BMW X3 M & X4 M 初試乗! 兄弟車とも思えないほど似て非なるキャラクター

2019/06/17 07:01

BMW X3 M / X4 M COMPETITION

 

 

勢いに乗る最新「M」モデル

 

BMWのミドルレンジSAV及びSACであるX3とX4に、待望の「M」シリーズが登場。これを北米はニューヨーク州の近郊にかけての一般路と、会員制サーキット「モンティセロ モータークラブ」で試すことができた。

 

なぜ試乗が本国ドイツではなくアメリカなのかと言えば、それはXシリーズの生産拠点がスパータンバーグにあるからだろう。またM社自身もこのモデルの北米における売り上げが全体の約30%を占めると予想しているからである。

 

そんなM社はいま、ノリノリである。なぜなら同社は、X系Mパフォーマンスモデルの販売目標を「2020年までに10万台」と掲げていた。しかしこの目標は早くも2018年の段階で達成され、今年に入っても既に5月の時点で昨年度実績を21%も向上。実に4万8000台もの販売を達成したからである。

 

要するにXシリーズは、M社にとっても本社と同じくらい大切なモデルということである。

 

さて今回モデル的には「M」とその上級仕様である「M COMPETITION」が発表されたが、試乗したのは後者のコンペティションであった。

 

 

510hp&600Nmを誇るMコンペティション

 

メカニカル的な最大の変更点はまず、あの名機「S55」型ユニットが「S58」型へと改められたことだろう。排気量は2993cc。直列6気筒直噴ツインターボという形式に変わりはない。しかし最高出力は、Mが480hp/600Nm、M COMPETITIONが510hp/600Nmにまでその出力を向上している。MとM COMPETITIONの間に機械的な変更点はなく、その出力差はECUによる燃調、ブースト設定の違いによって実現されているのだという。つまりは、Mを買えばM COMPETITIONのパワーは、カスタムECUや排気系チューニングによって手に入る可能性が高い。

 

しかし、この環境性能コンシャスな時代に、これだけハイパワーなガソリンユニットを新たに作り上げるとは・・・。S58ユニットは、実にその9割が新設計なのだという。クランクシャフトとピストンは鍛造製法。そしてサイズはボア×ピッチが84×90mmと改められた。これらを支えるベアリングも当然新設計だ。

 

さらにそのシリンダーヘッドは、雄型を世界で初めて3Dプリンタで製造。これによって砂型では作り得なかった複雑ながらも効率的なウォーターラインを施すことが可能となった。

 

 

過給はアウトレット一体式のタービンを2機掛けで行う。インタークーラーは水冷式。直噴式の高圧インジェクターは350barの圧力で燃料の噴射を細かく制御。オイルパンはGによる偏りを防ぐ形状となり、さらにチェーン駆動のギヤポンプを介して8.5リッターのオイルを潤滑させる。だからドライサンプ化の必要はないという。

 

エンジンも従来型から軽量化を遂げた。ピストンだけで約3kg、その他にもクランクシャフトやクランクケース等の重量を削減した結果、全部で約11kg軽くなったという。

 

その燃費は、市街地・高速巡航を織り交ぜた数値で10.5リットル/100km。CO2排出量は239g/kmで、ユーロ6dーTEMPをクリアしている。ちなみにデータによればM3とM4、さらにCOMPETITIONの数値はすべて同じだった。

 

 

走りもコンペティションな「X3 M COMPETITION」

 

最初に試乗したのはX3 M COMPETITION。これを宿泊地からサーキットまで、市街地から高速道路、そしてワインディングを経由して、約160マイルに及ぶ道のりを走った。

 

X3 M COMPETITIONで感じたのは、その“ビシッ”と筋が通った乗り心地だった。さすがに“最速仕様”ともなるとスプリングレートはそれなり以上に高められており、モードにこそ「コンフォート」はあっても、そこに生ぬるい柔らかさはない。そう、誰と闘っているのかはわからないが、とにかくこれは「コンペティション」なのである。

 

そしてこれがとても“いいアシしている”のだ。

 

本気で走るドライバーなら、それがわかる硬さである。たとえば、ドライブモードを「スポーツ」や「スポーツ+」に転じればダンパーは引き締まるが、それは主に伸び側方向の減衰力が高まる。つまり路面の凹凸で無粋に跳ねたり突き上げるようなことはない。

