ランドローバー ディスカバリー再考! スペック抜きに語る本質的SUV論

LAND ROVER DISCOVERY

ランドローバー ディスカバリー

 

 

ディスカバリーを通じて気づくこと

 

最近では、あまり聞かなくなったが、その昔は“SUV界のロールスロイス”とまで言わしめたランドローバー。その理由は、初代レンジローバーがあまりにも快適性が高く、日常で使うにも何の苦もなければ、悪路での走破性まで完璧にこなしてしまったのだから、そう言われるのも当然だと当時は納得したものだ。

 

もちろん、それは今でも同じ。というか、あまり聞かなくなった理由は、慣れや流行りすたりもあるのかもしれないが、最近の主流がもっぱら“スポーツSUV”だからだろう。ポルシェ カイエンのデビューを皮切りに、SUVの価値はいつしか“スポーツ”が前提となってしまった。しかし、これが良いかは別の話。やたらとスポーツSUVと謳うモデルに乗る機会は少なくないが、本音で言ってしまうと、車種によっては、いい加減にしてくれ!と怒鳴りたくなることがあるのも事実だ。

 

 

そう、あらためて気づかせてくれたのが、何を隠そうここに映る「ディスカバリー」の試乗がきっかけ。実はこの時、ジャガー・ランドローバー・ジャパンの雪上試乗会なるイベントに参加して実感したのだが、本当のところ本命は別にあった。ディスカバリーはあくまでも“おまけ”的に考えていただけだったものの、そのステアリングを握って100mもしないうちに完全にやられてしまったのだ。

 

しっとり感こそディスカバリーの真髄

 

それは本当に走り始めてすぐに分かる。ディスカバリーがそう思わせる要因を分かりやすく表現するなら、まさに“しっとり感”。乗り味そのものが極めて優しく、そして滑らかだ。特にアクセルのツキなど、急激に立ち上がることなど微塵もなく、あくまでも“しっとり”に終始するのは、実にランドローバーらしい味付けである。この“らしい”も肝で、この時、他に乗ったレンジローバー ヴォークやヴェラールと比較しても、ディスカバリーのしっとり感はズバ抜けているのは間違いない。

 

 

これが冒頭で触れた、スポーツSUVへの疑問(=不満?)につながる理由で、多くのモデルは、単純にアクセルレスポンスを上げて「どう、楽しいでしょ?」と訴えかけてくる。これが今の流行り。メーカーもそのほうが売れるからというマーケティングによる結果だから、例えエンジニアが反対しても売れる方を優先する時代だから、仕方がなくそうするしかなくなっている。

 

だが、本物のスポーツSUVが如何なるものか知りたいのならば、ポルシェのカイエンやマカンに乗れば明白だ。姿形こそSUVであるだけで、本質はロードホールディング性に重きをおいているとあって、アウトバーンを全開で走行できる性能を実現している。というよりもサーキットすらこなしてしまうのだから、これこそスポーツSUVだろう。要はスポーツSUVと謳うなら、目的をちゃんと果たしてほしい、ということを強く思っている次第だ。

 

 

「スポーツ」と「SUV」は別であるべき

 

その点、ディスカバリーはぶれていない。ただ、ある意味では、ディスカバリーもスポーツSUV的なところはある。即ち、ディスカバリーの場合、「スポーツ」と「SUV」を1台の中で切り分けている点だ。

 

日常では、しっとりとした走行性で魅了する一方、悪路などに行けば、しっかりと走破する実力を見せるのが強く印象に残る。今回、雪上試乗会といいつつも、暖冬の影響で雪が少なかったが、特設雪上コースが設けられ、そこで軽く試したところ、ディスカバリーの実力をほんのわずかだが垣間見ることができた。もちろん、申し分ない走破性である。いや、ランドローバーの名誉のために言わせてもらうと、これくらい序の口にも値しない程度のコースであったが、それでも悪路で十分に、そして余裕で信頼できることは確認できた。

 

 

フルオートで走破する底力は、さすがランドローバー!

