ポルシェ911カレラS & 4S 動画レポート! タイプ992の実情を島下泰久が伝える。

2019/02/26 20:02

Porsche 911 Carrera S & 4S

ポルシェ 911 カレラ S & 4S(Type 992)

 

 

 

これまでの常識を塗り替えられたような気持ち。

 

昨年11月にLAで発表され、そして12月にはホッケンハイムにてテクニカル・ワークショップが実施された新型「ポルシェ911カレラS/カレラ4S(タイプ992)」を、やっとドライバーズシートで試す日がやってきた。新型のコンセプト、メカニズムの詳細についてはGENROQ Webで詳細に採り上げてきたから、必要ならばそちらを参照してほしい(関連リンク参照)。ここではヴァレンシアで行なわれたプレス向け国際試乗会でのファーストインプレッションをお伝えする。

 

舞台となったヴァレンシアのリカルド・トロモ・サーキットに用意されていたのは、すでに発表されている911カレラS/カレラ4Sの、いずれも8速PDK仕様だった。まずここを起点とする一般道の試乗に駆り出したのは、カレラ4S。リアアクスルステアリング、PDCCなどを装着した、ほぼフルオプションの車両だ。

 

 

最初に感じたのは、なんとも不思議なフィーリングであった。前後左右への姿勢変化がきわめて小さく、その点ではクルマがどっしり大きくなったようなのに、動きは明らかに軽やか。しかも乗り心地も上々なのだ。

 

実際、ホイールベースは従来から変わっていないが、前後トレッドは拡大されているし、サスペンションもスプリングレートが大幅に引き上げられているから、姿勢がフラットに保たれるのも、操舵に対して機敏に反応するのも解る。試乗車に装着されていたリアアクスルステアリング、PDCCも、それを後押ししているのは間違いない。その上、新しいダンパーのしなやかな動きが快適性向上に大きな役割を果たしているのも想像はできるのだが、実際にこれだけのレベルで、背反するはずの要素が両立しているのを体感すると、狐につままれたような気持ちにさせられるというか、これまでの常識が塗り替えられるような感じにさせられてしまう。

 

 

リアステアは先代比で6%クイックに。

 

軽やかにレスポンスし、全域にみっちりとトルクが詰まった水平対向3.0リッターツインターボエンジンも、そんな印象を強調している。機を見るに敏な8速PDKとの連携プレイで、いつでもアクセル操作に対して即応して欲しいだけの力をもたらしてくれるから、これまたクルマが軽快に感じられる。実はトルクカーブを見ると先代よりもアイドリング付近が痩せていて心配していたのだが、まったくの杞憂だった。変速自体も非常にスムーズで、不満の出る余地は皆無と言っていい。

 

唯一、引っかかったのがサウンドである。ベーベーと低音が強調され、抜けも良くない排気音の元凶は、ヨーロッパ仕様に備わるGPF(ガソリン微粒子フィルター)だろうか。日本仕様がもう少し良い音であることを願うばかりだ。

 

 

ワインディングロードでは、やや鼻先が重たげではありつつもトラクションは強力で、タイトコーナー立ち上がりで敢えてドンッとアクセルを踏み込んでも、スキッドする気配すら見せない。一瞬のうちに前輪にトルクが移り、リアがグリップを回復してしまうからで、安心感は非常に高い。但し、こうした場面でステアリングフィールが微妙に変化するのは気になるところではあった。

 

続いてカレラSに乗り換えると、まるで服を1枚脱ぎ捨てたかのように軽快な走りを堪能することができた。カレラ4Sと較べるとやはり車体が軽いのは明らかで、右に左に思い通り向きが変わる。ステアリングフィールも上々。切り込んでいくとほとんどロールを感じさせることなく旋回していく。先代に較べて、リアアクスルステアリング装着車では6%ステアリングがクイックになっているはずだが、それについてはさほど大きな差は無いように思えた。

 

 

操舵に対して忠実に制御するウェットモード。

 

そして、散水車で水をまいたカートコースで新採用のポルシェ・ウェットモードを体験。PSMでオーバーステアを防ぐだけでなく、ダウンフォースを増やし、スロットルを絞り、必要ならばブレーキをかけることでアンダーステアも抑え、また操舵に対してできるだけ忠実にクルマを曲げてやろうという制御は、確かにこうした路面では有用と実感した。とりわけ、ゲリラ豪雨にも見舞われる日本では、ギミックなどと馬鹿にしないほうが良さそうだ。

 

 

リラックスして攻め続けられる「992」!

 

そうして、いよいよサーキット走行の順番が巡ってきた。インストラクターを2台の参加車両が追従する走行で、先導するのは昨年のバンコク – シンガポール2000kmツアーをともにしたAdmi。気心知れているせいか、最初から思い切り行ってくれた。

 

ここでまず唸らされたのは、その乗りやすさである。グリップは縦方向にも横方向にも予想するより更に先まであるという印象だし、しかもそれを超える際にもピーキーさは皆無。フロントもリアもタイヤの状態が生々しく伝わってくるから、スキール音が鳴る領域でも、あるいは更にその先のスライドしはじめる所でも、至極リラックスして攻め続けられるのだ。

 

リカルド・トロモは全体に、クリッピングを奥に取って車体を真っ直ぐにしてからアクセルオンというガマンのコーナーが多い。事前に車載ビデオを観たマーク・ウェバーはトレールブレーキングを多用していたから、筆者もそれを真似てブレーキングを奥まで堪えて一気に減速しながら舵を入れていくと、ちょうどニュートラルステアに近い感覚で曲がっていくことができた。

 

PSMの制御の巧みさも感心させられたところで、攻め過ぎると確かに介入するのは解るのだが失速感は無く、リズムが崩されることがない。PSMオンのままでも、相当なところまで安心してスポーツドライビングを楽しめるのは嬉しい。

 

 

進化の大きさは想像を超えるレベル!

