ブガッティの最新ワンオフモデル「ラ・ヴォワチュール・ノワール」を紐解く

Bugatti La Voiture Noire

ブガッティ ラ ヴォワチュール ノワール

 

 

ジャン・ブガッティ生誕110周年を記念したワンオフ

 

2019年は、ブガッティ社を1909年に設立したエットーレ・ブガッティの息子であり、デザイナーとして、またエンジニアとしても多彩な才能を発揮した、ジャン・ブガッティの生誕110周年に相当する年だ。ランボルギーニからアウディ・スポーツを経てブガッティの社長へと転身したステファン・ヴィンケルマンにとって、この2019年はブガッティの歴史、そしてブランドとしての価値を再考するにはベストなタイミングと考えられたのだろう。ヨーロッパのメジャー・モーターショーの幕開けを飾るジュネーブに、ブガッティ・ブースを訪れた誰もが驚愕するモデルを用意してみせた。昨年夏にモントレーで発表された40台の限定車、ディーヴォの存在など、すでに忘れ去ってしまいそうな勢いだ。

 

今回ジュネーブで発表された新作は、「ラ・ヴォワチュール・ノワール」と「シロン・スポーツ110」の2台。後者は別にレポートがあるので、ここでは前者のみに限って解説を進めることにしよう。

 

 

モチーフとなったのは、伝説の「57Cクーペ・アトランティーク」

 

ラ・ヴォワチュール・ノワール、日本語に訳せば「黒いクルマ」という、いかにもシンプルなネーミングだ。それはジャン・ブガッティが57Cクーペ・アトランティークを常々こう呼んでいたからだという。デザインモチーフとなっているのは、もちろんそのジャン・ブガッティがデザインした、タイプ57SCクーペ・アトランティークで、そのモチーフを現在ブガッティが生産するシロンをベースに現代的に解釈し、いかに採り込んでいくかにエティエンヌ・サロメ率いる、ブガッティのデザインチームは悩んだという。またクーペ・アトランティークのプロトタイプには、軽量化のためにアルミニウム合金やマグネシウム合金が使用され、そのためにボディの各所をリベットで接合する必要もあったのだが、より軽量なカーボンがメインの素材となるシロンがベースのラ・ヴォワチュール・ノワールでは、本来ならばその必要もない。機能を持たない単なる演出を優先するのか否か。ここにもデザインチームの悩みはあっただろう。ちなみにこのボディーはすべてハンドメイドされる。

 

 

1500ps&1600Nmを誇るW16クワトロターボを搭載。

 

ミッドに搭載されるエンジンは、もちろん8リッターW型16気筒+4ターボで、最高出力はシロンと同様の1500ps。最大トルクも1600Nmを達成している。ほかのメカニズムもシロンと共通だが、リアの6本出しエキゾーストが特別な仕様であると同時に、かつての57Cクーペ・アトランティークを知る者には、特別な感情を抱くディテールだろう。

 

 

車両価格は約14億円!

 

ジャン・ブガッティの生誕110周年を記念して、現代に復活した57Cクーペ・アトランティークこと、ラ・ヴォワチュール・ノワール。それはもちろんワンオフモデルで、すでにオーナーは決まっているという。参考までにオーナーが支払った価格は1100万ユーロ(約14億円)。昨年の夏に発表された40台限定のディーヴォが500万ユーロ。今回のジュネーブでは脇役となってしまったシロン・スポーツ110は、20台限定で300万ユーロというが、そのすべてはすでに売却済みとなっている。

 

 

REPORT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)