アストンマーティンの雪上イベント「On Ice」体験記。見事、オーバーステア習得に成功!

ASTON MARTIN On Ice 2019

アストンマーティン・オン・アイス 2019

 

 

充実したホスピタリティの中でドライビングを学ぶ。

 

北海道で開催された「アストンマーティン・オン・アイス」という雪上イベントに参加して、これまでどうしてもできなかったドライビング・テクニックを習得した。短時間でここまで大幅に自分のスキルが向上したのは生まれて初めてのこと。なぜアストンマーティンで、そしてなぜ雪上ドライビングでそれが可能になったのか? 当日の様子をリポートしよう。

 

アジア太平洋地区で2016年に始まったアストンマーティン・オン・アイスが北海道の十勝スピードウェイで開催されるのは、昨年に続いてこれが2回目。基本的には参加料さえ支払えば誰にでもエントリーできるイベントだが、使用される車両はアストンマーティンの最新モデル(主にDB11やヴァンテージ)で、充実したホスピタリティや豪華施設での2泊分の宿泊代も含んで料金はおひとり様85万円。決して安くはないが、それだけ価値があるイベントだと太鼓判を押したい。

 

 

リアルタイムでアドバイスを受けられる。

 

理由は主にふたつある。ひとつは試乗車にはスパイクタイヤが装着されていること。公道での使用が禁止されているスパイクタイヤだが、雪や氷の上で使う限り粉じん問題は起こさないしクローズドコースであれば法律にも触れない。しかもスパイクタイヤはスタッドレスタイヤと違って滑り始めてからもグリップが“粘る”ので、雪上や氷上でも舗装路に近いタイヤのスライド感覚が得られる。おまけに限界速度は舗装路よりはるかに低いので安全に車両コントロールの習得が可能。つまり、このイベントで学ぶのはスノードライビングそのものというよりは「舗装路におけるドリフト・コントロールのスキル・アップ」と考えたほうがいいかもしれない。

 

理由のふたつめは、インストラクターのアドバイスをリアルタイムで受けられること。基本的に試乗車に乗り込むのは参加者ひとりだけで、インストラクターはその様子を車外から見ることになるが、運転をしているまさにその瞬間にインストラクターから「スロットルの開け方が乱暴ですよ!」「もう少しタイミングよくカウンターステアをあてましょう」といったアドバイスを受けられるので、自分のどんな運転操作が悪かったのか、なにを改善すればいいかがとてもわかりやすい。

 

 

たとえば、自分が2本の走行をしたとして、「オオタニさん、いまの1本目はよかったけれど2本目はアクセルの踏み込み方が多すぎましたね」とあとからいわれても、もうどれがどうだったのかわからない。それがその場その場で指摘を受けられるので「ああ、たしかにちょっと踏みすぎた」とか「やっぱりカウンターがわずかに遅かったか」ということがわかりやすいのだ。しかも、このようなトレーニングを何度も繰り返し受けられるのだから、短時間で見る見る上達できるのも当然といえるだろう。

 

ちなみにインストラクターを務めるのは桂伸一さんや佐藤久実さんなどお馴染みのメンバー。桂さんはアストンマーティンのワークスドライバーとしてニュル24時間にも出場した腕利きなので、アストンのことは知り尽くしているといっても過言ではない。

 

 

実践的な4つのメニューを体験。

 

走行するコースは定常円旋回、八の字スラローム、パイロンスラローム(低速および中速)、ハンドリングコースの4種類。定常円旋回はドリフト・コントロールの基礎を習得するのにうってつけで、八の字スラロームは定常円旋回の正方向と逆方向を繰り返すことでコントロール能力の左右差を解消するのに役立つ。また、八の字スラロームはフェイントモーションに役立つ“振り子の原理”を学ぶにも都合がいい。低速と中速の2種類が用意されたスラロームコースでは、様々な種類のドリフト・コントロールをリズミカルに行えるようになる練習ができる。そしていろいろなタイプのコーナーが連続するハンドリングコースでは、それらのテクニックを組み合わせることでより実戦的なドライビングを身につけられるのだ。

 

ひとつひとつのコースについて詳細を述べるよりも、私が学んだポイントについて説明したほうが話の流れとしては効率的だろう。

 

 

オーバーステアを保つには・・・。

 

私のドライビングの問題点は、最初のステップである定常円旋回で桂インストラクターによって指摘された。

 

今回の定常円旋回は、丸く並べられた赤いパイロンのなかに一本だけ緑色のパイロンを混ぜておき、クルマのノーズがここに差し掛かったらスロットルペダルを大きく煽ってオーバーステアの態勢を作り出すというもの。ここまでであれば私は以前からできていたが、できなかったのはこの先。つまり、オーバーステアの態勢を維持しながらパイロンの周囲を回り続けることだった。というのも、緑のパイロンでオーバーステアになっても、すぐにグリップ走行に戻ってしまって、オーバーステアを保てなかったからだ。

 