 

しかも昔とは違い、今はフルオートメーションの時代。ランドローバー自慢のテレインレスポンスをオートモードにしたままで一般道から高速道、さらに悪路までこなしてしまうから実に頼もしく、楽。エンジン、トランスミッション、センターデフにシャシー関連などすべてに渡り統合制御する。中でも傾斜のついたカーブでテストした際、ズリズリと落ちそうになりながらも粘るところを体験すると、尚のこと感動してしまう。

 

 

そしてもうひとつの自慢、というか、もはやランドローバーのお家芸、いや元祖ともいえるヒル・ディセント・コントロールにおいては、これもまた任せっきりにして問題なし。傾斜のきつい急な下り坂で最初だけアクセルを踏んでスタートすれば、自動的に4輪個別にブレーキをかけてアシストするから基本ほとんど何もせずにクリア。またその逆に、上り坂では、ヒルローンチアシストが後退を防ぐなど悪路であっても気の利く知的な一面をみせるとあって、頼もしさが止まらない。

 

 

それでいて高速道などでは、巨漢であるにもかかわらず、ほとんど自重を感じさせずに“しっとり”と長距離をもこなすから素晴らしい。しかも、室内空間も広ければ、大人7名が乗車できるうえ、ラゲッジスペースも最大2406リッターまで拡大できるから広い用途に使えるし、何よりもレザーの質感などインテリアの作り込みも見事。3列目シートのみならず2列目シートも荷室に設けられたスイッチひとつで可倒できるなど、配慮まで行き届いている。

 

 

グレードなど関係なしに、本質的な1台

 

それにしても、このしっとり感、昔のディスカバリーとその味付けがまったく変わっていない気がする。無論、これは良い意味で、だ。実は、今から十数年前、初代ディスカバリーを1ヵ月近く足に使っていた時期があった。その時の印象も今回とまったく同じ。さすがに加速性能などは違うものの、本質的なところを守り抜いているのは、元のコンセプトがしっかりしている証しだろう。

 

 

エンジンパワーや種類、グレードなど無関係に、単純に「おっ! わかっているなぁ」と思わせるクルマは今どきそうそうない。流行りにも乗らないこの自流でいく姿勢は、ブランド性や神話性を意識しているからに違いない。今回、他にテストした王道のレンジローバーや、スタイリシュで魅力的なヴェラールは、ちょっと今風に感じられる点があったから、開発陣も含めてディスカバリーだけは大切に扱っている気がしたのは紛れもない事実である。個人的に、いまSUVを買うなら間違いなくディスカバリーを選ぶ。それほど、秀逸な存在だ。

 

 

 

 

見事な制御で魅了する王者「レンジローバー」

 

王者「レンジローバー」のベーシックモデル「ヴォーク」にも試乗。悪路とはいかないまでも、雪上で制御力を試したところ、やはりお見事な出来! けっして車重は軽くないものの、テールが流れてもすぐに制御して姿勢を正すその反応の早さは自重を感じさせないほどで、シャシー制御はラインナップ中、最高峰の部類に入ると言える。もちろん、一般道や高速道では快適そのもので、SUV界のロールスロイスといわしめた血統を受け継いでいるのも実感できる。とはいえ、ディスカバリーに比べると、昔ほどのしっとり感をあまり感じられないのは、売れ筋ゆえの宿命だろうか。派手さはないものの、英国車らしいアンダーステイトメントの流儀に従って、立派なサイズながらも、さり気なく圧倒するこの存在感は、相変わらず魅力的である。

 

 

今どき流でも本物の「ヴェラール」

 

実は今回の試乗会でもっとも試してみたかったのがこの「ヴェラール」。スタイリッシュなSUVで、都会的な香りがして以前から惹かれていたのだが、こうして他のラインナップと比較して乗ってしまうと、“今どき感”が強いモデルだと痛感する。ただ、昨今流行りのスポーツSUVのようなテイストではなく、軽快感を強く演出している印象で、扱いやすくもどこか常に若々しさを感じる仕上がりだ。スロットルの立ち上がりは同社にしては早めに開くだけに、ゴーストップの多い都市部では有り難く感じることもあるだろう。

 

 

乗り心地も良いし、高速道での移動も楽。ディスカバリーよりも若干リーズナブルなぶん、手に届きやすい存在だが、ラゲッジスペースにたくさんの荷物を積む人や、4名乗車する機会が多いカスタマーにとっては、やや窮屈に感じるかもしれない。もっとも、ディスカバリーと比較しての話だが、それでもこのスタイルは捨てがたいものがあるのも確かだ。単純にカッコいいと思わせる。

 

 

REPPRT/野口 優(Masaru NOGUCHI)

PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

 

 

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