【国内テスト】「ホンダNSX 2019年モデル」初試乗! ごく自然な動きに改善された!

2018/12/03 11:55

HONDA NSX 

ホンダNSX 2019年モデル

 

 

これまでの「NSX」の賛否は解消されたのか?

 

遂に2019年モデルの新型「ホンダNSX」のステアリングを握ることができた。舞台はプレス向け国内試乗会の口開け。つまり関係者以外では日本人で初めて試乗するのだと言われて、緊張しつつも誇らしく思いながら新色サーマルオレンジ・パールで塗られたNSXに乗り込む。

 

 

ドライバーズシートに身体を収める前に、ちらりと見やった外観は、確かにフロントグリルのボディ同色化だけでノーズがグンと長く、低く見えるようになっているし、ブラック部分のグロス化も上質感を高めるのに有効に機能していた。まずは好印象をいだきつつ、室内へと乗り込む。

 

 

こちらも新色インディゴでコーディネートされたインテリアの雰囲気も、これまた上々。インフォテイメントやADAS系のアップデートがなく、高級感があるとは言い難い脱着式のカップホルダーもそのままなど、機能面の進化が無かったのは残念ではあるが、ともあれワインディングロードを目指して走り出した。

 

 

アンチロールバーの強化は効果あり。

 

IDS(インテグレーテッド・ダイナミック・システム)はデフォルトのSPORTにセットした状態では、まず何よりクルマがひらり軽快に動くようになったと感じた。車重に変化が無いだけに、これはステアリングの切り始めの操舵力が軽減されたこと、更にはアンチロールバーの強化によりロールが抑えられたことの効果だろう。

 

懸案の操舵フィーリングは、凄まじく饒舌になったとは言わないが違和感はほとんど解消されている。無理に重さを演出するよりも、いかにも制御されているという感は薄いし、タイヤのグリップ力が増したことでリアルな反力も増しているのだろう。私にとっては、これで十分というレベルに達したと言っていい。

 

 

その上で、アクティブダンパーシステムはピストンスピードの早めの領域で減衰力が抑えられ、路面追従性を高めているから乗り心地も良くなっているし、また心なしかワンダリング傾向も抑えられている。総じて乗り心地は上々。従来からスポーツカーらしい程よくダンピングの効いた乗り味を味わえたNSXだが、新型ではそれが更に洗練された印象と言っていい。

 

実に良い「コーナリングフォーム」

 

そのまま山岳路に入ると、すべての挙動の繋がりがより自然になっていると感じられた。ステアリングを切り込んでいくと軽やかにノーズがインを向き始め、そこからアクセルを戻していくと更に、まさに期待した分だけ軌跡が引き込まれて、実に良いコーナリングフォームを取りながらニュートラルステアで曲がっていけるのだ。この一体感は従来無かったもの。そして他のクルマでも、なかなか味わえないものである。

 

 

ドライバビリティは明らかに進化した。

 

アルミ製ペダルが標準となったスロットルもスムーズになった。じわりと踏み込んだ時の初期応答のやや早開きと感じさせた部分が無くなり、あと数km/hだけ速度を上げたいといった際にも自然にそれを行なうことができる。正直に言うと、従来型でそこに殊更、不満があったわけではないのだが、2019年モデルに乗ると明らかにドライバビリティの進化を感じるのだ。従来から素晴らしかったブレーキのタッチ、効きも申し分なく、単なる加減速も心地よい。

 

必要が無いと判断すれば、即座にエンジンを停止して電気モーター走行に移る。こうした時の異音、雑音の類も減っているようだ。遮音材などは増やしていないというが、実は各部の機械的精度は高められているというから、その恩恵だろう。こうした場面での上質感、2割増しといったところである。

 

 

ペースを上げたくなる、2019年モデル。

 