ここで桂インストラクターは私にこうアドバイスしてくれた。

 

「オオタニさんは、最初のオーバーステアを作るのはできるし、そこでカウンターステアをあてることもできる。ただし、カウンターステアをあてたときにスロットルペダルを大きく戻しているので、ここでリアのグリップが回復してオーバーステアが収まってしまう。そのときのスロットルペダルの戻し方をもう少し少なく、おだやかにできませんか?」

 

なるほど、桂インストラクターのいうとおり、私はほとんど完全オフまでスロットルを戻していた。するとリアのグリップが一瞬にして回復し、再びオーバーステアにしようとするとまたまたスロットルを大きく踏み込まなければならず、いったりきたりになって安定したオーバーステアの状態を保てなかったのだ。

 

 

ひとつひとつ丁寧に説明。

 

とはいえ、「オーバーステアを早く鎮めたい」という心理から、どうしてもスロットルを大きく戻してしまう。うーん、難しい。それでも何度か試すウチに、戻す量をそれまでの半分くらいまでできるようになった。するとリアのグリップが完全には復帰せず、オーバーステアの姿勢をなんとか保てるではないか! しかし、私のスロットル操作が荒いため、オーバーステアの時間は徐々に長引くようにはなっても1周まるまるドリフトさせることはできない。それでも桂インストラクターは、失敗した理由をひとつずつていねいに説明して、「もっとこうしたらいい」とアドバイスしてくれる。それを何度か繰り返すうちに、ようやく1周、いやときによっては2周程度までドリフト状態を維持できるようになったのである。

 

定常円旋回でドリフトを維持し続けるのは、見ためには派手だ。けれども、ドライバーに要求される操作は極めて繊細で微妙なものである。だから、私のように乱暴にスロットルをオン・オフしていては一定の安定した状態を維持できない。そのことを桂インストラクターは噛み砕いて、諦めずに教えてくれたのだ。

 

 

アストンマーティンに似合うドライビングを!

 

このコツがある程度呑み込めてくると、その後の八の字スラローム、パイロンスラローム、ハンドリングコースでもそれまで以上にクルマを正確にコントロールできるようになる。しかも、フルカウンターを繰り返すような荒々しい走りではなく、オーバーステアの量もドリフトアングルもドライバーの操作も最小限の、流れるように美しいドライビングに近づいていく。桂インストラクターは何度も私に「もっとスマートなドライビングを。それがアストンマーティンには似つかわしいと思います」と語ってくれたが、その極意が少しずつ身体に馴染んでいくのがわかった。そして、そのたびに運転がたまらなく楽しくなっていった。

 

ただし、落とし穴もあった。クルマを乗り換えるとタイヤのグリップ力などに差があるせいで、それまでほど精妙にコントロールできないことがある。すると、思い通りのドライビングができないことで頭がヒートアップし、またまた運転操作が荒くなり、ドリフトアングルが大きくなっていってしまう。そんなとき、定常円旋回で桂インストラクターから聞いた言葉がふと思い出された。

 

「一度ドライビングが乱れたら、オーバーステアではなくグリップ走行になるまでスピードを落とし、頭を冷やしてみるといい」

 

 

ああ、そうそう、それだ、それ。ハンドリングコースで荒れたドライビングをしていた私は一旦ペースを落とし、グリップ走行で1周走ってみることにした。すると、次のラップではまたドリフトアングルの小さな、桂インストラクターがいうところの「スマートなドライビング」に近づくことができた。やっぱり、基本を忘れてはいけないのである。

 

 

各モデルの出来の良さも再認識する。

 

それにしても驚いたのは、こうしたドライビングにアストンマーティンの各モデルがしっかりと応えてくれた点にある。「いやいや、アナタのドライビングがダメだっただけでしょう」と言われればそれまでだが、ダメなドライビングにはそれなりに、きれいなドライビングをすれば美しいドリフト走行で応えてくれるアストンマーティンの最新モデルは、やはり基本がしっかりできたスポーツカーだと思わずにはいられなかった。

 

「ええ、そうなんです。一度乗っていただければアストンマーティンがいかに素晴らしいクルマかをわかっていただけます」

 

アストンマーティンのアジア太平洋地区を統括するパトリック・ニルソン社長にこの日の感想を伝えると、彼はそう応えた。

 

「だから、私たちの仕事は簡単なんです。皆さんに乗っていただければアストンマーティンのよさをご理解いただいて、製品を買っていただける。ね、アナタもそう思うでしょう?」

 

うーん。イギリス仕込みのジョークはやっぱり奥が深い。

 

 

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)

 

 

夜にも楽しみが用意される「オン・アイス」。

 

 

イベント終了後には、有名な十勝温泉のホテル「三余庵」と「豊州亭」にて充実したメニューが用意されているのもオン・アイスの魅力。日中は楽しく学びながら上達し、夜は美味しい料理と地域ならではの催しが見られるだけに、参加者だけでなく、家族や友人など連れも満足できるのは嬉しい。

 

 

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