【検証】「ポルシェ パナメーラGTS」初試乗! バーレーンを全開にして分かった本質とは。

Porsche Panamera GTS

ポルシェ パナメーラ GTS

 

 

心地良さを感じるソリッドな乗り味

 

エンジンパワーではターボやターボSEハイブリッドにかなわないが、「パナメラーGTS」はポルシェ・パナメーラ・シリーズのなかでもっともスポーティなシャシーが与えられたモデルである。とはいえ「スポーティなシャシー」と聞けば乗り心地のことが気になる。なぜなら、パナメーラは911のように純粋なスポーツカーではなく、スポーティな走りもできるラグジュアリーサルーンゆえに一定の快適性も求められるからだ。

 

国際試乗会が開かれた中東バーレーンの一般道をパナメーラGTSで走り始める。すると、不思議なことに気づいた。GTSの足まわりは、スタンダードなパナメーラだけでなく、680psと850Nmを誇るもっともパワフルなターボSEハイブリッドと比べても引き締まった印象でよりソリッドに感じられるのだが、不思議と不快には思えない。いや、正直にいうと、個人的にはGTSの乗り味のほうが心地いいとさえ感じたくらいなのだ。

 

 

優れた振動を吸収する制振性

 

そう感じた理由を自分なりに分析してみると、路面からのガツッというショックを受けた後でボディに微振動が残ることなく、頑丈なボディシェルにしっかりと守られている印象が強いためのように思えた。それもただボディが硬いだけでなく、振動を吸収する制振性にも優れているようなのだ。この点を、ポルシェのエンジニアに伝えたところ、意外な答えが返ってきた。

 

「GTSのボディはほかのパナメーラと変わりありません。サスペンションブッシュの設定も同じです。ただし、ダンパーとサスペンションのアッパーマウントは硬めてあります。ボディがよりソリッドに感じられたのは、おそらくその影響でしょう」

 

私はアストンマーティン・ヴァンテージに試乗したときにも、ベースとなったDB11とは別物の優れた剛性感を覚えたが、それはボディとサブフレームの間にブッシュを介していないためだとエンジニアのマット・ベッカーから説明を受けた。私たちが「ボディ剛性の手がかり」として感じているのはボディ自体の剛性や振動特性だけでなく、足まわりとボディがどのように結合されているかにも大きな影響を受けることが、これらふたつの事例から明らかになったように思う。

 

 

Porsche Panamera GTS Sport Turismo

ポルシェ パナメーラ GTS スポーツ ツーリスモ

 

 

標準ボディとスポーツツーリスモの「差」

 

ところで、乗り心地の違いといえば、同じGTSでも標準ボディのセダンとシューティングブレイク風の「スポーツツーリスモ」では微妙な違いがあった。ソリッドな足まわりという基本的な印象は同一ながら、スポーツツーリスモはストロークのごく初期にダンピングの効きがやや甘く感じられる領域があり、この範囲内ではボディの上下動がセダンほどしっかりとは抑え込まれていないように思えたのだ。

 

このため、試乗会に参加したメンバーのなかには「スポーツツーリスモのほうが乗り心地はソフト」との声もあったが、参加者の多くは「部分的にダンピング不足で質感の高い乗り心地とは思えなかった」とコメントしていた。私の意見も基本的には後者だが、その差はごくわずかで、同じ環境で2台を乗り比べなければ気づかない程度だろう。

 

いずれにせよ、どっしりとした乗り心地のパナメーラGTSとパナメーラGTSスポーツツーリスモのハンドリングは安心感の強い性格で、高速直進性もすこぶる良好。それでいて、わずかな操舵にも優れたリニアリティで反応するポルシェらしいシャシーに仕上がっていたといえる。

 

 

460psと620Nmを発揮する4.0リッターV8

 

パナメーラ・ターボやパナメーラ・ターボSEハイブリッドと共通の4.0リッターV8エンジンは460psと620Nmを発揮。一般道で走る限り、そのパフォーマンスにはまったく不満を覚えなかったが、それ以上に高く評価したいのがドライバビリティの高さで、巡航状態から軽くスロットルペダルを踏み込めば、何の躊躇もなくすっと背中を前に押し出されたかのような加速感が得られる。その自然なレスポンスとリニアリティの高いパワー感は、ヨーロッパの最新エミッション規制である「EU6d TEMP」をクリアしていることがにわかには信じられないほど優れたものだった。

 

EU6d TEMPは、国際標準規格であるWLTPと、実際の路上でのエミッション性能を加味したRDEの両方の要素を兼ね備えたもので、特に過渡状態のパフォーマンスを確保するのが難しいとされる。それだけに、パナメーラGTSが見せた追い越し加速での自然な反応には目を見張らされたが、これについてエンジン担当のエンジニアにコメントを求めたところ、次のような回答を得た。

 

「たしかにEU6d TEMPをクリアするのは容易ではありません。ただし、パナメーラGTSでは4リッターという排気量が幸いしました。これがもし3リッターだったら、私たちはもっと苦しい思いをしたことでしょう」

 

 

バーレーン国際サーキットをアタック!

