マクラーレン600LTスパイダー初試乗! この上ない刺激に開放感が加わったオープンスポーツ

2019/03/13 20:15

McLaren 600LT Spider

マクラーレン 600LT スパイダー

 

 

オープン化するにも補強なしのカーボンモノコック

 

マクラーレン600LTスパイダーでアリゾナの一般道を走り出す。その期待と興奮で、私は胸の高鳴りを抑えられなかった。

 

ロングテールを意味するLTは、マクラーレンのロードカーでもっともサーキット向きなモデルに与えられる名称。3年ほど前にスーパーシリーズの675LT(クーペ)と675LTスパイダーが相次いでリリースされたが、それよりも価格帯が低いスポーツシリーズに投入される“LT”は600LTが最初。私は昨年、ハンガリーでそのクーペモデルに試乗したが、テストできたのはハンガロリンク・サーキットのみで一般道は未走行。試乗車がクーペではなくスパイダーになるものの、“600LT”で公道を走る期待に心が躍った理由もこれでおわかりいただけただろう。

 

 

「でも、クーペとスパイダーでは同じ600LTでもフィーリングが違うんじゃないの?」 そんな疑問を抱いた皆さんには、是非、知っておいていただきたいことがある。

 

マクラーレンのロードカーがすべてカーボンモノコックを用いていることはご存じのとおり。しかも、その多くはルーフ部分に構造体を持っていないため、コンバーティブル化してもボディ剛性は低下しない。同じ理由でコンバーティブル化に伴うボディ補強も不要で、クーペに対する重量増は50kgほどとごく小さい。マクラーレンのエンジニアによれば重心高の違いもわずか数mm程度とのこと。したがってサスペンションの設定もクーペのままで、可変制御ダンパーのソフトウェアに微調整を施したことが唯一の変更点だという。

 

 

ドライビングを愛する者なら歓迎されるはず

 

もっとも、サーキット走行に最適化されたサスペンションのため、いくらロードカーとはいえ一般道での乗り心地には不安を抱いていたのだが、それは杞憂だった。サスペンションの設定を切り替えるハンドリング・モードでノーマルを選んでいる限り、路面から伝わるゴツゴツ感は許容範囲内。周期的にうねる路面を通過してもボディの上下動が共振するようなこともなく、たとえば日帰りで近くのサーキットやワインディングロードまで移動する程度であればまったく苦にならないと思われた。

 

だからといって“LT”のキャラクターが一般道でまったく感じられないわけではない。信号待ちで止まれば、中身がみっしりと詰まったような迫力あるエグゾーストサウンドを響かせ、アイドリング時のバイブレーションも決して小さくはない。聞けば、600LTではサーキット走行時のハンドリングを優先してエンジンマウントは硬度の高いものに交換されているそうだが、そのおかげで停車している状態でも常にエンジンの鼓動が感じられるのだ。この辺は、快適性を重んじるドライバーには敬遠されるかもしれないが、スポーティなドライビングを心から愛する者からはモチベーションを掻き立てられる要素としてむしろ歓迎されるかもしれない。

 

 

自分の手足のようにコントロールできる!

 

では、600LTスパイダーのハンドリングはどうだったのか?

 

残念ながら今回はワインディングロードを走るチャンスはなかったものの、アリゾナ・モータースポーツ・パークでのサーキット走行に臨んだ印象は、昨年ハンガロリンクで600LT(クーペ)をテストしたときとまったく変わらなかった。

 

すなわち、ステアリング、スロットルペダル、ブレーキペダルに対する反応がすべて軽快かつ鋭敏で、まるで自分の手足のようにクルマをコントロールできるのである。

 

最近、プレミアムブランドが“アジリティ”という表現を多用しているが、もともと“機敏さ”を意味するこの言葉を彼らは“敏感さ”と曲解して用いているような気がしてならない。「動きが軽快」なことと「操作に対する反応が敏感」なことでは、似ているように思えて実はまったく異なる。なぜなら「反応が敏感」なのはちょっとの操作に対して大きく反応することであり、いっぽうの動きが軽快なのはいかにレスポンスよく、そして速いスピードで物事が起きるかを説明しているからだ。

 

 

その点、600LTの動きはまさに軽快そのもの。ステアリングを切れば、ノーズに何の重量物も積んでいないかのような勢いでヨーモーメントが立ち上がり、スロットルやブレーキによる加減速でもレーシングカートのような俊敏さで速度を変える。まるでイナーシャ(慣性力)というものが一切、存在しないかのようだ。

 

もっとも、反応は素早くても優れたロードホールディングとスタビリティ・コントロールのおかげで、サーキット走行でもクルマが不安定な状態に陥ることはない。ただし、スタビリティ・コントロールをダイナミックに切り替えると、ハードブレーキング時やコーナーの立ち上がりでラフな操作をしたときにリアタイヤが“ムズムズっ”とする様子が伝わってきて、それまでいかに自分が電子制御システムに守られていたかに気づくことになる。

 

 

極限でも扱いやすい操縦性

 

そうやって3つ、4つコーナーを過ぎたころだろうか。低速コーナーの脱出でそれまでよりいくぶん強めにスロットルペダルを踏み込んだところ、リアタイヤが大きく流れ始めた。このとき私は瞬間的なカウンターステアをあてて修正を試みたが、ほとんど無意識の動作だったにもかかわらずテールスライドはなんのオツリも生み出さずにピタリと収まって、そのまま次のコーナーに向かって立ち上がっていくことができた。

 

これこそ600LTの慣性モーメントが小さいことを示すなによりの証拠だろう。モーメントが小さいからカウンターステアにも素早く反応し、位相遅れがないのでオツリも生まない。しかもタイヤの接地性が高いのでテールがスライドする様子を掴みやすい。すべて物理の法則にのっとった動きだが、物理的な性能の優れた600LTだからこそ、ドライバーにとって扱い易い操縦性を手に入れたともいえるだろう。

 

 

サーキットではレーシングカーと見紛うばかりのパフォーマンスを発揮するいっぽうで、一般道も走れる快適性を備えたコンバーチブルカー。それが「マクラーレン600LTスパイダー」なのである。

 

 

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)

 

 

 

【SPECIFICATIONS】

マクラーレン 600LT スパイダー

ボディサイズ:全長4604×全幅2095(ミラー含む)×全高1196mm

ホイールベース:2670mm

乾燥重量:1309㎏

 

エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ

総排気量:3799cc

最高出力:441kW(600ps)/7500rpm

最大トルク:620Nm/5500〜6500rpm

トランスミッション:7速DCT

駆動方式:RWD

 

サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

ローター径:前390 後380㎜

タイヤサイズ(リム幅):前225/35R19(8J) 後285/35R20(11J)

 

最高速度:324km/h

0→100km/h加速:2.9秒

0→400m/h加速:10.5秒

 

車両本体価格:3226万8000円(税込)

 

 

【関連リンク】

・マクラーレン オートモーティブ

https://jp.cars.mclaren.com