して、このマシンの成功は不動のものとなったのです」

 

 

エンジンガーの言葉を受けて、LMP1のチーム代表アンドレアス・ザイドルは次のように未来を展望する。

 

「最後の数kmを公道で走ることで、私たちにとってのLMP1は幕を閉じました。次なるページを開けるときです。2019年末に開幕するフォーミュラE選手権への参戦も正式に認められました。非常にポジティブな反響を得ています」

 

ポルシェは「Eモビリティ」と題した新たなチャプターを綴り始めた。彼らの「極限への探求」はこれからも続く。