 

エンジンの印象は一般道でのそれと同じで、とにかく全域で扱いやすく、そして速い。7500rpmまできっちり使い切れるだけでなく高回転域に近づくほど切れ味を増してくるから、ついつい右足に力が入る。一方、新素材ブレーキペダルを使い、ストロークを短縮したブレーキは基本的にはカチッとした小気味いいタッチなのだが、時に足裏へのフィードバックに揺らぎがあるのが引っかかった。制動力については、これはもう申し分無いものだったのは間違いない。

 

タイプ997からタイプ991への移行では、特にその走りの面で、911がスーパースポーツというカテゴリーへと仲間入りするような大きな飛躍を感じた。それに較べるとタイプ992は、タイプ991からの変化という点では驚きは少ないが、しかし進化の大きさは想像を超えるレベルにあった。タイプ991が繊細な印象に思えてくるというか、タイプ992は明らかに軽快で、ソリッドで、パワフル。全方位への飛躍的な進化の代償で味わいとしてはややドライな印象も無くはないが、それでもこのパフォーマンスの前ではひれ伏すしか無い。

 

 

「ポルシェの流儀」は992でも貫かれている。

 

普段遣いがまったく苦にならない911らしさも、変わらず継承されている。いや、むしろ実用車としてもその走りの上質さ、扱いやすさはきわめて高いレベルにある。凡百のセダンでは足元にも及ばないくらいに。誤解を恐れず言えば、特にPDK仕様だと普段乗りは”いい車過ぎて”退屈に感じるかもしれないとすら思ったほどだが、それはこの余裕を刺激的な走りの方に寄せたGT3などのモデルを、一層楽しみなものにする要素であることも、また事実である。

 

贅沢過ぎる不満も記したが、個人的にはこのタイプ992、マッシヴで未来的な部分もあるスタイリングや先進のインターフェイスを備えつつも伝統の匂いを意識させるインテリアも含めて、凄まじく気に入っている。まだ先になりそうな気配だが、カレラの左ハンドルのMTが導入されるならば、その時には・・・と目論んでいるのだが、但し、価格は気がかりだ。既に発表済みの911カレラS PDK仕様の価格は1666万円、カレラ4Sでは1772万円と、前者がざっと80万円、後者も60万円ほど値上がりしているから、筆者の望む、おそらく911ではもっと廉価な仕様でも1300万円台には入ってきそう。しかも左ハンドルやMTが、導入されるかどうかは定かではないのだ。

 

話が逸れたが、とにかく言えるのは新型911が筆者をソノ気にさせる仕上がりだったということである。期待通り、その完成度は想像のもう一歩、いや二歩は先を行っていた。いつものポルシェの流儀は、ここでもしっかり貫かれたのである。

 

 

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)

 

※本記事は、2019年2月5日掲載の原稿より転記。

 

 

【SPECIFICATION】

ポルシェ911カレラS

ボディサイズ:全長4519 全幅1852 全高1300mm
ホイールベース:2450mm

トレッド:前1589 後1557mm
車両重量:1515kg

 

エンジン:水平対向6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2981cc

ボア×ストローク:91.0×76.4mm

圧縮比:10.2
最高出力:331kW(450ps)/6500rpm
最大トルク:530Nm/2300 – 5000rpm
トランスミッション:8速DCT(PDK)
駆動方式:RWD

 

ステアリング形式:電動パワーアシスト

(オプション:リアアクスルステアリング)
サスペンション形式:前マクファーレンストラット 後マルチリンク
ブレーキシステム:前6ピストン 後4ピストン(アルミモノブロック)

ディスク径:前350×34 後350×28mm

タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR20(8.5J)後305/30ZR21(11.5J)

 

最高速度:308km/h

0 – 100km/h加速:3.7(3.5)秒

0 – 160km/h加速:8.1(7.8)秒

0 – 200km/h加速:12.4(12.1)秒

※( )内はスポーツプラスモード時

 

CO2排出量(EU):205g/km

燃料消費率(EU複合):8.9L/100km

 

 

ポルシェ911カレラ4S

ボディサイズ:全長4519 全幅1852 全高1300mm
ホイールベース:2450mm

トレッド:前1589 後1557mm
車両重量:1565kg

 

エンジン:水平対向6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2981cc

ボア×ストローク:91.0×76.4mm

圧縮比:10.2
最高出力:331kW(450ps)/6500rpm
最大トルク:530Nm/2300 – 5000rpm
トランスミッション:8速DCT(PDK)
駆動方式:AWD

 

ステアリング形式:電動パワーアシスト

(オプション:リアアクスルステアリング)
サスペンション形式:前マクファーレンストラット 後マルチリンク
ブレーキシステム:前6ピストン 後4ピストン(アルミモノブロック)

ディスク径:前350×34 後350×28mm

タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR20(8.5J)後305/30ZR21(11.5J)

 

最高速度:306km/h

0 – 100km/h加速:3.6(3.4)秒

0 – 160km/h加速:8.3(8.0)秒

0 – 200km/h加速:12.7(12.4)秒

※( )内はスポーツプラスモード時

 

CO2排出量(EU):206g/km

燃料消費率(EU複合):9.0L/100km

 

 

【問い合わせ】

ポルシェ カスタマーケアセンター

TEL  0120-846-911

http://www.porsche.com/japan/