マクラーレン720Sスパイダー初試乗! 高いパフォーマンスまでゴージャスに味わえる。

2019/03/03 17:55

McLaren 720S Spider

マクラーレン 720S スパイダー

 

 

ルーフの開閉は11秒で完了。

 

マクラーレンの中核モデルである720Sにコンバーチブルモデルのスパイダーが追加された。

 

カーボンモノコックをボディの基本とするマクラーレンの各モデルが仮にルーフを切り取っても剛性が低下しないことは周知のとおり。ボディ剛性の低下がないからハンドリングや乗り心地への影響もなく、モノコックボディのコンバーチブル化で必要となるボディ補強も不要なため重量増はごくわずか。このためマクラーレンのスパイダー人気は高く、全販売台数のおよそ50%がスパイダーで占められているそうだ。

 

だからといってコンバーチブル化が「ルーフを切り取って、はい出来上がり」というほど簡単な作業であるはずがない。むしろ軽量化を重視するマクラーレンだけに、その作業には想像以上に多くのこだわりが詰まっているともいえる。

 

 

たとえばマクラーレンのコンバーチブルモデルには決まってリトラクタブル・ハードトップが採用されるが、その駆動方式は従来の電動ポンプ+油圧式から720Sでは7個のモーターを駆使する純電動式に改められた。この結果、ルーフの開閉に必要な時間は650Sスパイダーの17秒から一気に11秒へと短縮。開閉が可能なスピードの上限も30km/hから50km/hに引き上げられた。

 

 

安全性と軽量化への工夫も際立つ。

 

720Sクーペに用いられたモノコックはモノケージⅡと呼ばれる。マクラーレンのモノコックには大きく分けてモノセルとモノケージの2種類があって、モノセルはモノコック上部に構造体のない“バスタブ”形状のもの、モノケージはモノコック上部にもロールケージ状の構造体が取り付けられたものと分類できる。実際、720SクーペのモノケージⅡには横転時の安全性を確保するための“支柱”がルーフ部分を前後に貫いていて、片側にふたつずつ設けられたディヘドラルドアのヒンジのひとつもこの支柱上に設けられている。

 

ところが、720Sスパイダーにこの支柱はない。そこで横転時の安全性を確保するためにヘッドレスト後方にロールオーバー・プロテクション・システムを搭載。しかもこれをカーボン製にすることで、スチール製だった650Sのロールオーバー・プロテクションに比べて6.8kgも軽量に仕上がったという。これは重心高が上がるのを最小限に留めるのにも役立っているはずだ。

 

 

いっぽうで頭上の支柱がなくなればディヘドラルドアのヒンジがひとつ減ることになる。720Sクーペは、このドアヒンジをふたつにすることでドアを斜め前方に開く構造を実現。乗降に必要な開口部を確保しつつ、ボディの全幅方向にも全高方向にも大きなスペースを必要とせずにドアを開けられる構造としていた。

 

では、支柱のなくなった720Sスパイダーではどうしたのか? その答えは比較的単純なもので、650Sスパイダーと同じようにフロントタイヤ後方に設けたひとつのドアヒンジにより、ここを中心として上方に向けて回転するようにドアが開く構造に戻したのだ。もっとも、このままではドアを開ける際に必要となる上方のスペースが大きくなってしまうため、クーペよりもわずかにドア長を短縮し、クーペとほとんど変わらないスペースでもドアを全開にできるように工夫されている。

 

 

クーペと遜色ないパフォーマンス。

 

こうした様々な努力により、720Sスパイダーの車重はクーペよりわずかに49kg重いだけで、ボディ剛性は実質的に同等。重心高も数mmしか上がっていないという。さらに驚くべきはそのパフォーマンスで、0-100km/h加速は2.9秒でクーペと同一。クーペが7.8秒でこなす0-200km/h加速はたった0.1秒遅い7.9秒で走りきり、0-300km/h加速もクーペの21.4秒に対して22.4秒と1秒差に収めている。しかも、ルーフを閉じたときの最高速度が341km/hでクーペと同一なうえ、ルーフを開けても325km/hの最高速度をマークする。これには、斜め後方の視界を確保しつつ空力性能を改善するフライングバットレス(ロールオーバー・プロテクション・システムから後方に向かって伸びている半透明のパーツ)が効果を発揮している模様だ。

