メガーヌR.S.カップを土砂降りのサーキットで試乗! これは手の届くスーパースポーツカーだ。

2019/03/08 18:02

RENAULT MAGANE R.S. CUP

メガーヌ ルノー・スポール カップ

 

 

変更点はシャシー性能の向上のみ!

 

ルノー・スポールは、スポーツドライビングを愛するドライバーの気持ちを100%受け止めてくれる走りの集団である。だからこの原稿も彼らの情熱を100%受け止めるつもりで書くことにする。

 

第三世代となったメガーヌR.S.で現状最もスポーティな性能を持つバージョンが今回紹介する「メガーヌR.S. シャシーカップ」だ。標準仕様(シャシースポール)に対する変更点はシャシー性能の向上のみ。

 

具体的にはフロントアンチロールバーレートで7%、フロントスプリングで23%、リアスプリングで35%、ダンパー減衰力で25%剛性を高め、駆動系にはJTEKT製トルセンLSD(TYPE-B 2WD車用LSD)を装備。トランスミッションには6速MTが搭載された100台限定のモデルである。

 

 

6速MTの導入は日本のみ特別

 

待望の6速MTモデルが登場前から話題になったシャシーカップだが、ネタばれさせればこれは日本仕様のみの特別装備車。本国では従来からメガーヌR.S.には6速MTの選択権があり、シャシーカップ用のパーツはオプションで販売されている。

 

ただし、これまで日本では歴代シャシーカップを全て6速MTモデルで導入している歴史があるため(ATがなかった、という方が適切か)、今回もそのパッケージングが採用された。6速MTを選ぶようなドライバーであれば、日常よりもサーキットでの快適性に的を絞ったこのシャシーに対しても納得をしてくれるであろう。そうした需要は100名なら見込めるはずだ、と踏んだのだろう。

 

 

初めてサーキットで「4コントロール」を試す!

 

さて、そんなメガーヌR.S.を袖ヶ浦フォレストレースウェイで走らせたわけだが、今回の試乗はシャシーカップの性能を論じる前に、メガーヌR.S.の素性に感じ入ったことをまず話さねばならない。なぜならこのクルマが搭載する「4コントロール」を初めてトラックコースで試すことが可能となったのだから。

 

これは今流に言えばスーパースポーツたちの間でも流行となっている「リア・アクスルステア」だ。一般的には4WSと称される後輪操舵技術で、ルノーとしてはかつて「ラグナGT」に投入した技術をスポーツギアとして再活用した形になる。

 

後輪の操舵はステアリング舵角と操舵スピード、車速から演算される。これによってハイパワーFF車には常につきまとう課題であるアンダーステアを可能な限り解消する、というのが新生メガーヌR.S.最大の目的だ。

 

果たしてその効果は・・・。土砂降りのサーキットで、遺憾なく発揮されたのであった。

 

 

曲がりすぎるメガーヌR.S.

 

回答を急かすならば4コントロールによってメガーヌR.S.は、このクラスではひとつ抜きん出た存在になったと言える。

 

メガーヌR.S.は恐ろしく曲がる。いや、曲がり過ぎる。

 

フロントタイヤがまったく暖まっていない状況でもステアリングを切ればヨーモーメントが発生し、放っておけばそのままオーバーステアにまで発展する。“ドドドドド”っとフロントを滑らせながらも向きだけは“スーッ”と変わる異様な光景がフロントウインドウごしに展開し、手の平や耳からその感触や音が伝わって来る。

 

ドライバーはこのときアクセルを踏み込むことで挙動を安定させ、クルマを前に進めることができる。つまりアンダーステア知らずで、ドンドンとアクセルを踏み込んで行くことが可能となるのである。

 

 

新時代におけるFF車のコントロール性

 

先代メガーヌR.S.でもルノースポールは、前後のロール軸調整やセッティグによってリアタイヤの接地性を変化させ、ターンインでアンダーステアを消そうとしてきた。

 

しかしオーバーステアのセッティングはタイヤが暖まらない状況だとかなりトリッキー。なおかつアクセルを踏み込めばフロントタイヤが滑り、再びアンダーステアに転じることが多かった。これでもFF車としてはかなりニュートラルなステア特性だったが。

