【初走行!】熱狂的なコレクターによって誕生した驚異のロードマシン「SCG 003S」

SCG 003S

スクーデリア キャメロン グリッケンハウス 003S

 

 

700psのパワーから360km/hを実現!

 

ひとりの人間の情熱からスポーツカーが誕生するストーリーなど、そしてそれがビジネスとして成功を収めるストーリーなど、すでに遠い昔に思える20世紀の話ではないのか。そう考える者は、毎年春の訪れを前に開催されるジュネーブ・ショーを訪れてみるといいだろう。ここにはスポーツカー、あるいはスーパーカーの世界に進出を図る新興勢力が集結し、そして自己主張を繰り返している。アメリカのニューヨークに在住し、金融業界、そして映画の世界においても大きな成功を収め、新たに自らの夢であったスーパーカーの生産プロジェクトを立ち上げたジム・グリッケンハウス氏もまた、その象徴的な例だった。

 

 

彼の名前を初めて聞いたのは、スーパーカープロジェクトのトップとしてではなく、熱狂的なコレクターとしてだった。それまでにもフェラーリなど、さまざまなスーパースポーツカーを所有していたグリッケンハウス氏は、自身が購入したエンツォをピニンファリーナへと持ち込み、ここでワンオフモデルのP4/5を製作。ちなみにニューヨークのマンハッタンにある彼のガレージ、「スリーピー・ホロー」には、現在もこのP4/5のほかに、412PやP3/4といったフェラーリがプロトタイププラスのために製作したレースカーが収められている。

 

 

グリッケンハウス氏が率いるメーカー、そしてレーシングチームの名前は「SCG=スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウス」。キャメロンとは氏の娘の名前であり、レーシングチームを意味するスクーデリアというイタリア語を掲げるのは、現在もイタリアのさまざまなメーカーが車両の開発やデザインに深く関係することを物語っている。

 

 

今回レポートするモデル「SCG 003S」は、ネーミングの最後に添えられる記号、S=ストラダーレが示すとおり、オンロードモデルとして製作されたものだ。SCGシリーズにはほかに、レースモデルのSCGC=コンペティツィオーネ、この両モデルの中間的なキャラクターを持つSCGCSがラインナップされている。グリッケンハウス氏によれば、SとCSの両モデルはNHTSA=ハイウエイ安全交通局による認可済みで、現在の段階では実際にアメリカの49州では公道走行が可能であるという。フロントウインドウのボトム部には、17桁のVINコードが誇らしくフィットされている。

 

 

SCG 003Sのデザインは、最新のLMPマシンにも似た、実に攻撃的かつ優秀なエアロダイナミクスを直感させるフォルムをもつ。とりわけレーシングモデルにインスパイアさされたサイドミラーには、さらにデジタルカメラがビルトインされ、ドア後方には燃料やオイル量を外部からも簡単に把握できるインジケータも備えられている。スワンネックを採用したリヤウイングは相当な大きさになるが、ディフューザーやリヤフェンダーとのバランスは魅力的だ。ちなみにSCG 003シリーズのデザインは、イタリアのトリノが本拠地となるグランスタジオ社がこれを担当しており、さらに同社のキーパーソンはピニンファリーナの流れを汲むというから美と機能がいずれも高レベルであるのは当然なのだ。

 

 

インテリアのデザインも機能的だ。SCG 003Sの文字が刺繍されたバケットシートに、SCGのエンブレムがあしらわれたシートベルト。カーボン製のステアリングホイールはレース用の独特なデザインで、トラクションコントロールやダンパーセッティングなどのスイッチもここに配置されている。シフトはパドルによって行い、ポジションは大きく視認性に優れたバーチャルメーターパネルに表示される仕組みになっている。センターコンソールのスイッチまわりに、蛍光色のガイドラインをペイントするなど、こちらもレースカーでの経験が活かされている。

 

 

SCG 003Sは、ほかのSCG 003と同様にカーボンモノコックをもつモデルで、パワーユニット一式は、やはりカーボンで製作された着脱可能なサブフレーム上にマウントされている。エンジンはBMW製の4.4リッターV型8気筒ツインターボをベースとするもので、もちろんこれにはSCGによる独自のチューニングが施されている。潤滑方式がドライサンプとなっていることなどはその代表的なポイント。最高出力は700psに達し、迫力のサウンドを楽しませてくれるエキゾーストシステムは、デュフューザーの効果を妨げないように上方排気のデザインを採用している。テールエンドの中央には、ニューヨーク州で登録されたモデルであることを表す、エンパイア・ステートのライセンスプレートがフィットされるが、それこそグリッケンハウス氏の昔年の夢が凝縮されたスポットであるに違いない。

 

 

700psの最高出力に対してボディもほとんどがカーボンで成形されるSCG 003Sは、その軽量性を活かして驚愕の運動性能を発揮する。ウエイトは正式には発表されていないが、SCGから公開されているデータによれば、最高速度は360km/h。0→96km/h加速は3秒以下を可能にするという。ダウンフォースの最大値は862kg。横方向加速度はロードタイヤを使用しても2Gに達するというから、その性能はすべてのカスタマーを熱狂させるはずだ。だが、ジム・グリッケンハウスという男の野望はこれでは終わらない。彼の胸中にはすでに「SCG 004S」や「SCG BOOT」といった次作の姿が描かれているというのだから・・・。

 

 

REPORT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

 

 

 

 

 

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