栄光のポルシェ917が50周年を記念して集結! ポルシェ・ミュージアムにて歴代917を追う

公開日 : 2019/05/28 18:55 最終更新日 : 2019/07/21 18:56


50 Years of the Porsche 917 – Colours of Speed

ポルシェ・ミュージアム ポルシェ917 50周年記念展〜カラーズ・オブ・スピード

 

 

1970年のル・マン24時間レースで悲願の総合優勝、翌1971年のル・マンでは5335.313kmという最長走破記録も樹立し2連覇を飾るなど、耐久王ポルシェのイメージを決定づけた記念碑的マシン「ポルシェ917」。その1号車が1969年3月のジュネーブ・ショーでデビューしてから50周年になるのを記念して、ポルシェ・ミュージアムにおいて5月14日から記念展『“50 Years of Porsche 917 – Colours of Speed”』がスタートした。

 

レーシング・ポルシェの歴史における偉大なトピックである917に関しては、常時5〜6台がミュージアムに常設展示されているが、今回は展示を通じて917を軸とした、いくつかのテーマを見いだすことができた。まず1つ目が、昨年レストアが完成した第1号車である917-001をはじめ各モデルを並べた917自体の歴史。2つ目が917LH、917/20“ピンク・ピッグ”などを通じた空力の進化の歴史で、貴重なクレイモデルのほか、模型を使って空気の流れを実演する展示も行われていた。そして3つ目がCan-Amマシン917/10からスタートし、930ターボで結実したポルシェ・ターボ・エンジンの歴史である。

 

それらを見ていくと、ただレースに勝つため・・・ではなく、それまでのポルシェにはなかった大排気量モンスターマシンを通じて、様々な技術、アイデアが試され、その成果が確実に後世に反映されていった過程がよくわかるようになっている。無論、実車以外にもノルベルト・ジンガーが着ていたチームジャケット、空冷12気筒ユニットのカットモデル、1971年のル・マンで履いていたファイアストン・タイヤなど、なかなか見ることのできない貴重な展示物に溢れているこの企画展。展示車両14台(うち917は10台)、トータル馬力7490ps(!)という前代未聞の917特別展は、ポルシェ・ファンならずとも一見の価値がある。

 

1969 Porsche 917-001

 

初期モデルらしいディテールが見どころ

 

4月のグッドウッド・メンバーズ・ミーティングで走行する姿を初披露した1969年型の「917-001」。1970年のル・マン優勝車の姿で長年ミュージアムに展示されてきた個体でもある。ロングテールのボディは、可変式のリヤスポイラーが付くほか、ショートテール・ボディに改変できる分割ライン、サイド出しのマフラーなど、初期モデルにしか見られないディテールが散見される。

 

1970 Porsche 917K

 

ポルシェに初のル・マン総合優勝をもたらした名車

 

1970年のル・マン24時間レースにハンス・ヘルマン/リチャード・アトウッドのドライブで出場し、ポルシェに初の総合優勝をもたらしたザルツブルク・チームの「917K」。これは当時優勝したシャシーナンバー917-023そのもので、現在はイギリスのコレクターが所有しているという。その昔、日本のマツダ・コレクションに保存されていたことでも知られている。

 

Race Equipment

 

70年代のドライバーが纏った歴史的アイテムも展示

 

1970年のル・マン優勝時にハンス・ヘルマンが装着していたヘルメットとゴーグル。このほかに1971年の優勝時にノルベルト・ジンガーが着用していたマルティニ・カラーのチームジャケット、実際に装着されていたファイアストン・スーパースポーツ・インディなど、マニア垂涎のメラビリアも多く展示されている。

 

1971 Porsche 917PA/16 Spyder

 

V型16気筒、800psのモンスター

 

北米で開催されていたCan-Amシリーズに向け、1971年に開発された「917PA/16スパイダー(917-027)」。そのミッドにマウントされているのは、なんと917の12気筒に4気筒を追加した6543cc180度V型16気筒エンジン。その最高出力は800ps(!)でテストも好調だったというが、より軽量コンパクトでパワーのあるターボエンジンの開発が優先されることとなり、実戦に投入されることはなかった。

 

1970 Porsche 917 LH

 

最高速387km/hを記録するロングテール

 

現在と違いシケインのなかったユノ・ディエールでの直線スピードを稼ぐためにシャルル・ドゥーチェ率いるSERAの協力を得て開発された917のロングテール・バージョン「917 LH」。1970年のル・マンで総合2位に入ったこともあり、1971年には本命マシンとして期待されたが、JWチーム、マルティニ・チームともにリタイアに終わった。展示車はジェラール・ラルース/ヴィック・エルフォード組の917-042。

 

1971 Porsche 917/20-001

 

