ポルシェAG副社長に訊く「タイカン」の狙い、そしてライバルに対する優位性とは?

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Porsche Taycan

ポルシェ タイカン

 

 

中国でタイカンの発表会が行われた意味

 

ポルシェは9月4日(日本時間23時)、初の100%バッテリーEV(BEV)、タイカンのワールドプレミアを世界3ヵ所で同時刻に行った。ドイツではベルリン近郊のノイハルデンベルクの太陽光発電所、米国ではニューヨーク州とカナダ・オンタリオ州の国境にあるナイアガラの滝近くの水力発電所、中国では福建省福州市から約150km離れた平潭にある風力発電所と、ポルシェにとって主要なマーケットであり、かつ自然エネルギーで電力を賄う象徴的な場所を選んでのプレゼンテーションだった。

 

なぜ、アジア地域では中国で開催されたのかといえば、アジア地域のみならず、ひいては世界でナンバー1の自動車マーケットになった中国が大量の補助金を用意し、国策としてNEV(New Energy Vehicle)規制を推し進めているからだ。NEV規制は米カリフォルニア州が採用するZEV(Zero Emission Vehicle)規制法にならい、中国で年間3万台以上の自動車生産、輸入を行うメーカーに対し、NEVに付与されるクレジットの獲得を義務付け、目標をクリアできなければ罰金を課すというものだ。現在の米中関係の影響による市場動向には細心の注意が必要だが、ポルシェにとっても中国が最重要マーケットであることはかわらない。

 

このワールドプレミアに先立ち、同様に欧州、米国、中国の3ヵ所でワークショップが開催され、日本のメディアには上海にあるポルシェ エクスペリエンス センターにて、その詳細が明らかにされた。ここにタイカンの全容を紹介していく。

 

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タイカンは4ドア&4シーターのBEVサルーン

 

ボディサイズは、全長4963mm、全幅1966mm、全高1378mmと、パナメーラよりも全長は短く、全幅は広く、全高は低い。車両重量(DIN)は2305〜2295kg。ディメンジョンは911とパナメーラの間にあたるもので、重心高が非常に低く、床下にバッテリーを抱えながらもシートポジションは911に近いものだ。

 

エクステリアデザインは、2015年に発表されたコンセプトカー“ミッションE”を限りなく市販車として再現したもの。特徴的なヘッドライトまわりの造形がそのまま量産化されており、911やカイエン、パナメーラとも違う、ポルシェの新たなシリーズの顔であることを示唆している。

 

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そしてタイカンの1つのハイライトは史上初の800VシステムによるBEVであること。従来の一般的なEVが400Vシステムであるのに対して倍の電圧とすることで、パフォーマンスを安定的に発揮することができ、またケーブル類などを細くすることが可能で、軽量化にも大きく貢献するという。

 

 

919ハイブリッドから始まった電動化への流れ

 

ポルシェAGの911からタイカンまですべてのプロダクトの技術戦略や先行開発のコンセプトなど担当する副社長ゲルノート・ドエナー氏にまず近年の電動化への流れについて尋ねてみた。

 

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Dr.ゲルノート・ドエナー

ポルシェ AG 副社長

 

Dr.Gernot Doellner

Porsche AG Vice President Product and Concept

 

 

「自動車業界全体にとってもポルシェにとっても電動化の過渡期にあり、重要な局面にあります。今につながる我々の電動化のストーリーは約9年前に918スパイダーを作ったときから始まっており、800Vの技術は919ハイブリッドによって培われたものです。タイカンはピュアEVでありながら、日常での使いやすさを備えたスポーツカーです。まだ発表前にも関わらず、すでに3万1000台の予約注文が入っています。半分はポルシェの既納客であり、半分は新規の顧客です。そこに期待値の高さを感じています。これからタイカンがどうやって売れていくのかを注視していきたい」

 

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EVであってもポルシェ流の超高性能スポーツカー

 

グレードは「ターボ」と「ターボS」という2モデルの設定。パワートレインは、永久磁石シンクロナスモーター(PSM)を前後軸に1つずつ計2基、そして93.4kWhのバッテリーを搭載し、4輪を駆動する。トランスミッションはポルシェ独自開発のものでフロントアクスルに1速の、リアアクスルに2速のトランスミッションを組み合わせており、1速は主にスポーツやスポーツプラスモードで、コンフォートモードなどではオーバードライブギアの役割として2速へとシフトすることでモーターの負荷を軽減しながら、最高速度260km/hで巡航可能な性能を実現している。

 

「ターボ」の出力は、460kW(625ps)、ローンチコントロール使用時には最大500kW(680ps)にまで高まる。最大トルクは850Nm。一方「ターボS」の出力は通常時はターボと同様、460kW(625ps)で、ローンチコントロール使用時には最大560kW(761ps)に、最大トルクは1050Nmにまで到達する。

 

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0 – 100km/h加速は、ターボが3.2秒、ターボSでは2.8秒。0〜200km/h加速はそれぞれ10.6秒/9.8秒となる。航続可能距離はWLTPモードで、「ターボ」は381 – 450 km、「ターボS」は388 – 412 kmとなっている。充電に関しては、11kWのACチャージングをはじめ、最大270kWのDCチャージングに対応しており、5分の充電で(ターボSは5.5分)で100km(WLTPモード)走行が可能という。80%までの充電時間は22.5分となっている。