 

 

流しているだけでゴージャスな気分に。

 

720Sスパイダーの国際試乗会が催されたのはアメリカ・アリゾナ州のスコッツデール周辺。気温は7℃ほどと、いくら冬とはいえアリゾナにしてはずいぶん寒いが、空はキリリと晴れ上がっており、絶好のスパイダー日和に思えた。

 

アリゾナの一般道を720Sスパイダーで流していると、なんともゴージャスな気分を味わえる。マクラーレン最新のサスペンション・システム“プロアクティブシャシーコントロールⅡ”は、しっかりとボディを支えながら強いショックが加わってもフラットの姿勢を崩さず、並みのスポーツセダンよりもむしろ快適な乗り心地を示してくれる。また、ジェットエンジンを思わせる高周波成分の強い720S特有のエンジンノイズも低く抑えられていて、いたずらにドライバーを刺激することがない。さらに四方が見渡せる良好な視界が安心感の強いドライビングを可能にする。そういった要素が渾然一体となってゴージャスな雰囲気を作り上げているようだ。

 

 

もっとも、優れた快適性や静粛性、そして視界のよさであれば720Sクーペも同じように備えている。にもかかわらず、720Sスパイダーのほうがよりゴージャスに感じられるのは、やはりルーフを開けることで得られる開放感によるところが大きいのだろう。それどころか、720Sが備える数々の美点はルーフを開けるという行為で完結し、開発者がもともと目指していた世界観がこれで完成形になるようにさえ思えた。それほど720Sとオープンエアドライビングの相性はいいと断言できる。

 

 

100km/hでさえ快適に巡航。

 

スパイダーになって720Sが手に入れたものが、もうひとつある。キャビン後方に設けられたリアウインドウだ。これを閉めておけばクーペとまったく同じ静粛性が得られるいっぽう、開けば車内の換気に役立つうえ、抜けのいいエグゾーストノートの低周波成分がわずかに強調されて迫力が増し、エンジンサウンドをより積極的に楽しむモードへと切り替わる。もっとも、この状態でも決してうるさすぎることのない点がマクラーレンらしい。

 

さらにルーフを全開にすれば爽やかな風を満喫できる。しかもキャビンに大きく巻き込むこともなく、100km/hでさえ快適に巡航できたほど。これだったら400〜500kmのクルージングをこなしても肉体的な疲労はほとんど残らないだろう。

 

 

そして、もちろんボディ剛性の不足は一切感じられず、ハンドリングの正確さはクーペそのまま。周囲の交通がないワインディングロードで速いペースのコーナリングも試してみたが、720Sスパイダーは余裕綽々でコーナーを駆け抜けてみせた。この圧倒的なパフォーマンスもまた、ゴージャスな印象に貢献しているように思う。

 

スーパースポーツカーとしての圧倒的なパフォーマンスを備えていながら、快適性や日常的な使い勝手の面でも乗り手の心を揺り動かすほどの完成度を誇る720Sスパイダー。マクラーレンの手にかかると、完璧さもまた感動を呼び起こす原動力になるようだ。

 

 

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)

 

 

 

【SPECIFICATIONS】

マクラーレン 720S スパイダー

ボディサイズ:全長4543×全幅1930×全高1196mm

ホイールベース:2670mm

トレッド:前1674 後1629mm

乾燥重量:1332kg

車両重量:1468kg

 

エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ

総排気量:3994cc

最高出力:537kW(720ps)/7500rpm

最大トルク:770Nm/5500〜6500rpm

トランスミッション:7速DCT

駆動方式:RWD

 

ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン

サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)

ローター径:前390 後380㎜

タイヤサイズ(リム幅):前245/35R19(9J) 後305/30R20(11J)

 

最高速度:341km/h
0-100km/h加速:2.9秒
0-200km/h加速:7.9秒

0-400m加速:10.4秒

 

CO2排出量(EU):276g/km

燃料消費量(EU複合):11.6L/100km

 

車両本体価格:3788万8000円

 

 

【公式サイト】

マクラーレン オートモーティブ

https://jp.cars.mclaren.com

 

 

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