【TOPIC】「ブラバス」にクラシック部門あり。メルセデス・チューナーが展開する、もうひとつの姿。
公開日 : 2018/12/22 17:55 最終更新日 : 2018/12/22 17:55
BURABUS Classic
ブラバスクラシック
フルレストア済みのメルセデスを常時ラインアップ。
メルセデス・ベンツに特化したチューニングブランドとして世界に知られるブラバスが、車内にクラシック部門を開設してすでに10年が経つ。旧いメルセデスを素材に、ブラバスマイスターがゼロからリビルド、ファクトリーからラインオフした時の姿そのままに復元する。「ブラバス クラシック 6スター サーティファイド ハイクオリティ レストレーション(以降クラシック 6スター)」と称するレーベルの全貌を紹介しよう。
ブラバス クラシックではクライアントが持ち込んだ車両のレストアを引き受けるのはもちろんだが、すぐに乗れるフルレストア済みのメルセデスを常時ラインアップしている。しかもマニア垂涎のモデルがずらりと並ぶ。
ため息が出るようなショールーム。
W111の280SE 3.5カブリオレとクーペ、280SL「パゴダルーフ」ロードスター、極めつけは300SLガルウィングクーペとロードスター。これらが「for sale」としてショールームに並んでいるのだ。
ドルトムントから西に50kmほど行ったドイツ西部の町ボットロプに本拠を置くブラバス・グループがレストアビジネスを拡張するため、「プラント4」という専門ファクトリーを建設したのは2014年のことだった。敷地面積約2000平方メートルの建屋は、ゴージャスなショールームと、レストアワークおよびサービスを専門にするモダンな「マヌファクトゥール」を擁する。
レストア技術に対する自信。
「プラント4を稼働することで、私たちのクラシック部門は規模を拡大し、世界から寄せられるレストア需要に応えられるようになりました」
こう語るのはコンスタンティン・ブシュマン、ブラバスのCEOだ。
「ショールームでは貴重なヴィンテージモデルを広範囲に取り揃えています。当社のクラシック 6スターはすぐにお乗りになれます。鋭い鑑識眼をお持ちのクライアントなら、その高度なレストアワークを一目で見抜くでしょう」とブシュマンは自信のほどを覗かせる。
最大6000時間をかけてレストア。
彼の言葉には裏付けがある。素材のコンディションにもよるが、ブラバス クラシックでは1台のメルセデスを修復するのに1500から最大6000時間を投じるのだという。なお、素材に採用するのはマッチングナンバーの個体のみ。つまりメルセデスのファクトリーで製造時、データカードに記載されたエンジンとシャシー製造ナンバーが一致する車両だけがレストアの対象となる。
レストアの出発点は素材を最後のボルト・ナットまで解体すること。その過程ですべてのパーツを検品し、リストアップする。使用不可能なコンポーネントは潔く破棄し、修復可能なものだけを残す。
ボディシェルから一切のパーツを取り外して、もとの塗装を剥離する。次に専門のマイスターが必要な修復を加える。然るのちに、プライマーを満たした水槽に「どぶ漬け」してコーティング、入念な防錆処理を施したのち、最新技術を用いてオリジナルカラーを塗装する。
エンジンの消耗パーツはすべて新品に。
ボディの作業が進行するのと平行して、エンジンも完全に解体、すべてのパーツを寸法チェックする。リビルドの過程ではシリンダー壁面を滑らかに表面処理し、シリンダーヘッドおよびクランクシャフトアッセンブリーを徹底的にオーバーホールする。シールとガスケットなどの消耗パーツはすべて新品に交換、電装系はアッセンブリー交換だ。
トランスミッション、ドライブシャフト、デフユニットで構成されるドライブトレインもエンジンと同様なプロセスを経る。
ブラバス クラシックの徹底した「新品ポリシー」は、走りと安全性に関係するサスペンションとブレーキに見て取れる。彼らはオリジナルのコンディションに関係なく、この部分はすべて新品のみを使って組み立てるのだ。
こだわりは当然インテリアにも及ぶ。
一方、内装担当のワークショップでは、オリジナルに完璧にフォローした内装に仕上げる。レザーやファブリック、さらにはウッドまで、すべてメルセデスのファクトリーで使用していたのと同じカラーとクオリティの素材を使う。オープントップモデルのソフトトップ然り、生産当時のカラーを復元して組み直す。
第三者にランクづけを委託。
それぞれのワークショップで完成したコンポーネントは1ヵ所に集まり、入念に組み立てられて、ヴィンテージメルセデスは新たな命を宿す。
納車前テストも徹底しており、各機能が正常に作動することは当然で、クオリティと安全性のチェックには万全の注意を払う。
社内テストに加えて、ブラバス クラシックはドイツを代表するヴィンテージカーの専門組織「クラシックデータ」に第三者の立場から、1台ずつ製品のランクづけを委託している。その結果は例外なく「グレードA」なのだという。クラシックデータはブラバス クラシックが完璧なレストア作業をしていることに加えて、「クルマに新たなキャラクター」を加えたことを評価する。
ランク付けを担当したクラシックデータの専門家の言葉を引用しよう。
「私が検査した280SE 3.5カブリオレの場合、新車同様にレストアされていたのは言うまでもありません。注目したのはボディパネルのチリあわせで、ここの精度は新車を上回ることが確認できました。ブラバス クラシックでは、70年代の生産ラインでは実現できなかった精度でボディパネルを組み上げているのです」
納車時、幸福な新オーナーには車両と一緒に、レストアの各段階を詳細に捉えたフォトアルバムと、ブラバスが所有するスタジオで撮影された完成車の写真が贈呈される。
メルセデスのクラシックパートナーに。
クオリティと安全性を重視したブラバスのレストア作業は本家も認めるところであり、ブラバス クラシックの作品は公式に「メルセデス・ベンツクラシック パートナー」に位置づけられている。クラシック 6スターには走行距離にかかわらず、納車後2年間の保証が付くのも、レストア車に関していうなら異例だろう。
ミントコンディションに仕上がったブラバス クラシックの作品は、著名なコンクールデレガンスで様々な賞を受けている。「テクノクラシカ2017」の会期中に開かれた、S.I.H.A.が主催するコンクールデレガンスで、ブラバス クラシック 6スター 「メルセデス600プルマン」がベスト セダン オブ ザ ショーを射止めたのはほんの一例だ。
旧いメルセデスの名車を安心して普段使いに供したい愛好家にとって、ブラバス クラシック 6スターはチェックする価値がある。入手可能なレストア済みモデルは常時更新されているので、興味を持たれた向きは下記URLにアクセスされたい。
【リンク】
TEXT/相原俊樹(Toshiki AIHARA)