 

CHAdeMO(チャデモ)規格にも対応しているが、日本にはまだこのレベルの高速充電施設は存在しておらず、ポルシェ ジャパンではタイカンの国内導入にむけて、2020年半ばより、ABB製の急速充電器を全国のポルシェ センターと公共施設への設置を計画。150kWでの急速充電を可能とする次世代CHAdeMOによって、タイカンの80%の充電を30分以内に済ませる能力を備えるという。

 

仮想的はテスラModel Sの高性能モデル ルーディクラス パフォーマンスだろう。フロントとリアに2基のモーターを備える4輪駆動車である点は同じ。テスラは、0-100km/h加速2.6秒、最高速度261km/h、後続可能距離はWLTPで590kmを標榜している。数字だけで判断するならば、テスラの方が速いし、遠くまで走ることができるということになる。

 

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なぜ、グレード名に「ターボ」と名付けたのか?

 

先出のゲルノート・ドエナー氏に、なぜBEVなのにグレード名がターボなのか? そして、カタログスペックでは見えない競合優位性について尋ねてみた。

 

「ターボはパフォーマンスレベルをあらわしたものです。911ターボがトップレベルの性能であることは、多くの人にとってイメージしやすいものであり、タイカンがその性能レベルに達していることを表現するためにそういった名前をつけました。そしてスペック面で言えば、スポーツカーは、加速がすべてではありません。タイカンはダンピングシステムなどをはじめドライビングダイナミクスではセグメントでベストといえる性能をもっています。ディスカッションを重ねて0−100km/h加速は2.8秒で十分だろうと。より大事な要素としては0−200km/h加速がありますが、それは9.8秒と10秒を切っています。そして何よりも重要なことは再現性があるということです。競合は3度トライすればゲームオーバーしてしまう。しかし、我々のクルマは違う。0−200km/h加速を20回以上トライすることができます。その上でタイムの誤差は1秒以下なのです。最高速度も260km/h以上出すこともできますが、エネルギー効率の観点からそれ以上はあまり意味がない。航続距離に関しても、バッテリーのエネルギー密度で重量、それから充電時間の3つの要素を鑑みてバランスのいいところで決めています。急速充電の観点からも使い勝手の良いものと考えています」

 

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上海のエクスペリエンスセンターで、プロトタイプの同乗試乗を体験することができたのだが、その速さは申し分ない。これまで乗ったすべてのBEV中でもっとも重心が低くスポーティだと言える。テストドライバーの腕にかかればESPをオフにすればドリフトも自在だった。果たしてステアリングを通じてどれほど“ポルシェ”を感じることができるのか。心待ちにすることにしよう。

 

 

REPORT/藤野太一(Taichi FUJINO)

 

 

【SPECIFICATION】

ポルシェ タイカン ターボS

ボディサイズ:全長4963 全幅1966 全高1378mm

ホイールベース:2900mm

トレッド:前1690 後1655mm

車両重量:2295kg

 

バッテリー容量:93.4kWh 

電気モーター(前後):永久磁石同期モーター

トランスミッション:前1スピード 後2スピード

駆動方式:AWD

最高出力:460kW(625ps)

オーバーブースト時:560kW(761ps)

最大トルク:1050Nm

 

サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク

ブレーキシステム:前後ベンチレーテッドディスク

ブレーキ キャリパー:前10 後4ピストン

ブレーキディスク:前後セラミック コンポジット ブレーキ

ローター径:前420×40 後410×32mm

タイヤサイズ(リム幅):前265/35ZR21(9.5J) 後305/30ZR21(11.5J)

 

最高速度:260km/h

0 – 100km/h加速:2.8秒

0 – 200km/h加速:9.8秒

0 – 400m加速:10.8秒

 

航続距離(WLTP):388 – 412km

電力消費量(WLTP):25.7 – 24.5kWh/100km

CO2排出量:0 g/km

 

ポルシェ タイカン ターボ

ボディサイズ:全長4963 全幅1966 全高1381mm

ホイールベース:2900mm

トレッド:前1702 後1667mm

車両重量:2305kg

 

総電力量:93.4kWh 

電気モーター(前後):永久磁石同期モーター

トランスミッション:前1スピード 後2スピード

駆動方式:AWD

最高出力:460kW(625ps)

オーバーブースト時:500kW(680ps)

最大トルク:850Nm

 

サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク

ブレーキシステム:前後ベンチレーテッドディスク

ブレーキ キャリパー:前10 後4ピストン

ブレーキディスク:前後セラミック コンポジット ブレーキ

ローター径:前415×40 後365×28mm

タイヤサイズ(リム幅):前245/45R20(9J) 後285/40R20(11J)

 

最高速度:260km/h

0 – 100km/h加速:3.0秒

0 – 200km/h加速:10.6秒

0 – 400m加速:11.1秒

 

航続距離(WLTP):381 – 450km

電力消費量(WLTP):26.7 – 23.0kWh/100km

CO2排出量:0 g/km

 

 

【問い合わせ】

ポルシェ カスタマーケアセンター

TEL 0120-846-911

 

【関連リンク】

・ポルシェ 公式サイト

https://www.porsche.com/japan