 

これが4コントロールではアクセルを踏み込んでも再びイン側にステアリングを切ればリアタイヤがトーアウトになり、そのアンダーステアを相殺してくれるのだ。そのときのコントロール感覚は一種独特だが、リアが一気に滑り出すようなことはなく、ゆっくりと動いてくれるのも素晴らしい。それは新しい時代におけるFF車のコントロールプレジャーと言えた。

 

さらに今回のようにスリッパリーな路面では、ターンインでハンドルを切りながら待ち続ければ、リアがどんどん流れて行く。このときアクセルで流れ量を調整し、これが止まりそうになったらさらにイン側へ切って行けば、ドリフトアングルが維持できてしまうのだ。

 

 

273ps&390Nmと、6速MTの感触は?

 

今回は後輪の逆位相が100km/hまで可能となる「レースモード」が禁じられており、この挙動をキープする前にスタビリティ制御が働いてしまったが、テストドライバーであるロラン・ウルゴン氏の走りでは、その走りが完璧に再現されていた。

 

感心したのはこうしたコントロールの際、1.8リッター直噴ターボのトルクが微細なアクセル操作にブーストを追従させたこと。ドライではややパンチが足りないと感じた279ps&390Nmのパワー&トルクが、こうした領域でのコントローラブルさに一役買っていたのには深い感銘を受けた。また限界領域での操作性なら圧倒的に6速EDCの方が上だと思っていたが、正確性のある6速MTが運転のジャマをするどころか、クルマとの一体感をも高めてくれた。

 

その上でシャシーカップを語れば、この状況においてもサスペンション剛性に突っ張り感や硬さは感じられず、まさにサーキットを走るための足腰となっていた。

 

 

スポーツモードは本気モード!

 

アクセルオフ側を効かせすぎず、踏み込めば“じわり”とトラクションを稼ぐトルセンLSDも必須の装備だろう。

 

ただし、まだ疑問も少なからずある。水たまりのような場所では少しの操舵が後輪操舵を招き挙動を乱してしまう場面があり、ダブルレーンチェンジのような緊急回避では安全を担保しきれないように思うのだ。

 

この質問を開発チーフであるフィリップ・メリメ氏にぶつけると、「通常はスタビリティコントロールがより強く働くノーマルモードで走って欲しい。今回のような路面でもスポーツモードを許したのは、今日来たみなさんがメガーヌR.S.を理解してくれているという判断からですよ」という内容の答えを得た。

 

つまり、それだけメガーヌR.S.のスポーツモードは本気モードだということだ。個人的には「レースモード」から後輪操舵を効かせてもよいと思うくらいメガーヌR.S.は走りがシッカリしていると思ったが、そのバランスも4コントロールありきで構築されたものなのだという。確かにダンピングレートも可変しないメガーヌR.S.であれば、それくらい本格的な目を持ってモード切替に臨んでもよいのかもしれない。

 

 

手に届くスーパースポーツ、それがメガーヌR.S.

 

もはやCセグメントで完成されたFRスポーツが望めなくなった今、メガーヌR.S.は「手に届くスーパースポーツ」の筆頭だと言える(BMW M2クーペは価格的にもひとつ上のクラスに思うのだ)。生真面目に速さを追い求めたホンダ シビック・タイプRとはまた違う、ドライビングプレジャーがそこにはある。

 

だからここはマリーアントワネットばりに「FRがなければメガーヌR.S.に乗ればいいじゃない」と言ってもよいのではないかとボクは思う。

 

 

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)

PHOTO & MOVIE/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

 

 

 

【SPECIFICATIONS】

メガーヌ ルノー・スポール カップ

ボディサイズ:全長4410 全幅1875 全高1435mm
ホイールベース:2670mm
トレッド:前1620 後1600mm
車両重量:1460kg

 

エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1798cc
ボア×ストローク:79.7×90.1mm
圧縮比:8.9
最高出力:205kW(279ps)/6000rpm
最大トルク:390Nm/2400rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:FWD

 

ステアリング形式:電動アシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式:前マクファーソン 後トーションビーム
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ(リム幅):前後245/35R19(8.5J)

 

車両本体価格:450万円(税込)

販売台数:100台

 

 

 

 

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