 

 

そしてこれを「コンフォート」まで緩めれば、スプリングの硬さによる小刻みな横揺れはあっても、段差でアシが伸びきらずにドスン! と落ちることがなくなる。

 

他のMシリーズ同様にストラットやアンダーフロアの補強が車体には施されており、これがボディ剛性をさらに引き上げていることも、そのソリッドながらスッキリとした乗り味には効いていると思われる。

 

正直に言えばアウトバーンやサーキットでも行かない限り、街中で可変ダンパーを硬める必要はまずない。だが時にこのソリッドな乗り味を味わうだけでも心が引き締まる。そのレーシーな乗り味を楽しむだけでも、生活に張りが出そうだと思う。まるで機械式時計のクロノグラフ機能を、たまに起動させて楽しむかのように。一方で“M使い”の中には、このスタビリティを使いこなす強者もいるのだろうなぁ・・・と思う。

 

 

飛ばせば飛ばすほど面白くなる!

 

速度を上げるほどにフラットになる乗り味。いわゆる“飛ばせば飛ばすほどに面白くなるアシ”。ここに新型ストレート6は、最高に気持ち良いハーモニーを加える。

 

その咆哮は、マフラーフラップを開いた状況だと完全に明け透けである。ただ直接比較したわけではないがS55系コンペティションユニット(M2やM3、M4に搭載するもの)に比べて、そのサウンドはよりエンジン自体の音が響くようになり、きめも細やかになった気がした。

 

第一、アクセルを閉じても“バラバラ”、“パンパン”とアンチラグサウンドが派手に響かない。純粋に直列6気筒ツインターボの性能を感じられるサウンドである。トルクの出方もあの自らの力を自制できないかのような野蛮さは消え失せ、求めれば求めるだけリニアにこれを与えてくれるようになった。そしてアクセルを踏み抜けば背中がグーッと押しつけられ、デジタル針を高回転までキレイに運んでくれる。

 

このエンジンがM3やM4に搭載されたら・・・最高だ!

 

ハンドリングはどこまでもオンザレール。このグリップとサスペンション剛性のキャパシティを超える領域は常識的な走りのなかでは存在せず、たとえワインディングでもその巨体を苦もなく曲げて走らせてくれる。

 

 

重心の低さが効く「X4 M COMPETITION」

 

クーペモデルであるX4 M COMPETITIONは、そんなX3 M COMPETITIONとは対称的な、しなやかな身のこなしが実に印象的だった。

 

試乗はいきなりサーキット。コースは長い加速セクションをいくつか持ちながらも低中速コーナーやS字コーナーを沢山ちりばめた全長6kmほどの長さで、カントやバンクが一切なく、ランオフエリアが芝生になっているあたりはワインディングのようである。そして平均速度も、かなり高い。

 

そんなナマっぽいコースをいきなり全開で走ったわけだが、X4 M COMPETITIONはその良好なボディバランスとスタビリティの高さで、試走を危なげなくクリアしてしまった。

 

そこにはX3 M COMPETITIONに対して49mm低い全高、これがもたらす重心の低さ、そして30mm広いリヤトレッドによる安定性がまず効いていると思う。

 

 

ボディに対してストローク量をたっぷり取ったサスペンションの連携は、本当に見事だった。路面の起伏を超ハイスピードで通過してもバネ下でタイヤだけが動き、ボディはほとんどブレない。幅の広い縁石を乗り越えても、車両姿勢は安定している。

 

高速コーナーはもちろん、下りながらブレーキングするような場面でさえまったく挙動が乱れないのは、黒子的に安定性を維持するVDC(ビークル・ダイナミクス・コントロール)制御のおかげだろう。

 

当日はステアリング上のM2ボタンを押すことでエンジンとサスペンションの制御を「スポーツ+」にまで高めることはできたが(なぜかステアリングは「コンフォート」推奨)、VDCをカットすることは許されなかった。

 

それゆえ、最初は立ち上がりで“パカッ”とアクセルを踏むとクルマが失速してしまった。4WDのトラクションを活かして・・・と思いきや、丁寧にアクセルを踏んでいかないと出力が絞られてしまうのだ。そういう意味ではこのX4 M COMPETITION、駆動の考え方は4WDというよりFRよりである。

 

 