IDSをワインディングがベストと言うべきSPRT+に切り替えると、クルマの動きの基本的なところには変わりはないが、操舵力がやや重くなり、乗り心地も引き締まって、ペースを更に上げたくなってくる。それでも2019年モデルは、実に自然な挙動に終始する。

 

極端な言い方をすると、従来モデルのハンドリングは、サスペンションは硬くロールを拒み、それ故にタイヤのグリップを信じてコーナーに飛び込み、途中からアクセルを踏み込んでいくと2基の電気モーターによるトルクベクタリングによってグイグイと曲げていけるというものだった。LSD付き前輪駆動車にもどこか通じる。そんな感じである。

 

 

グリップがリアルに伝わり一体感が得られる。

 

それに対して2019年モデルは、進入の時点でロールこそ小さいながらも適度な外輪の沈み込み感があり、タイヤのグリップ力を一層しっかりと意識しながらステアリングを切り込んでいくことができる。自分の操作とクルマの挙動に一体感があるから、舵角が大きくなってきても、いつかすっぽ抜けるのではという不安に襲われることなく、必要ならば臆せず更に切り込めるのだ。

 

そうやってドライバー自身がクルマを曲げやすくなっているからなのか、コーナー途中でアクセルを気持ち多めに踏み込んで引っ張り込むように曲げていくという感覚は薄まっている。アクセルオンでも挙動はあくまでナチュラル。けれどしっかり曲がっていくという感覚である。

 

 

ナチュラルとは言ったが、決して普通というわけではない。制御は行なわれているが、あくまでドライバーを裏切るものではなく、ごく自然に感じさせながら、これだけ重いクルマを、一般道では底が見えないほど高いスタビリティ、そしてコーナリングスピードの下、軽やかに曲げていけるという話である。月並みな言い方をすれば、自分の腕が上がったような感覚で、するりと高速コーナリングを楽しめるのだ。

 

分厚いトルクを活かせるパワートレイン。

 

パワートレインも同様に、よりリニアリティが高まっている。前述の通りアクセルを踏み込んだ瞬間の早開き感が良い意味でなまされ、期待以上のトルクの立ち上がりに右足が戻るようなことがなくなり、分厚いトルクを躊躇なく引き出すことができる。その先の伸びの良さも絶品で、胸のすく加速感を堪能できる。そうそう、9速DCTの変速も切れ味を増したように思えた。

 

 

進化したぶん、新たに気になる点も。

 

そんな風にきめ細やかな進化を実感させる走りっぷりだが、一方でまだまだ気になった部分は無いではない。一番は、路面のうねりや外乱などでステアリングが逆方向に切れた時に、車体が一気にアウト側に飛ばされる感じがまだ残っていること。トルクベクタリングの違和感がほとんど無くなっているだけに、余計に違和感が強調されている感もある。見方を変えれば、実際にはそれだけ制御が入っていることが改めて伝わるとも言えるのだけれど。

 

もう一点は、SPORT+モード、Dレンジでのコーナリング中、おそらくターンインからエイペックスに向かうぐらいの所で不意にシフトアップしてしまうことがあった。アクセルを微妙に戻したことをクルージング状態に入ったと判断したのかもしれないが、これは興ざめだ。速さが増している上に、制御項目があまりに多いだけに、あちらを立てればこちらが・・・ということ、きっと少なからずあるのだろう。とは言え、改善を望みたいところだ。

 

 

全方向にバランス良く引き出す完成度。

 

従来型の走りを「斬新さ」というならば、この2019年モデルは「自然さ」。あらゆるデバイスの使い方がきれいにまとめられて、ハードウェアの能力を全方向にバランス良く引き出す完成度が実現されているというのが、一般道で試した2019年モデルのファーストインプレッションである。

 

しかしながら、やはりそれだけでは進化の全容を掴みきれたとは言えない。近い内にサーキットに持ち込み、より深い領域までその走りをチェックしてみるつもりなので、期待していてほしい。

 

 

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)

PHOTO/宮門秀行(Hideyuki MIYAKADO)