愛称の“ピンク・ピッグ”でも知られる917/20

 

同じSERAとの共同開発ながら、ナローボディ&ロングテールの917LHとは違い、ワイドボディ&ショートテールで空気抵抗の削減を狙ったのが1971年の「917/20(917/20-001)」である。残念ながら目論見は外れ空気抵抗は増えてしまったが、テストデイでは最速ラップを記録。決勝では5位走行中にアクシデントでリタイアとなってしまった。そのグラマラスなボディから、ボディ全体に豚の部位が描かれ“ピンク・ピッグ”というあだ名がつけられた。

 

Porsche 917/20 Clay model

 

細部が実際のモデルと異なるのが興味深いクレイモデル

 

今回初めて公開された917/20のクレイモデル。フロントスポイラーやリヤフェンダーなど、各部のラインが実際に制作された917/20と異なっていて興味深い。

 

Porsche 917 Design model

 

空力の試行錯誤が窺える実現しなかった917/20

 

今回お披露目されたもうひとつの目玉。実は917/20を開発する際に考案された、もうひとつのデザイン案で実際には製作されずに終わった。シルバーのカラーは後年になって塗り替えられたもの。当時のポルシェ技術陣が様々な空力アプローチを試していたことを示す、貴重な資料である。

 

1972 Porsche 917/10 – 005

 

72年のCan-Amで9戦中6勝を挙げたツインターボ

 

Can-Amを席巻する大排気量アメリカンV8への対抗策としてターボ化を選択したポルシェが1972年に投入したのが「917/10」。4999ccの12気筒ツインターボは1000psを発揮し、最高速度360km/hを記録。ジョージ・フォルマーらにより9戦中6勝を挙げる活躍を果たした。展示車はフォルマーのドライブした917/10 – 005だが、カウルが全て外されアルミ製のチューブラーフレーム、ツインターボ・エンジンなど細部を間近に観察することができる。

 

1974 Porsche 911 Carrera RSR Turbo 2.14

 

500psを発生するフラット6でル・マン総合2位に輝く

 

強すぎたことが仇となり、1973年をもってCan-Amにおける917の活動は終了。しかし、そこで培われたターボ技術は、GTカテゴリーの911RSRに搭載され、世界マニュファクチャラー選手権で活用されることになった。それが1974年のル・マン24時間でデビューした「911カレラ RSR ターボ 2.14」。ターボ係数を考慮し2142ccとされた空冷フラット6にKKK製シングルターボを搭載し500psを発揮。格上のグループ6マシンに伍して総合2位でフィニッシュした。

 

1974 Porsche 911 Turbo NR.1

 

ピエヒの母に贈られた911ターボのプロタイプ

 

917/10、917/30、911RSRターボ2.14などレースフィールドでターボ技術を磨いたポルシェは、KKK製シングルターボを搭載したロードカー「911ターボ」を1975年に発表、1976年から市販を開始する。これは1974年に作られた最初のプロトタイプで、ピエヒの母、ルイーザ・ピエヒに贈られたもの。ナローなフェンダーや小ぶりなリヤスポイラーなど細部が生産型と異なる。

 

Porsche 917/10 V12 Twin Turbo

 

917のフラット12は水平対向ではなく180度V型

 

917/10に搭載された4999cc空冷180度V12ツインターボ・ユニットのカットモデル。「917の12気筒は水平対向では?」という方も多いと思うが、908の8気筒までは気筒毎にクランクピンがあるボクサー・タイプだったが、12気筒では強度などの問題を考慮し、向かい合うピストンが1つのクランクピンを共有する180度V型方式(フェラーリのフラット12も同様)に変更されている。

 

2013 Porsche 917 Living Legend

 

917の栄光にインスパイアされたスタディモデル

 

今回の展示で初公開されたもののひとつが、この「917Living Legend」。その名の通り1970年の917Kザルツブルク・チームカーをモチーフとしたデザインスタディで、2013年にごく少人数のチームによってわずか6ヶ月で仕上げられたものだという。結果的に日の目をみることなくお蔵入りとなってしまったが、ホイールを見てわかるように918スパイダー・ベースを想定していたようだ。

 

 

REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)

PHOTO/Porsche Japan 藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)

 

 

【イベント詳細】

ポルシェ・ミュージアム ポルシェ917 50周年〜カラーズ・オブ・スピード

開催期間:5月14日〜9月15日

所在地:Porsche Museum Porscheplatz 1D – 70435 Stuttgart – Zuffenhausen, Germany

開館時間:火曜日〜日曜日 9:00〜18:00(入館受付は17:00まで)/月曜休館

 

 

【関連リンク】

・ポルシェ・ミュージアム

https://www.porsche.com/japan/jp/aboutporsche/porschemuseum/