ただオーバーステアが出てからではなく、未然にこれを防ぐ制御は素晴らしいと思う。最初はその制御に戸惑ったが、逆に立ち上がりで出力が絞られないように運転すれば、安全に自分のドライビングを修正することができる。

 

さらに途中、クーリングを挟みつつも7周に渡り全開で走ったのに、ブレーキは音を上げなかった。フロントは4ポット、リヤは片持ち(!)ながらタッチに大きな変化がないのは、ローター径の適正さと放熱性の高さ、Mコンパウンドブレーキパッドの性能によるものだろう。

 

8速ATはトルコン式ながら変速スピードがシフトノブのボタンで変えられるようになっている。もちろんそのダイレクト感やレスポンスはM3やM4に搭載されるDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)に敵わないが、クルマのキャラクターを考えても、その僅かな差に不満は感じない。

 

MxDriveの制御は同じFRベースの4WDであるM5に比べると、ニュートラル領域が少ない。というよりはまったくオーバーステアを感じられないほど挙動は安定していた。これは大柄で背が高く、ストロークフルなX4 Mにハイパワーなエンジンを積んだ安全性を考えてのことなのだろう。しかし、同時にアンダーステアも出さないという意地も感じられ、それが見事に果たされていると思う。もちろんVDCを完全にカットすれば、よりFRらしい挙動も出て来るだろうが・・・。

 

 

乗り心地が良い「X4 M」、スパルタンな「X3 M」

 

ホテルまではこのX4 M COMPETITIONで帰ったが、やはりオープンロードでの乗り心地はX3 M COMPETITIONよりもしなやかだった。つまり、より背が高く幅が狭いX3 M COMPETITIONを安定させるためには、あの硬さが必要だとM社は判断したのだろう。

 

より速く走れるX4 M COMPETITIONの方が乗り心地は良く、より実用的なはずのX3 M COMPETITIONがスパルタンなのは面白いが、X3 M COMPETITIONのボクシーなスタイルにはあのテイストも合っている気がする。

 

広く、高く。速く、楽しく。そして何より押し出しが強く。

 

SUVは人々の欲望を形にした、今いちばんホットなプライベートムーバーである。

 

そんな中にあってX3とX4のM COMPETITIONは、BMWの名とMのバッジに恥じない仕上がりとなっていた。

なかば、どこまでSUVが速くなっていくのか? と呆れなくもないが、その走りは綿密かつ入念に安全性とドライビングダイナミクスの両立が図られていた。この2台が時代を牽引するステイタスシンボルとして、大きな人気を博するのは間違いないだろう。

 

 

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)

 

 
【SPECIFICATIONS】

BMW X3 M COMPETITION

ボディサイズ:全長4726 全幅1897 全高1669mm

ホイールベース:2864mm

トレッド:前1617 後1602mm

車両重量:1970kg

エンジン:直列6気筒DOHCツインターボ

総排気量:2993cc

最高出力:375kW(510hp)/6250rpm

最大トルク:600Nm/2600 – 5950rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:AWD

ステアリング形式:電動パワーステアリング

サスペンション形式:前ダブルジョイントストラット 後5リンク

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ(リム幅):前255/40ZR21(9.5J) 後265/40ZR21(10J)

最高速度:250km/h(Mドライバーズ パッケージ:285km/h)

0 – 100km/h加速:4.1秒

CO2排出量(Euro 6d – TEMP):239g/km

燃料消費率(EU):13.5 – 12.8km/L

 

BMW X4 M COMPETITION

ボディサイズ:全長4758 全幅1927 全高1620mm

ホイールベース:2864mm

トレッド:前1617 後1632mm

車両重量:1970kg

エンジン:直列6気筒DOHCツインターボ

総排気量:2993cc

最高出力:375kW(510hp)/6250rpm

最大トルク:600Nm/2600 – 5950rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:AWD

ステアリング形式:電動パワーステアリング

サスペンション形式:前ダブルジョイントストラット 後5リンク

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ(リム幅):前255/40ZR21(9.5J) 後265/40ZR21(10J)

最高速度:250km/h(Mドライバーズ パッケージ:285km/h)

0 – 100km/h加速:4.1秒

CO2排出量(Euro 6d – TEMP):239g/km

燃料消費率(EU):13.5 – 12.8km/L

 

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TEL  0120-269-437

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