デモランに登場したラピードE、その完成度をアストンマーティンのディレクターに訊く

アストンマーティン_ラピードEの走行シーン1

Aston Martin Rapide E

アストンマーティン ラピードE

 

 

ラピードEの開発はどの段階まで進んでいるのか?

 

アストンマーティン史上初となる市販EVモデルとして今年の上海モーターショーでお披露目されたラピードE。すでにフォーミュラEモナコ・ラウンドで走行を披露したことについては、本サイトでもレポートしているが、同じくデモランを披露したグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、ヴィークル・ライン・ディレクターを務めるジョン・カレスに話が聞けた。

 

 

ヴィークル・ライン・ディレクター/ジョン・カレス

 

「ラピードEは、アストンマーティンが送り出す初のEVモデルとなります。そのベースにラピードが選ばれたのは、我々が製造するプロダクション・モデルの中でEVユニットを収納するスペースが最も大きかったのが理由です

 

カレスによるとシステム全体で612psのパワーと950Nmのトルクを発生するパワーユニットは、ウイリアムズ・アドバンスト・エンジニアリングと共同で開発したものだそうだ。「我々がウイリアムズと手を組んだのはお互いの拠点が近い上に、バッテリーの製造工場もコヴェントリーにあってロジスティクスを含め開発に有利だったからです」

 

 

ラピードEではリヤの燃料タンクがあった場所に2基のモーターとギヤボックスを備えるFRレイアウトを採用しているのだが、4モーターAWDにしなかった理由をカレスはこう話す。

 

「ただEVシステムを組み込めばいいというのではありません。EVであってもアストンマーティンらしいスポーティでエキサイティングなパフォーマンスが求められます。そこでラピードAMRのシャシーをベースとする後輪駆動を選択したのです」

 

 

徹底した軽量化と空力効率化を施す

 

EV化に際し、ボディ自体の補強や大きな構造変更は行なっていないそうだが、ボンネットなどのボディパネルやシャシー、バッテリーケースにカーボンコンポジットを多用するなど軽量化が徹底されており、車両重量はラピードAMRの1990kgに対して2140kgと、150kg程度の増加に抑えられている。

 

新デザインの鍛造ホイールもラピードEの特徴。ブレーキの冷却効率と空力性能の向上に効果を発揮しているとのことだった。またピレリPゼロも転がり抵抗の少ない専用設計のものとなっている。

 

またブレーキに関してはカーボンセラミックよりシステム全体で軽く、フリクションも低減できるという理由でスチールディスクが採用されている。この他にも、フロントスポイラー、マフラーが無いアンダーフロアなどエアロダイナミクスも見直され、8%の効率アップを果たしているという。

 

 

バッテリーユニットをフロント、駆動系をリヤに配置したのは、重量バランスの最適化とともにドライビングポジションをノーマルから変えないためだとカレスは語る。

 

もともとV12ユニットが収まっていたエンジンコンパートメントに収められる容量65kWh、出力450kWの800Vバッテリーユニットは、いくつかのブロックにまとめられた5600個以上のリチウムイオンバッテリーで構成されており、専用の急速充電器で45分、ハイパワーAC充電器を使用すれば家庭でも3時間半でフルチャージ可能だ。

 

その総走行距離は200マイル(約320km)を記録。最高速度は250km/hで、10秒間の連続走行が可能だとカレスは説明する。

 

 

 

ほぼ市販モデルといえる完成度を見せる

 

グッドウッドにやってきたラピードEはモナコで走ったプロトタイプそのもので、ボディにはアストンマーティンとパートナーシップを結んでいるタグ・ホイヤーのスペシャルカラーリングが施されていた。リヤシートは外されロールケージを組み込んだ状態であったが、あらゆる状況をモニタリングできるフルスクリーンのインストゥルメントパネルなど、ほぼ市販モデルというべき高い完成度であった。

 

またドライブしたダレン・ターナーも、スタンダードのラピードと変わらぬ扱いやすさと高級感をもちながら、素晴らしいパワーとトルクを誇るパワーユニット、そしてAMR譲りのクイックで安定感のあるハンドリングを絶賛したそうだ。

 

 

155台の限定生産となるラピードEはDBXと同じセント・アサン工場で製造され、今年の秋以降を目処にヨーロッパを中心に世界各地へデリバリーを開始。すでに日本のホモロゲーションも取得し、デリバリーを予定しているという。

 

「日産時代にEV開発の現場を経験したアンディ・パーマーが3年前にCEOに就任したことが、ラピードE開発の大きな転機となりました。そこで我々はアストンマーティンらしいサウンド、フィーリング、パフォーマンスを維持することに拘りました。そしてウィリアムズとのジョイントによって、すべてがパーフェクトにフィットした1台を作り上げることができたのです」

 

 

「しかしこれは最初の1歩にすぎません。今年のジュネーブでラゴンダ・オールテレイン・コンセプトを発表しましたが、そこにもラピードEの開発で経験したことが生かされることになります」

 

カレスは最後にこう締めくくった。「ラピードEはEVにおける最初の本格的なラグジュアリーカーとして発売されます。そしてこのクルマには“我々は常に新しいテクノロジーを歓迎している”という、アストンマーティンのキーメッセージも込められているのです」

 

 

TEXT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)

PHOTO/藤原功三(Kozo FUJIWARA) 藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)