【NEWS】「ミスター911」と呼ばれたポルシェの開発者、アウグスト・アハライトナーが引退。

2018/12/05 11:55

世代が変われば人も変わる。

 

新世代のポルシェ911、型式名992が11月30日、ロサンゼルス モーターショーでデビューした。製品が新しい世代に生まれ変わったのに伴い、造り手である「人」も世代交代する。去る人と登場する人。普段スポットライトを浴びる機会の少ない911の造り手にまつわるインサイドストーリーをポルシェ自身が語る。題して「ミスター911、リタイア」。

 

ポルシェのスポーツカーシリーズのトップモデル。その舵取り役が変わる。ほぼ20年にわたり911モデルシリーズを手掛け、2016年からは718モデルも手掛けたアウグスト・アハライトナー(写真下・左)が、その責任を2019年第1四半期にフランク-シュテファン・ヴァリザー(写真下・右)に委ねる。

 

 

18年間に渡って「911」を育ててきた。

 

ヴァリザーは現在、モータースポーツ&ロードビークル部門のヘッド。911は1963年に生まれて以降、このブランドの核を代表する絶対的な象徴になった。ポルシェで35年の長きにわたり働いたオーストリア生まれのアハライトナーは、自らの意思で引退する。

 

「当社に対する並外れた献身に対し私たち一同、グストル(アウグストのニックネーム)・アハライトナーに感謝申し上げます」

 

2児の父アハライトナーをこう賞賛するのはオリヴァー・ブルーメ、ポルシェAGのCEOだ。

 

「18年にわたり彼はだれにも増してポルシェ911を形作ってきました。911のキャラクターをキープしつつ、連綿と洗練する術を理解していたのがグストルです」

 

この人事異動に伴い、フリッツ・エンジンガーが2019年1月1日付けでモータースポーツ部門のヘッドに就く。

 

 

何度も難問を投げかけてきた。

 

アウグスト・アハライトナーは1983年、メカニカルエンジニアとしてポルシェのシャシー開発部に入社した。その後、1989〜2000年は、テクニカル プロダクト デベロプメント/ビークル コンセプト/パッケージ部門の牽引役を担い、2001年に911モデルシリーズの責任者に就く。

 

「私はいつも911が放つ輝きに魅了されてきました・・・。そのユニークなフォルムとコンセプトに。こうした面を大事に守りながらも、すべてを向上させたいという思いに駆り立てられたキャリアでした。そのアプローチは何度も私に難しい問題を投げかけたものです」

 

アハライトナーは振り返る。

 

自身にとって3作目の911、つまり992をロサンゼルスにて発表して、アハライトナーは『聖杯の守護神』の役目から離れる。フランク-シュテファン・ヴァリザーが2019年の始めから911と718モデルシリーズの責任を負う。引き継ぎは同年の第1四半期をかけて順次行う。アハライトナー同様、ヴァリザーはCEO直属の部下になる。

 

 

ヴァリザーはシュトゥットガルト生まれの49歳。918スパイダーの開発という困難な仕事を、プロジェクトマネジャーの立場でこなした功績を認められて今回、新たなポジションに就く。彼がポルシェ モータースポーツ部門のヘッドに就任したのは2014年、この時に911をベースにしたGTロードカーの開発ヘッドも兼任した。機械工学の学位を持つヴァリザーは、911と718モデルシリーズの責任者となるだけでなく、GTロードカーのプロジェクトリーダーをそのまま勤める。

 

「911&718モデルシリーズ部門と、GTロードカー部門は統合されます。これにより私たちは、これから公道向けスポーツカーにどういう特徴が必要となるかを、従来と比べて早い時期に検討できるようになります」

 

ヴァリザーはこうコメントし、次のように続ける。

 

「ポルシェのスポーツカーがモータースポーツと深くリンクすることはこれまでと同じです。当社のGT系はフラハトから生まれます」

 

フラハトとはシュトゥットガルトから北に260kmほど行った街の名前だ。

 

 

セミ リタアメントに入るアウグスト・アハライトナー

 

911と718モデルシリーズはポルシェ内部にあって、組織を統合するツールの役目を果たす。プロダクト全般の誕生プロセスをいかに連係させるか、どの方向に向けるかは、911と718シリーズによって決まる。開発作業をコントロールするだけでなく、販売や製造といったほかの部門とのインターフェイスを図るセンター機能も果たす。

 

アウグスト・アハライトナーはセミ・リタアメントに入る。プレッシャーの掛からない生活を送るようになるので、家族と過ごす時間が増え、趣味にも没頭できるだろう。63歳になるアハライトナーが時間を持てあます危惧はなさそうだ。なにしろ彼のお気に入りときたら、911に始まり、モーターサイクル、マウンテンバイク、スキーと枚挙に暇がないのだから・・・。

 

 

TEXT/相原俊樹(Toshiki AIHARA)