コレクターを魅了する、ジクの「ポルシェ356」ミニカー。

2019/02/10 11:55

ドイツのミニカーメーカー「ジク」が手がけた356。

 

今回紹介する「ポルシェ356」のミニチュアカーは、1955年にドイツのミニカーブランド「ジク(SIKU)」によって発売された。金属製パーツとプラスチックによって作られたこの356は、様々な可動パーツを持つビッグスケールミニチュアカーだ。

 

ポルシェのミニチュアカーのコレクターは、無限と言えるほど多くの製品が発売されていることを理解している。その全てを収集することは、至難の技と言えるだろう。ドイツにおいて初めてポルシェのミニカーが発売されたのは、シートメタル製の「ゲッシャ(Gescha)」。その後「ノイヒール(Neuhierl)」、「バッハ(Bach)」、「ニーダマイアー(Niedermeier)」などのメーカーが続いた。

 

さらに日本の玩具メーカーからも高品質なミニカーが多数発売され、コレクターからも高い人気を誇っている。しかし、シートメタル製ミニカーは1960年代半ば以降、その人気を失っていく。尖った金属製パーツによる怪我や誤飲の危険性が、子供の親や消費者団体から指摘されるようになったからだ。その後、より安全なダイキャスト製やプラスチック製ミニカーが中心となっていった。

 

 

ドイツの子供たちに親しまれたジクのビッグスケール。

 

ドイツのコレクターの多くが最初に触れたミニカーは、「マッチボックス(Matchbox)」、もしくはジーパー(Sieper)社のミニカーブランド「ジク」だろう。1921年創業のジーパー社が「ジク」を立ち上げたのは1951年。現在も市販モデルからトラクターまで様々な車種をラインアップするヨーロッパのトップブランドだ。

 

彼らが最初に発売したのは、ビッグスケールの消防車、水陸両用車、そして想像上のレーシングカーだった。ところが、1954年ごろになると高価なビッグスケールは人気が落ち始め、以降は現在も販売が続く1/60スケールが主流を占めるようになった。そんな中、「ジク」は1955年にビッグスケールの決定版とも言える、モデルナンバー190、「ポルシェ356スプリットウィンドウ」を発売。1/16スケール、全長25cmの金属&プラスチック製だった。

 

オリジナルの356からの再現度は非常に高く、ズシリとした質感が特徴。ジクはこのモデルでプラスチックパーツの使用を完全にマスターしたと言える。インテリアはカーキ色の金属板製で、小さなステアリングホイールが付く。フロントにフリクションドライブを搭載し、ダイキャスト製ホイールとゴム製タイヤによって、スムーズな走行を楽しむことができる。

 

 

リヤに取り外し可能なフラット4ユニットを搭載。

 

このジク製356をユニークな存在にしているのはその中身にある。リヤエンジンフードの奥には、取り外し可能な4気筒水平対向エンジンが収まっているのだ。この透明な可動エンジンパーツは、1930年代初頭に「ゲッシャ」が特許を取得していたもの。ジクは356に、精巧なフラット4エンジンを搭載するために、ゲッシャとライセンス交渉を行なった。

 

多くの子供たちがリヤアクスルの歯車を介して、動力がエンジンブロックのシリンダーに伝わるのを見て感動したに違いない。ジクはラインナップに精巧なスポーツカーを追加しただけでなく、リヤエンジン・リヤドライブの仕組みを伝える知育玩具を市場に送り出したことになる。そして、取り外し可能なエンジンやドライブトレーンの仕組みなどが一目で分かるボックスアートは、センセーションを引き起こした。

 

残念ながら、このポルシェ356は数ヵ月で生産が打ち切られることになった。そして、わずかな台数が現在まで生き残った。このブルーモーリシャスの356は非常に希少性が高く、美麗な状態の箱付きで保存されているため、マニアの間で1万ユーロ(約120万円)以上の高値で取引されている。