ル・マンでの屈辱とディーノ誕生まで(1966-1967)【フェラーリ名鑑】

2019/05/04 11:55

スポーツカーレースにも積極的に参戦

 

現在ではワークスによる、すなわちスクーデリア・フェラーリでのモータースポーツ活動をF1GPに集中させているフェラーリだが、1960年代はF1GPに加えてスポーツカーレースにも彼らは積極的に参戦していた。結果的にフェラーリは、1960年から1965年までの6年間を連続でシリーズ制覇するという偉業をここで成し得るのだが、1965年に登場したフォードという新たなライバルは、フェラーリにとっては相当な脅威であった。フォードが望んでいたのは年間チャンピオンなどではなく、シリーズの象徴、ル・マン24時間の勝利のみにあったからだ。

 

412 P(1967)

 

フェラーリは、その時すでにサーキットに投じられていた「330 P3」、「330 P3/4」、「330 P4」、「412P」といったマシンでフォード勢に立ち向かわなければならなかった。P3に搭載されたV型12気筒エンジンは、3967ccの排気量から410psの最高出力を発揮したとはいえ、フォードGT40は、8台のマークⅡ(7リッター)と、5台のマークⅠ(5リッター)という布陣。いわゆる物量作戦で優勝を狙ってくることが分かっていたからフェラーリにとっては非常に厳しいレースになることが予想された。

 

330 P4(1967)

 

見事、1-2-3フィニッシュを決める!

 

結局この年のル・マン24時間レースに勝利することができなかったフェラーリは、翌1967年のデイトナ24時間では、さらなる進化型の「330 P4」と「412P」で1-2-3フィニッシュを達成。ル・マンでの屈辱をデイトナで見事に返してみせたのだ。

 

もちろんフェラーリ、そしてディーノからは、ほかにもスポーツカーレースに参戦するためのマシンがこの時代には多く生産されている。F1GPだけではなく、フェラーリがほかのカテゴリーにも戻ってきたことに歓ぶファンは、独特で妖艶な美しさをもつ、この時代のプロトタイプ・レーシングカーに惹かれていたのではないだろうか。

 

330 GTC(1966)

 

販売台数の拡大と生産コストの見直し

 

フェラーリの人気は、積極的なレースへの参戦も手伝ってスポーツカーのファンには圧倒的なものがあったが、実際にそれを購入するには大きな壁があった。それはもちろん高価な価格で、1960年代中盤に生産されていた275シリーズ(1966年にはV型12気筒エンジンがDOHC4バルブ化され、275GTB/4となる)や、330GT 2+2、330GTC、365カリフォルニアなどのモデルは、いずれも高価なプライズタグが掲げられたものばかりだった。

 

Dino 196S

 

だが、この頃のフェラーリにとって避けて通ることができなかったのは、販売台数を拡大し生産コストを抑えるという、自動車メーカーとしては当然ともいえる課題。そこでエンツォが着目したのは、すでにプロトタイプとして完成していた「ディーノ196S」の存在で、それをベースに小排気量のミッドシップ車を生産することを実行に移してみせた。

 

Dino 206 GT(1967)

 

ピッコロ・フェラーリ「ディーノ」誕生

 

1967年に誕生した「ディーノ206GT」がまず見る者を驚かせたのは、その妖艶なエクステリアデザインだった。デザイナーはピニンファリーナのレオナルド・フィオラバンティが率いるチーム。ミッドに搭載されるエンジンは、エンツォの子息であるアルフレード・ディーノ・フェラーリが初期の開発に携わり、すでにF1やF2に搭載の実績があった、1986ccのV型6気筒DOHCだった。これに3基のキャブレターを組み合わせ、180psの最高出力を発揮。最高速度は235km/hを達成した。

 

Dino 246 GT(1969)

 

ちなみにこのディーノ206GTは、1969年にマイナーチェンジを受け、「246GT」へと進化を遂げる。エクステリアデザインに大きな変化はないが、タルガトップによるオープン仕様の「246GTS」を途中で追加したのは大きな話題となった。246GTSはアメリカ市場を中心に人気を集め、ディーノのセールスを好調に推移させることに大きく貢献。2419ccに拡大されたV型6気筒エンジンも195psに強化され、最高速度も245km/hにまでアップした。

 

参考までにディーノ206GTの生産台数はわずか150台だったものの、246GTでは2487台、246GTSは1274台と、この時点でフェラーリ創業以来、最大の販売台数を記録している。

 

 

【SPECIFICATION】

フェラーリ 330 P4

年式:1967年

エンジン:60度V型12気筒DOHC(3バルブ)

排気量:3967cc

最高出力:331kW(450hp)/8000rpm

乾燥重量:792kg

最高速度:320km/h

 

フェラーリ 412 P

年式:1967年

エンジン:60度V型12気筒SOHC

排気量:3967cc

最高出力:309kW(420hp)/8000rpm

乾燥重量:835kg

最高速度:310km/h

 

フェラーリ 330 GTC

年式:1966年

エンジン:60度V型12気筒SOHC

排気量:3967cc

最高出力:221kW(300hp)/7000rpm

乾燥重量:1300kg

最高速度:242km/h

 

ディーノ 196 S

年式:1958年

エンジン:65度V型6気筒DOHC(2バルブ)

排気量:1983cc

最高出力:143kW(195hp)/7200rpm

乾燥重量:680kg

最高速度:250km/h

 

ディーノ 206 GT

年式:1967年

エンジン:65度V型6気筒DOHC(2バルブ)

排気量:1986cc

最高出力:132kW(180hp)/8000rpm

乾燥重量:900kg

最高速度:235km/h

 

ディーノ 246 GT

年式:1969年

エンジン:65度V型6気筒DOHC(2バルブ)

排気量:2419cc

最高出力:143kW(195hp)/7600rpm

乾燥重量:1080kg

最高速度:245km/h

 

 

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)