【ポルシェ図鑑】「ポルシェ Typ 597 ヤークトヴァーゲン(1956)」カイエンやマカンのルーツ。

1956  Porsche Typ597 Jagdwagen

 

 

きっかけはドイツ連邦共和国からの打診。

 

Typ597 “ヤークトヴァーゲン”はポルシェ356のフラット4ユニットを流用して開発された、カイエンやマカンのルーツといえるリヤエンジンの4輪駆動車である。

 

1955年5月5日に主権回復宣言を行ったドイツ連邦共和国(西ドイツ)では、再軍備の準備が進められることとなり、各自動車メーカーに対し、小型多目的車の開発を打診した。

 

それを受け1953年から独自に4輪駆動車の研究を進めてきたポルシェは、356の空冷フラット4をリヤに搭載した4WDのTyp597を製作する。

 

 

全長3700mm、ホイールベース2060mmのシャシーは軽量かつ頑丈なプレス鋼板のモノコックで、水陸両用を考慮したサイドシルの高いバスタブタイプのモノコックシャシーなど、その構造は戦時中にポルシェが開発したTyp82 キューベルワーゲン、Typ166 シュビムワーゲンの影響が随所に感じられるものとなっていた。

 

そのほかフロント・ダブルトレーリングアーム、リヤ・スウィングアクスルのサスペンションは基本的にビートル、356と同じものを採用。エンジンは356の1.5リッターユニットを搭載していたが、すぐに50hpを発揮する1.6リッターユニットに載せ替えられ、リヤアクスルにZF製のデフロックを備えたパートタイムAWDシステムが組みあわされていた。

 

 

軍用のほか民生用も生産。

 

DKW、ボルクワルドヴァルトの開発した試作車と共に行われた当局のテストでは、990kgの軽量なボディとAWDの効果で良好な走破性を示したものの、脆弱なサスペンション、高速志向すぎるエンジン、フロント燃料タンク、リヤエンジンゆえの収納スペースの少なさなど構造的な欠陥が指摘されている。

 

その後も様々なテストが行われ、実用化の道が探られたが、ボディの剛性不足やパワートレインのトラブルに加え、製造コストが高すぎること、ポルシェ側の生産体制が整っていないことが理由となり、DKWムンガが正式採用されることとなった。

 

ポルシェではその後もユーティリティや高速安定性を改善したロングホイールベース版など、いくつかの計画を提案したが、最終的に軍用22台、民生用49台の合計71台が生産されるだけにとどまった。

 

軍用車らしくシンプルなコクピット。ギヤボックスは4速MTで、2WDと4WDの切り替えはミドルシフトレバーを使って行う。水陸両用化を狙いバスタブ状になったモノコックシャシーの様子もよくわかる。

 

 

【SPECIFICATION】

ポルシェ Typ 597 ヤークトヴァーゲン
年式:1956年
エンジン形式:空冷水平対向4気筒OHV
排気量:1582cc
最高出力:50hp
最高速度:100km/h

 

 

TEXT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)