フェラーリF8トリブート 完全解説。異例の最新V8ミッドシップに迫る

2019/03/14 18:06

Ferrari F8 Tributo

フェラーリ F8 トリブート

 

 

異例とも言える488世代のニューモデル

 

シリーズ途中でビッグマイナーチェンジを行い、ほぼ10年に1度というサイクルでニューモデルをリリースするという手法は、8気筒ミッドシップに関してフェラーリがここ30年ほど続けているモデルチェンジのサイクルだ。

 

348が1989年から1994年までの約5年で、それに続くF355が1994年から1999年までの約5年。続く360モデナは1999年から2005年までの約6年で、F430は2004年から2009年の約5年。458イタリアは2009年に誕生し約5年間を生産した後、現行モデルとなる488GTBに進化している。もちろんその中で、さらに高性能なスペシャルモデルとして、クーペではチャレン ジストラダーレや458スペチアーレ、488ピスタといった特別モデルがリリースされたことも忘れてはならない。

 

このように過去の例を振り返ると、今回フェラーリが発表した新型車「F8トリブート」は、きわめて異例なモデルと考えられる。すでに「488ピスタ」や、それをベースとしたオープンモデルの「488ピスタ スパイダー」が誕生した後で、次世代モデルではなく、488世代のニューモデルが登場したのだ。

 

 

サーキットで培ったノウハウを投入

 

「F8トリブート」というネーミングが与えられたそのニューモデルは、もちろん基本的なボディシルエットは、これまでの488GTBと共通だが、GTレースやワンメイクレースの488チャレンジで培ったノウハウをこのF8トリブートにも活し、さらなる改良を重ねている。例えばラジエーターコアを後傾させ、アンダーボディを使って熱せられたエアを効率的に送り、タイヤハウス内での熱相互作用を最小限に抑えることで、488GTBよりも熱冷却性能は10%も向上させている。

 

ダイナミックエアインテークの位置は、488GTBのサイドからスポイラーの左右に移動した。これによってインタークーラーの大型化が可能になり、エアインテークダクトの改良とともに、エンジンのパフォーマンス向上に貢献している。また、フロントセクションでは488ピスタで採用した新たなエアロダイナミクス・ソリューション、Sダクトのデザインが見直され、このパートのみで488GTBから増大したダウンフォース量の15%を占めるという。

 

ちなみにこのダクトは、フロントバンパーのセンターセクションからエアを導入し、ボンネット上のベントから上方に排気するシステム。その気圧差でダウンフォースを生むメカニズムをもつ。また、よりコンパクト化された新型LEDヘッドランプを採用したことで、ブレーキ冷却用の新たなインテークをバンパー外側のインテークと一体化しているのも特徴だ。

 

 

エアロダイナミクスの大幅なアップデート

 

F8トリブートでは、ほかにリヤスクリーンのベースにあるエアインテークからダウンフォースを発生するという重要な仕事を終えたエアを排出するブロウンスポイラーや、アンダーボディ、ボルテックスジェネレーターなど、さまざまなアイテムが改良されており、結果的に全体の空気抵抗係数は、488GTBから、Sダクト=15%、リアスポイラー=25%、フロントアンダーボディ=15%、ボルテックスジェネレーター=25%、リアディフューザー=20%の向上を果たしているという。

 

ちなみにリヤディフューザーは488GTB比で、ストレートでは車両の空気抵抗を大幅に低減し、最高速へのチャレンジを容易にするよう、14度回転してその機能を完全に無効にするアクティブフラップ機能を備えている。

 

 

これまでのV8モデルへのオマージュ

 

そして、結果的に完成されたF8トリブートのエクステリアデザインは、フェラーリがこれまで生み出したV8モデルへのオマージュ(尊敬、敬意)をデザインとして表現することだった。さらに先進的なエアロダイナミクスを明確に意識したスポーティなデザインによって進められた。

 

もちろん、これまで開発した一連の優秀なエアロダイナミクスと共存させなければならない。デザインチームがまず着目したのは、488ピスタからややサイズが小さくなったものの、それでも強い個性で見る者の目を刺激するSダクトであったという。

 

 

「308」や「F40」のデザインを現代に蘇らせる

 

実際のデザインは、長々と解説するよりも画像を見て判断していただいた方がよいいだろう。パワーユニットはリヤスクリーンを通してその姿を見ることが可能だが、そのスクリーンは、あの「F40」のデザイン要素を現代的に再現したものだ。ルーバーはもちろん、エンジンコンパート内の熱を放出するという確かな機能ももつ。

 

リヤエンドにはさらなる感動がある。フェラーリ伝統の2シーターV8シリーズの原点ともいえる「308シリーズ」が採用していた丸型4灯のテールランプがついにこのF8トリビュートで戻ってきたのだ。さらにオプションでは、新デザインの星形鍛造ホイールもあり、こちらとのマッチングも大いに期待できる。

