【ポルシェ図鑑】「ポルシェ 911(1963)」水平対向6気筒RRスポーツの誕生。

2019/02/11 11:55

1963  Porsche 911(901)

 

 

唯一無二のGTスポーツ「911」誕生。

 

ポルシェ911は1963年9月12日に開幕したフランクフルト・モーターショーで公開された356の後継にあたるモデル。登場以来、水平対向6気筒エンジンを搭載するRRレイアウトの2+2GTというコンセプトを変えることなく現在まで作り続けられている唯一無二のGTスポーツでもある。

 

ポルシェ社内では1951年からセールス部門の要求に応え、大容量のラゲッジルームと室内を備えた4シーター356の検討が何度も行われてきた経緯がある。そこで1957年にスタートしたT7(テクニカル・プログラム7)プロジェクトでは、フェリー・ポルシェ自らがフロント2座、リヤに356より大きめの2座を配置した高性能GTというコンセプトを掲げ、開発がスタートすることとなった。

 

その基本構成は1959年に完成したTyp754で確立していたが、フェリーが居住スペースを確保するために採用したノッチバック風のルーフラインを気に入らず、幾度かの手直しののちお馴染みのファストバック風のスタイルに改められている。

 

 

130hpを発揮する水平対向6気筒エンジンを開発。

 

エンジンはTyp754用に開発するも問題の多かったフラット6 OHV”745″ユニットを諦め、新たなエンジンの設計を開始。スポーツレーシングカー(904)に転用することを前提とした空冷水平対向6気筒SOHC”901″ユニットを開発する。鋳鉄製シリンダーにアルミの冷却フィンを組み込んだ”バイラル”シリンダー、7ベアリング鍛造クランクシャフト、ドライサンプなど、将来を見越した余裕のある設計となっていたこのエンジンの排気量は1991cc。最高出力130hpと4カムのカレラユニットに匹敵するパワーを発揮しながら、低騒音、低振動を実現しており、新開発の5速ギヤボックスとの組み合わせで最高速度210km/hを記録した。

 

シャシーは左右にボックス状のシルをもつフロアパンと応力外皮のルーフを組み合わせたポルシェ初のモノコック構造で、ホイールベースはTyp754の2400mmから2211mmに短縮されている。加えてサスペンションもTyp754で採用したフロント・マクファーソンストラット+トーションバーに加え、リヤにはセミトレーリングアーム+トーションバーの組み合わせが新たに採用された。

 

 

多数の問題により、製造数は82台に留まる。

 

こうして1962年11月に完成した901は1963年9月のフランクフルト・ショーでワールドプレミアされるのだが、実際の生産は遅々として始まらなかった。

 

というのも予定以上に重量が増加し、クラッチ込みで184kgあったフラット6とシャシー、サスペンションとのバランスが取れずハンドリングに問題を抱えていたうえ、生産ラインの精度にも問題があったからだ。またフラット6エンジンも冷却やオイル潤滑、キャブレターなどに問題を抱えており、常に設計変更が繰り返されたこともあって、1964年10月までに82台が製造された(諸説あり)先行量産車というべき901は、1台として同じディテールをもつ個体がないといわれている。

 

結局、ハンドリングと横風に敏感な直進安定性の問題はフロントバンパーの端に22kgのウエイトを入れることで改善され、ようやく本格的な生産に移るのだが、今度は真ん中に0を入れる3桁数字を商標登録していたプジョーとのトラブルが発生。急遽車名を911に変更するというオマケまでついた。

 

 

改善された「911」は着実な発展を続ける。

 

産みの苦しみはあったものの、完成した911は当時の水準をはるかに上回る性能を発揮。1965年1月に開催されたモンテカルロ・ラリーには、ヘルベルト・リンゲと開発エンジニアのペーター・ファルクのコンビがエントリー。キャブレターをウェーバーに換装し150psにファインチューンしたエンジン以外は、ほぼストックという状態ながら総合5位に入賞してみせたのである。

 

その後1966年に開発責任者になったフェルディナント・ピエヒの進言で、フラットスポットが発生するソレックス・キャブレターをウェーバーへと変更。1967年モデルでは大径バルブ、アルミ鍛造ピストン、専用カムシャフト、窒化処理のコンロッド、ウェーバー40ISDキャブレターなどの採用で160hpへチューンした”901/02″エンジンを搭載する高性能モデルの「911S」が登場している。

 

続く1968年モデルで、911はAシリーズ(それ以前は0シリーズとも呼ばれる)へと進化。内外装の意匠が一部変わったほか、鋳鉄シリンダー、鋳鉄ロッカーアーム、カウンターウェイトを外したクランクシャフトを採用、さらに4速MTを標準とした110hpの廉価版911T(ツーリング)が追加された。また各モデルにオートクラッチを備えた2ペダル4速セミオートマティックのスポルトマティック仕様が用意されるなど、高性能スポーツGTとしてそのラインナップを広げていくことになる。

 

 

 

ポルシェ・ミュージアムが所有する911の中で最も古い個体が、1964年10月22日にラインオフしたシャシーナンバー300 057である。2015年にボロボロの状態でミュージアムに引き取られ、ポルシェ・クラシックで徹底的なレストアを実施。2017年に完成し、新車当時の姿を取り戻した。

 

 

1962年に完成した901の第1号車901/1。サイドシルのモールがないほか、写真には写っていないがリヤフードのルーバーも後の生産型と違うものがついている。インパネもTyp754に近いスタイルだった。

 

 

901/1とその産みの親のひとりである、フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ。生前、904と並び911を自身の代表作のひとつと語っていたという。

 

 

911のために開発された1991cc 空冷水平対向6気筒SOHC 901ユニット。当初は写真のソレックス・トリプルチョーク40PIIが装着されていたが、フラットスポットがあり調整が難しいことから、1966年にウェーバーに換えられた。

 

 

1965年のモンテカルロ・ラリーに出場し、デビューレースで総合5位に食い込んだヘルベルト・リンゲ/ペーター・ファルク組の911。このマシンも2015年のポルシェ・クラシックでレストアされ、個人オーナーの元にある。

 

 

1967年モデルとして登場した高性能版の911S。この年からフックス社製の鍛造軽合金製ホイール(911Sには標準)が用意されるようになり、1968年にはリム幅が5.5Jへと拡大された。

 

 

【SPECIFICATION】

ポルシェ911(901)

年式:1963年
エンジン形式:空冷水平対向6気筒SOHC
排気量:1991cc
最高出力:130hp
最高速度:210km/h

 

 

TEXT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
COOPERATION/ポルシェ ジャパン(Porsche Japan KK)

 

 

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