絶好調のポルシェ!生産・物流担当取締役に訊く「電動モデル」生産化の実情

8年連続で右肩上がりのポルシェ

 

ポルシェAGは3月15日(現地時間)、ドイツ シュツットガルト、ツッフェンハウゼンにあるポルシェミュージアムにて年次記者会見を行った。

 

2018会計年度の販売台数は25万6255台、売上高は258億ユーロ、営業利益は43億ユーロで、販売台数、売上高ともに8年連続で右肩上がりの成長を遂げている。営業利益率は16.6%と、自動車製造業としては驚異的な数字だ。

 

実はほぼ同じタイミングでフォルクスワーゲングループ各社が年次会見を行っているのだが、フォルクスワーゲン、そしてアウディでは工場や管理部門などの人員削減による大幅なコスト削減策を発表した。その要因はずばり電動化だ。

 

 

2025年までに半数を電動化に

 

一方でポルシェの動向は対照的だ。オリバー・ブルーメ会長(写真・左/右:ルッツ・メシュケ副会長)が「2023年までに新製品に約150億ユーロを投資し、将来的にポルシェは、純粋なエレクトリックドライブシステムでも知られるようになる」と話すように、いま積極的に投資を進めているのが電動化だ。2025年までに販売台数の半分をEVまたはプラグインハイブリッドモデルにするという。そしてそのさきの2030年には9割以上が電動モデルとなるシミュレーションを描いている。

 

ポルシェの電動化予想図。2030年には9割を超えると予想している。

 

 

タイカン クロスツーリスモは2020年に発売!

 

ポルシェでは2012年以来、従業員数は3万2325人へと倍増しており、初のBEV(バッテリー電気自動車)「タイカン」の生産のために新たに1500人を雇用したという。またこの記者会見で「ミッションE クロスツーリスモ」の市販車名が「タイカン クロスツーリスモ」となること、そして来年、2020年の正式発売がアナウンスされた。

 

 

ちなみに「タイカン」はツッフェンハウゼンにあるポルシェの本社工場で生産される。現在、本社工場は911と718(ボクスター&ケイマン)という2ドアスポーツのみを生産しており、4ドアモデル(マカン、カイエン、パナメーラ)は、本社から北東に約500km離れたライプツィヒ工場で造られている。

 

したがって「タイカン」は、本社工場で製造される初の4ドアモデルになるという。都市部にあって狭い本社工場の敷地内に、既存のスポーツモデルのラインの合間を縫うように「タイカン」のラインは敷かれている。そもそも4ドアモデルでもあり、敷地も広く、生産設備の整ったライプツィヒ工場でなぜつくらないのかと尋ねると、「タイカンはポルシェの歴史においてとても重要なスポーツカーであり、歴代の911と同じこの地でつくりたかった」という答えが返ってきた。現在はほぼラインが完成し、プリプロダクションモデルの生産が始まっているという。

 

Member of the Executive Board, Production and Logistics
Albrecht Reimold

生産・物流担当取締役

アルブレヒト・ライモルド氏

1961年生まれ、ドイツ出身。アウディAGで生産の責任者を務め、A8やA2といったアルミボディの量産を手がけた。後にランボルギーニ・ガヤルドやR8の生産を担当。2016年にはフォルクスワーゲンの取締役となり、その後現職へ。

 

 

アルブレヒト・ライモルド氏に直撃!

 

オリバー・ブルーメ会長率いるポルシェAGの取締役7人のうちのひとり、生産と物流担当役員のアルブレヒト・ライモルド氏に、現在の本社工場の状況などについて話を聞いてみた。

 

Q:ライモルドさんは、これまでアウディやフォルクスワーゲンなどで、さまざまな車種を担当をされてきたようですが、現在、ポルシェではどのような役割をなさっているのでしょうか。

 

アルブレヒト・ライモルド氏(以下ライモルド):ポルシェの生産ネットワークのすべてを担当しています。このツッフェンハウゼンとライプツィヒのみならず、ブラチスラヴァやオスナブリュックも含みますし、その他のフォルクスワーゲングループの工場とも連携しています。

 

※ブラチスラヴァはスロバキアにあるフォルクスワーゲンの工場。トゥアレグをはじめ、アウディQ7、そして同じプラットフォームを使うポルシェ・カイエンの組み立てを行っている。オスナブリュックはドイツ北西部に位置するフォルクスワーゲンの工場で、2016年までボクスター、ケイマンがここで生産されていた。

 

 

Q:タイカンはツッフェンハウゼンで生産するようですが、電気自動車を生産するにあたって一番大変なことはなんでしょうか?