 

 

ドライバーオリエンテッドにコクピットを一新

 

コクピットのデザインも一新された。そのデザインコンセプトは、当然ながらドライバーの機能性を優先したものだが、助手席側にも8.5インチサイズのタッチスクリーン式ディスプレイをオプションで装備することが可能。

 

視覚的な軽快感を得ることを目的にダッシュの上下は細長いカーボンパネルで分割されており、エアコンのベントもほかのモデルと同様の丸型へと改められた。カスタマーはもちろん、さまざまなオプションを選択することも可能だし、さらにはテーラーメイドプログラムで、好みの仕様に仕上げることもできる。

 

 

「488ピスタ」と共通の720psに出力アップ

 

ミッドに搭載するエンジンは、488ピスタと共通のスペックとなる、720ps/7000rpmの最高出力と、770Nm/3250rpmの最大トルクを発揮する、3902ccの90度V型8気筒ツインターボ。リッターあたりの出力は実に185ps/リットルとなり、またレブリミットは8000rpmに設定されている。

 

ちなみに、最高出力では488GTBと比較してプラス50ps向上している。また重量は同様の比較でマイナス40kgとなる。あのF40でさえ最高出力は478psだったことを思うと、その動力性能はまさに驚異のひと言に尽きる。

 

また、官能的なサウンドとエンジン内部の改良も大きな話題だ。チタン製のコンロッド、クランクシャフト、フライホイールなどの見直しで回転質量を低下、慣性力も17%抑えられるなど、エンジン・レスポンスのみならず、エキゾーストノートに官能的をもたせることにも成功している。また、エキゾーストシステムの開発には488チャレンジで得たノウハウも活用されたということだ。

 

 

「ブーストリザーブコントロール」を搭載。

 

カスタマーは、このF8トリブートをドライブした時、すぐにその直感的なハンドリングや、パフォーマンスを引き出すことの容易さに気づくことだろう。それはフェラーリ独自のさまざまな先進的なデバイスが常に機能しているからで、例えばスポーツ走行時の限界域でレスポンスとパフォーマンスを最適化する、新型「ブーストリザーブコントロール」もそのひとつだ。

 

これはコーナーからの立ち上がりでドライバーがアクセルペダルを踏み込むと、即座に要求したパワーを発揮してくれるシステム。ほかには加速時のグリップを解析し、クラッチが伝達するトルクを路面のグリップレベルに合わせて電子制御で最適化するアダプティブ・パフォーマン・スローンチなど、スポーツ走行の楽しさを常にサポートするデバイスがF8トリブートには採用されている。

 

 

バージョン6.1に進化した「FDE+」

 

488GTBよりもはるかにスポーティな性格が強まったF8トリブート。ビークルダイナミクスの備えはもちろん万全だ。フェラーリはこのモデルに、これまでどおり「FDE+(フェラーリ・ダイナミック・エンハンサー・プラス)」を搭載。パフォーマンスを容易に引き出せるように、新タイプのバージョン6.1へと移行させた。

 

FDE+は、ブレーキ圧を調節するラテラル・ダイナミクス・コントロール・システムが基本となる。488ピスタで初めて搭載されたものだが、バージョン6.1ではRACEモードでも機能するようになった。フェラーリによれば、セッティングがRACEの場合、コーナーの脱出速度は6%速く、また同じ量のオーバーステアでもステアリングの操作量は30%減になっているという。

 

 

次世代モデルでの技術的変化の予感。

 

0→100km/h加速で2.9秒、0→200km/h加速が7.8秒、そして最高速は340km/h。これだけのパフォーマンスをもつモデルをフェラーリはなぜ488世代のラストモデルとしてデビューさせなければならなかったのか。しかも現実的に488ピスタとF8トリブートのどちらを選択するのかは、カスタマーには非常に難しい。

 

フェラーリにとって、それでも完全なニューモデルをこれまでのスケジュールに沿ったタイミングでデビューさせることができなかったのは、次期モデルには相当に大きな技術的な変化があるからと考えるのが妥当ではないだろうか。

 

それはV型8気筒エンジンを搭載するのではなく、あるいはV型6気筒にターボ+ハイブリッドであるのか。ライバルメーカーの動向を見ていると、すでに次世代に向けてさまざまな戦略がスタートしている。フェラーリがF8トリビュートの生産を終了する頃、歴史的なパワーユニットが開発され、時代が大きく動く時と考えてよいのかもしれない。今のフェラーリが最も必要とするもの、それは“時間”なのかもしれない・・・。

 

 

REPORT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

 

 

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