V10を搭載した衝撃作「ポルシェ カレラ GT」(2003)【名作スーパーカー型録】

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Porsche Cerrera GT

ポルシェ カレラ GT

 

 

2003年、究極のポルシェが誕生

 

ポルシェの定義によれば、クラシックとは生産から10年以上を経過したモデルのことを意味するという。となれば、ポルシェがまさに新世紀の訪れを告げるかのように、まずはコンセプトカーを1999年のパリ・サロンで発表した“タイプ980”すなわち「カレラGT」もすでにポルシェにとってはクラシックのファミリーということになる。

 

コンセプトカーが登場した時からポルシェが将来的にプロダクションに移行しないモデルを製作することはないだろうという見解は、カスタマーからもメディアからも大勢を占めていたが、それは2003年のジュネーブ・ショーで現実のものとして証明されることとなる。ポルシェはこのカレラGTを、当時旧東ドイツ領のライプツィヒに完成したばかりの新工場で生産し、その心臓部たるパワーユニットは伝統の本社工場、すなわちツッフェンハウゼンで製作することを発表。このエンジン製作のキャパシティから、カレラGTの日産は2〜3台。最終的な生産台数は、1000台を超える程度になるとアナウンスされた。

 

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プロダクションのカレラGTのスタイリングは、コンセプトカーのそれから大きく変わることはなかった。フロントウインドウの傾斜角や灯火類のデザインなど、法規上の問題で若干の変更はあったものの、基本的なシルエットはそのまま継承されることになった。最も大きな変更点としては、着脱式のルーフがプロダクション仕様には装備されることになったくらいだろう。

 

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デザインモチーフは917RSK

 

ポルシェがこのカレラGTのボディデザインでモチーフとしたのは、917RSKに象徴されるコンペティションモデルの数々だ。ボリューム感に溢れるフロントフェンダーの造形などは、まさにその典型ともいうべきパート。ポルシェの熱狂的なファンならば、その造形が最新の技術によって現代に復活したことに大きな喜びと興奮を感じたに違いない。

 

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当時、最先端のカーボンモノコック構造

 

カレラGTは、CFRP製のモノコックタブを核とするモデルだ。現在のスーパースポーツでは珍しいことではなくなりつつあるが、ポルシェはカレラGTで、CFRP製のセンターモノコックに、パワーユニット一式を包み込むようなデザインのサブフレームを同じくCFRPで組み合わせてきた。ポルシェが当時発表したデータによれば、センターモノコック+リアサブフレームのウエイトは、トータルで約100kg。それによって車重は総重量でも1635kgと、きわめて軽量に仕上げることができたのだ。

 

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ル・マンへの参戦を意識したV10エンジンを搭載

 

CFRP製のリアサブフレーム上、車体のミッドに搭載されるエンジンは、68度のバンク角が設定されたV型10気筒DOHC。これは、そもそもポルシェがル・マン24時間レースへの参戦を狙って開発を進めたV型10気筒エンジンをベースとしたもので、排気量はプロトタイプの5.5リッターから5.7リッターに拡大されている。ブロックはアルミニウム製。クローズドデッキ構造を採用しているのは、いかにもその設計の基礎がレーシングエンジンにあったことの証明ともいえる部分である。

 

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最高出力&最大トルクは612ps&590Nm。このエンジンには6速MTが組み合わされるが、機能性にフォーカスしたコクピットということもあって、アッシュ材と欅を何層にもサンドイッチして球形に成型したシフトノブが与えられた。これは、かつての917が軽量化のためにバルサ材をシフトノブに使用していたことと同様のアイデアだ。古くからポルシェの機能性とセンスが実に巧みだったことを思い出させる。

 

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前後のサスペンションはプッシュロッド式のダブルトラックコントロールアームで、セッティングの自由度が大きいのも特徴。タイヤはフロントに19インチ、リアに20インチを装着する。

 

最高速度で330km/hを主張したカレラGTは、結局2006年まで生産が継続し、トータルで1270台ほどがデリバリーされた。最大の市場はもちろんアメリカ。アメリカだけで644台というから、約半数がデリバリーされた計算になる。

 

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ カレラ GT

発表:2003年

エンジン:V型10気筒DOHC

総排気量:5733cc

最高出力:450kW(612ps)/8000rpm

最大トルク:590Nm/5750rpm

トランスミッション:6速MT

駆動方式:RWD

車両重量:1380kg

車両総重量:1635kg

最高速度:330km/h

 

 

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)