 

ライモルド:新しいチャレンジではありますが、これまでとまったく違う、何か魔法のようなものを取り扱うわけではありません。サプライヤーからコンポーネントを取り入れて、それを組み立てるということ自体はかわりません。ただし、バッテリーなど高電圧の部品を取り扱うため、それに関する知識をもった従業員の数はまだ限られています。従業員の教育が重要な鍵となるため、いま準備を進めています。

 

Q:さきほど、タイカンのために1500人も雇用したという話がありました。それは、ツッフェンハウゼンだけの話でしょうか?

 

ライモルド:そうです。タイカンはまったく新しいセグメントの商品になります。従来であれば既存の組織に統合するかたちでチーム編成をするのですが、今回は生産などの技術者だけでなく、サポートや会計、販売、アフターサービスなどすべてあらたな組織を立ち上げることになります。

 

 

Q:「タイカン クロスツーリスモ」の量産開始が2020年と発表されましたが、それもここで造るのでしょうか?

 

ライモルド:はい、タイカンと同じラインで造ります。

 

Q:「タイカン クロスツーリスモ」は、てっきりアウディと共同開発する「PPE」(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)を使うのかと思ってましたが、それは違うのですね。

 

ライモルド:「タイカン クロスツーリスモ」はタイカンと同じプラットフォームを使うため同じラインで生産します。911と718の売れ行きが好調なこともあって、タイカン専用に別のラインを作りました。「PPE」は次期型のマカンで採用します。ライプツィヒの既存のラインに統合するものです。

 

Q:ということはライプツィヒではBEVと内燃エンジンモデルを混流生産するということですか?

 

ライモルド:そのとおりです。ご存知のように“フィッシュボーン”というかたちで電気駆動系を流して組み付けることが可能です。

 

※車両の組み立て工程において生産効率を高めるため、背骨となる最終組立ラインにサブアッセンブルされた部品を小骨のようなサブラインから取りこむモジュール化方式を魚の骨の形状に見立てて“フィッシュボーン”ラインという。

 

ライプツィヒ工場

 

Q:生産キャパシティは年間2万台という噂を耳にしたことがありますが、しかし、すでに欧州では先行予約で2万人がデポジットを払っていると聞きました。タイカンは年間何台製造する予定ですか?

 

ライモルド:ブルーメも話していましたが、いま最適化に向けて調整を行っています。ですから、具体的な数字は今のところは申し上げられません。まだすべてが完成したわけではありませんが、タイカンのラインは最新のフレキシシステムを採用していますし、プリプロダクションモデルがすでに流れています。

 

Q:そのフレキシシステムとは、どういうものなんですか?

 

ライモルド:これまではコンベアのような台車を使ってボディを移動させていましたが、AGVという無人搬送ロボットを使って、ラインがなくてもルートを自走します。柔軟性が高く、コストも抑えられ、短時間での変更も可能です。

 

 

Q:ブルーメ会長は、電気自動車やプラグインハイブリッド車は内燃エンジンモデルに比べて現状1台あたりおよそ1万ユーロのコストがかさんでおり、生産性の向上やコスト削減を課題としてあげていましたが、そのあたりの目標にはどのように取り組んでいくのでしょうか。

 

ライモルド:ポルシェは小さなメーカーですから、すべてを自分たちでまかなうことはできません。ですからサプライヤーにも強力なサポートをして、新たな協調ビジネスモデルをつくっていく必要があります。例えばバッテリーではドレクセルマイヤー社、ボディはティッセン社などと協力していますが、その多くがアッシーの状態で特殊な物流手段によってツッフェンハウゼンに運びこまれる体制になっています。

 

 

Q:ライモルドさんは、アウディ、ランボルギーニ、フォルクスワーゲン、ポルシェと4つのブランドを担当されてきたそうですが、その中でポルシェはどういったブランドだと感じますか?

 

ライモルド:アウディで初めてのアルミボディや初の3リッターエンジンのクルマ、そしてランボルギーニ・ガヤルドの生産、スロバキア、インド、中国など海外も担当してきましたし、いずれも素晴らしい経験でした。しかし、やはりポルシェに在籍していることは特別な体験です。ドクターポルシェ(ヴォルフガング・ポルシェ氏)とも顔見知りですが、70年以上続くファミリー企業には独特の雰囲気があります。

 

Q:最後に、ポルシェの役員は全員、市販前のモデルをテストドライブすると聞いたことがあります。タイカンにはもう試乗されたのでしょうか?

 

ライモルド:テストドライブは、もちろんしました。そして、その性能にとても感動しました。紛れもないポルシェのスポーツカーです。日本のお客様は1日あたり100〜200kmも走行できればほとんどの日常生活をカバーできると聞いていますし、使いやすいクルマだと思います。ぜひ2020年を楽しみにしていてください。

 

 

REPORT/藤野太一(Taichi FUJINO)