 

このように一般公道では文句のないパフォーマンスを示したパナメーラGTSだが、サーキットでの走りはどうなのか? 続いてF1グランプリの開催地でもあるバーレーン国際サーキットでの試乗に臨んだ。

 

なにせ車重が1995kg(パナメーラGTSスポーツツーリスモは2025kg)もある重量級モデルである。911のような軽快なハンドリングを期待するのは無理というものだろう。しかし、パナメーラGTSは車重が重ければ重いなりのスポーティハンドリングというものがあることを教えてくれたような気がする。

 

 

特筆すべきコーナーでの扱いやすさ

 

なによりも印象的だったのがターンインでフロントが素早く的確にイン側を向いてくれるところ。「レスポンスが鋭い」と評すれば褒め過ぎかもしれないが、シャシー担当のエンジニアが「正確なステアリング」と表現していたことがしっくりとくる反応で、2トン前後の車重を意識しながら操舵すれば狙った走行ライン上に留めておくのは難しくない。

 

しかも、たとえば低速コーナーで「もうちょっとイン側を攻めるべきだった!」と感じたときでも、そこからステアリングを切り足せばフロントのスリップアングルはやや大きくなりながらもしっかりと反応してライン修正に応えてくれる。おまけに、小さなRを持つコーナーからの立ち上がりでは、4WDが十分以上のトラクションを発揮してくれるので、ドライバーはただ思い切ってスロットルペダルを踏み込むだけでパナメーラGTSは勢いよくコーナーを脱出する。この辺の扱いやすさは極めて高く評価できるものだ。

 

 

ヘビーウェイトを感じる局面も

 

反対に、パナメーラGTSが苦手とするのは左右に素早くノーズの向きを切り返すようなシーン。このようなときには、さすがに車重の重さを感じないわけにはいかないが、たとえばステアリングを右に切ったときに発生したヨーをフェイントモーション気味に活用すれば、テールが振り子のように振り出されてオーバーステア傾向を生み出すことも可能で、これがうまくいけば思った以上にコンパクトにターンできる。

 

その際、切り返しのふたつめではカウンターステアを当てることなく、切ったなりの操舵角をそのまま維持していれば、リヤのグリップが自動的に回復してコーナーの立ち上がりでは自然と脱出方向を目指す態勢を作り出せる。これも低速シケインの立ち上がりでは有効なテクニックだろう。

 

ちなみに、上述したシケインでの挙動はスタビリティコントロールをスポーツ・モードに設定したときのもの。スタビリティコントロールがオンの状態ではほとんどテールの動きを許してくれないが、PSMスイッチを短時間押すことで選択できるスポーツ・モードではリヤのスリップアングルを一定範囲で許容してくれる。

 

 

シャシー性能か、居住性や使い勝手か?

 

ところで、ポルシェはタイプ991の後期型以降、スタビリティコントロールのストラテジーを見直したという。これまではドライビングモードとPSMが連動して切り替わっていたが、最新モデルではそれぞれが独立して設定できるようになったほか、たとえPSMオフの状態でスピンしてもABSが作動するほど強くブレーキを踏めばPSMのシステムが自動的に復帰し、クルマの安定状態を取り戻そうとするという。これは理に適ったセッティングだし、ドライビングモードでスポーツ+を選択してもPSMをオンにしておくことができるなどのメリットがある。極めて実質的な設定といえるだろう。

 

シャシー性能ではセダンのパナメーラGTSに分があるが、後席の居住性やラゲッジスペースではワゴン風のパナメーラGTSスポーツツーリスモが有利。どちらがいいかは簡単には決められないものの、パナメーラGTSに興味深いふたつの個性が揃ったことだけは間違いなさそうだ。

 

 

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)

 

 

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ パナメーラ GTS(スポーツ ツーリスモ)

ボディサイズ:全長5053 全幅1937 全高1417(1422)mm

ホイールベース:2950mm

トレッド:前1657 後1639mm

車両重量:1995(2025)kg

 

エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ

総排気量:3996cc

ボア×ストローク:86×86mm

圧縮比:10.1

最高出力:338kW / 460ps/6000 – 6500rpm

最大トルク:620Nm/1800 – 4500rpm

トランスミッション:8速DCT

駆動方式:AWD

 

ステアリング形式:電動式パワーアシスト付きラック&ピニオン

サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

ディスク径:前390×38 後365×28mm

タイヤサイズ:前275/40ZR20 後315/35ZR20

 

最高速度:292(289)km/h

0-100km/h加速:4.1(4.1)秒

0-160km/h加速:9.6(9.7)秒

0-200km/h加速:15.4(15.6)秒

 

CO2排出量(EU):235(242)g/km

燃料消費量(EU複合):10.3(10.6)/100km

 

 

【問い合わせ】

ポルシェ カスタマーケアセンター

TEL 0120-846-911

http://www.porsche.com/japan/

 

 

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