消失していた伝説の1939年型「ベントレー コーニッシュ」をゼロから復元! ついに公開へ

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Bentley Corniche 1939

ベントレー コーニッシュ 1939

 

 

失われた歴史を繋ぐ名車を復活させるために

 

ベントレーは、同ブランドの歴史に多大な影響を与え、忘れられない記憶を残しながらも消失してしまった名車の復元に成功した。1939年に1台だけ試作された「コーニッシュ」を完全にゼロから復元したのだ。

 

今回の復元プロジェクトを通し、ブランドが培ってきた革新的なデザインとテクノロジー、そしてビスポーク部門マリナーの多岐にわたる職人技が発揮された結果、傑作モデル「エンビリコス 4 1/4リッター」から「Rタイプ コンチネンタル」への流れる歴史が途切れることなくつながったことになる。

 

 

MkVサルーンの高性能バージョンとして試作

 

マリナーの技によって蘇った貴重なコーニッシュは、元々1939年10月に発売が予定されていた、当時最先端モデル「MkVサルーン」の高性能バージョンという位置付けで試作されたモデル。これは、ギリシャ人レーサーのアンドレ・エンビリコスの依頼によるものだった。

 

コーニッシュのスタイリングは、1920年代~1930年代の伝統的なベントレーとは大きく異なり、スピードとパフォーマンスを向上させるために革新的な流線型ボディが採用された。特にデザイン面において、戦後に発表されたRタイプ コンチネンタルから現在のコンチネンタルGTに至るまで、コーニッシュが残した影響は計り知れないという。

 

 

第二次世界大戦中のフランスで消失したボディ

 

コーニッシュは軽量鋼を用いた軽量シャシーにMkVのエンジンをチューンナップして搭載。オーバードライブギヤボックスが組み合わせられた。

 

1939年5月に完成したコーニッシュは、英国のブルックランズ・サーキットでの走行テストで、100km/hを大幅に上回り、標準仕様のMkVから飛躍的に進化した性能を見せつた。流線型のボディは当時の量産車では目新しく、空力面でも時代を大きく先取りしてたと言えるだろう。

 

ところが、オリジナルのコーニッシュは、1939年に第二次世界大戦中のフランスで消失した。事の発端は1939年8月、フランスでの走行試験に戻る途中の事故だった。バスとの衝突による破損がひどく、シャシーはダービーにあるベントレー工場に送られて修復されることになった。一方フランスで修復されたボディはその同じ年、ディエップ港で爆撃に遭遇し、完全に消失してしまう。

 

1台のみが製造されたコーニッシュは、もう二度とその姿を見ることはできないはずだった。

 

 

ベントレーによる100周年事業へ

 

ベントレーがコーニッシュの復元プロジェクトをスタートさせたのは、もう何年も前のことになる。当初は「W.O.ベントレー・メモリアル・ファウンデーション」と「サー・ヘンリー・ロイス・メモリアル・ファウンデーション」のボランティアによって復元作業が進められていた。

 

ところがこのプロジェクトは資金難に陥ってしまう。そこで、エイドリアン・ホールマーク会長兼CEOにより、2018年2月から作業はベントレーに移管された。ベントレー創立100周年記念の一環として2019年中の完成を目指すことになったのだ。

 

「1939年製コーニッシュはベントレーのデザイン言語を確立したクルマであり、後に登場したRタイプ コンチネンタルと比べても、そのデザインの共通性は一目瞭然です。コーニッシュはベントレーの歴史に残る極めて重要なクルマでした。英国生まれのこの名車には、当時の最先端デザインとテクノロジーが注ぎ込まれていたのです」と、ホールマークは今回のプロジェクトを立ち上げた理由を説明する。

 

「マリナーによって見事に復元されたコーニッシュをご覧いただけば、当社が現代のモデルを美しくカスタマイズするだけでなく、過去の資料を基に名車を復元する高い技術力を有していることをお分かりいただけると思います」

 

 

マリナーによる名車再現プロジェクト第一弾

 

復元プロジェクトは、ベントレーに持ち込まれた時点からマリナーへと委ねらることになった。

 

これまでもマリナーは1970年代以来、コレクターや王室からのワンオフモデルの依頼を受けてきた。2002年にはイギリス王室向けステートリムジンを2台製造。現在は、量産モデルをベースに特別なビスポークモデルを数多く発表している。

 

今回、マリナーが手掛けた「名車再現プロジェクト」第一弾となったコーニッシュには、マリナーがもつコーチビルディングとレストアに関する技術のすべてが注がれることになった。

 

 

現行モデルの製造チームも参加した復元作業

 

今回、ミュルザンヌのホワイトボディ製作チームは、パネルを手作業で成形する技を活かし、パネルのディテールまで精巧に仕上げた。ペイントラボのスタッフは、参考となる資料が乏しいにも関わらず、膨大な時間を費やし、ボディのメインカラーとなる「インペリアルマルーン」とボディサイドの「ヘザーグレー」のカラーサンプルを作成した。

 

インテリアデザイン責任者ダレン・デイは、自身のチームを率いて詳細な歴史的研究資料を参考にシートとドアトリムのCADデザインを製作。マリナーのトリムチームはデザイン画をベースに、当時に相応しいヴァンボーレン社スタイルのインテリアを完成させた。インテリアにはコノリー製レザー、イングランド西部特産の生地、貴重な素材から製作されたカーペットなどが使用されている。

 

マリナーのワークショップでは、マスターカーペンターのゲーリー・ベドソンがスチームブースを考案。インテリアのウインドウ周りの木材を少しだけ曲げるために1時間以上もスチームにまみれて作業することも珍しくなかったという。他のチームメンバーもCADを用いて、エアフローの分析と個々のスラットの設計を行い、フロントグリルを完璧に再現した。最終的に熟練の金属加工職人が3ヵ月かけてフロントグリルを完成させている。

 

マリナーに所属する6名の見習い職人も名車復元に至るまでプロジェクトに関わり、そのうちの1名はコーニッシュのトランクに設置されるツールトレイの複製を手掛けた。

 

 

ブレンハイム城で開催されるサロン・プリヴェで初公開

 

コーニッシュの復元は、ベントレーのビスポークとコーチビルディングを担うマリナーの職人技と当時の図面だけを頼りにクルー工場で行われた。機械パーツは1939年製コーニッシュとMkVから流用。ボディは細部に至るまでオリジナルモデルと同等に製作されている。

 

「我々はチーム一丸となって復元に取り組みました。マリナーをはじめ、ベントレーで働く熟練の職人達は皆、この車の完成に大きな誇りを感じています」と、ベントレー・デザインディレクターとマリナー・ディレクターを兼任するステファン・ジーラフは今回の作業を振り返った。

 

復活したコーニッシュは、9月にイギリスのブレンハイム城で開催されるクラシックカーイベント「サロン・プリヴェ」にて初公開される。その後、ベントレーのヘリテージカーに加えられ、W.O.ベントレーの「8リッター」やバーキン卿の「ブロワー」とともに世界各国のイベントで展示される予定だ。