ランボルギーニが宇宙へ? 自動車メーカーとして初めて国際宇宙ステーションでカーボン素材を研究

公開日 : 2019/10/31 06:30 最終更新日 : 2019/10/31 06:30


ACLSDのテンション&コンプレッションテストマシン

11月2日に打ち上げるロケットで宇宙に複合素材を運ぶ

 

アウトモビリ・ランボルギーニと米国ヒューストンメソジスト研究所が2年前にスタートした、カーボンファイバー複合素材に関する共同研究が重要な転機を迎えている。

 

米国バージニア州ワロップス射場から国際宇宙ステーション(ISS)に向け、11月2日までに打ち上げられるノースロップ・グラマン社の「アンタレスロケット」に、アウトモビリ・ランボルギーニ製複合素材のサンプルが載せられることになったのだ。

 

今回の打ち上げは、ISS米国国立研究所が主催し、ヒューストンメソジスト研究所が監督するテストキャンペーンの一環として行われる。ランボルギーニ製車両や医療分野における将来的な応用を視野に入れ、サンタアガタ・ボロネーゼで製造された5種類の複合素材が宇宙空間に送られ、極限の環境下でどのような反応をするかが分析される。

 

ランボルギーニのステファノ・ドメ二カリCEOは、今回のミッションに無償で参加することは企業の社会的責任を果たすのみならず、自社の技術革新に大いに役立つと語る

 

インプラントなどにも活用されているランボルギーニ製カーボン

 

ランボルギーニが無償協力する今回のミッションは、ランボルギーニのステファノ・ドメニカリCEOと、欧州研究会議(ERC)議長を務めるマウロ・フェラーリ氏(当時、ヒューストンメソジスト研究所の所長兼CEO)が、共同研究の協定に署名してから2年後の実施となる。

 

この協定により、ランボルギーニ製複合素材は人工インプラントでも使用できるようになり、その軽量性、放射線透過性、放射線に対する適合性を活かして、皮下デバイスに使用するための生体適合性の研究も開始された。

 

ドメニカリCEOは、今回の宇宙実験プロジェクトについて次のようにコメントした。

 

「私たちは、今回の実験参加を心から誇りに思っています。ランボルギーニは国際宇宙ステーションにおいて、カーボンファイバー素材研究を行う初の自動車メーカーとして、新天地を切り開くのです。今回のミッションはCSR(企業の社会的責任)における重要な取り組みであるだけでなく、ランボルギーニの理念と価値観とも完全に一致しています。ランボルギーニはその活動のすべての分野において限界を超え、技術の世界で開拓者であることに常に全力を注いできたブランドです」

 

車重1トン未満でウェイトパワーレシオは1.75kg/hpという卓越した軽量性能を標榜し話題をさらったセストエレメント。ボディ外板からブレーキシステム他あらゆる箇所がカーボン製となり、ランボルギーニのカーボン技術の高さを示した

 

Lamborghini Sesto Elemento

ランボルギーニ セストエレメント

 

セストエレメントで採用された不連続繊維複合材

 

実験対象に選ばれたカーボンファイバーの5種類のサンプルは、革新的なテクノロジーが駆使されている。これはランボルギーニがこの分野において積み上げてきたノウハウの成果であり、特に高性能複合素材の分野で長年活動を続けてきたサンタアガタ・ボロネーゼ本社の「Centro Sviluppo Compositi(複合素材開発センター)」と「ACLSD(先進複合素材軽量構造開発)研究所に」おける研究開発の成果となる。

 

バイオ医療と自動車の分野だけでなく、柔軟性の高い積層造形は良質のアルミニウムと同等の高度な機械的性能をもつ構造部材に使用でき、連続繊維複合材は3Dプリンターによって製造が可能になった。

 

今回行われる実験では、不連続繊維複合材も重要な役割を果たす予定だ。これは2010年の限定モデル「セストエレメント」以来、ランボルギーニが先駆的な開拓を続け、現在ではランボルギーニの全モデルで使用されている素材だ。また、実験対象の素材には従来の技術であるエポキシ樹脂のプリプレグと、オートクレーブによるポリマーファブリックも含まれている。

 

ランボルギーニのACLSD(先進複合素材軽量構造開発)研究所の成果のひとつとして、3Dプリント技術を用いた連続繊維複合材の生産が挙げられる。カーボンなどの複合繊維素材においてランボルギーニの技術力は突出している

 

地上ではあり得ない極限の環境下で行われる実験

 

これらの素材はISSで6ヵ月にわたって、マイナス摂氏40度からプラス摂氏200度までの極端な熱サイクルを経験するほか、地球の大気圏で最も高く希薄な層に相当する紫外線放射、ガンマ線、太陽放射により電離された原子状酸素の流れにも大量にさらされることになる。

 

ミッション終了時には、地球に帰ってきたサンプルをランボルギーニとヒューストンメソジスト研究所が共同で試験。化学的・物理的特性面での質的劣化を定量化する。ここで得られたデータは、自動車における先進複合素材の使用拡大という意味で、ランボルギーニにとって大変貴重なものになるという。