ワイルド&スポーティな新型ベントレー フライングスパー“ブラックライン”をモナコで試乗!

ベントレーフライングスパーの夕景の走行シーン

Bentley Flying Spur

ベントレー フライングスパー

 

 

二面性を狙う新型フライングスパー

 

初秋とはいえ、まだまだ夏のように華やかな日差しにあふれたニース空港に待っていたのは真っ白な新型「ベントレー フライングスパー」だった。ショーファーに促され、リヤシートに腰を降ろすと、目の前のスクリーンにこの春から本社のPR担当となったウェイン・ブルースが現れ、早速プレゼンテーションが始まった。そう、そこから既に新型フライングスパーの国際試乗会は始まっていたのである。

 

画面の中でブルースは簡単なフライングスパーの歴史や、新型の概要をテンポよく紹介していく。そしてリヤシートに座ると、センターコンソールに備えられたタッチスクリーンリモートを手に取って、オーディオ、ナビゲーション、空調、サンシェイド、室内のイルミネーションなど、リヤシートから操作できるデバイスの説明を始めた。なかなか試乗会でリヤシートを満喫する機会は少ないだけに、自分でもタッチスクリーンリモートを色々試しながら、静かで滑らかな乗り心地を味わっているうちに目的地であるモナコに着いた。

 

ベントレーフライングスパーの真横のカット

フロントアクスルが前方に移動した新型フライングスパー。クーペのコンチネンタルGT同様、低重心化を狙いW12ツインターボエンジンの搭載位置を低く設定。ホイールベースも130mm長くなっている。

 

記念すべき100周年を飾るモデルとして、さる6月11日に発表されたフライングスパーは、1957年にH.J.マリナーの手で製作されたS1フライングスパーの名を受け継ぐ、ベントレー生粋のスポーツサルーンだ。

 

実は5月末にイギリスのクルー本社で行われたプレビューで実車を見ているのだが、やはり屋内で見るのと屋外で見るのは印象が違う。たまたまホテル・ド・パリの前で先代と並ぶ光景に出くわしたのだが、フロントアクスルが前方に移動したことで実現したロングノーズのボディは俄然スタイリッシュで、スポーツサルーンたるフライングスパーの名にふさわしい。

 

また、よりワイドになった縦基調のグリルは、今回から復活したボンネット上のマスコットとともに、フライングスパーの存在感をことさらに強調する。一方、スーパーフォーミングによる複雑な曲面を描くエッジの効いたリヤパネルとテール周りの造形は、シックでエレガント。デザイン・ディレクターのステファン・ジーラフの言うとおり「ドライバーズカーとショーファーカー、スポーティーとラグジュアリーという、フライングスパーの2つの顔」を表現したデザインとなっている。

 

ベントレーフライングスパーのマスコット

マスコットやグリル、ウインドウモールの他、ホイールなどのメッキパーツのすべてがブラックアウトした仕様となるブラックライン。

 

ワイルド仕立ての“ブラックライン”が試乗車

 

今回、我々がドライブしたのは“ブラックライン”と呼ばれる、マスコット、グリル、ウインドウモール、ホイールなどのメッキパーツを全てブラックアウトした仕様だった。スタンダードが大人びた印象なのに対し、一気にワイルドでスポーティなイメージに変わるのに驚いたが、これがダークグリーンのボディ(内装もグリーンというお洒落な組み合わせだった!)と合っていて、お世辞抜きにカッコいいのだ。ジーラフも「これまでとは違う若い層、ミレニアム世代にアプローチしていきたい」と、その狙いを説明する。

 

ベントレーフライングスパーのコクピット

前作から大幅に機能性が向上したコクピット周り。視認性や操作性は最新の現代レベルに仕上がっている。

 

コンチネンタルGT譲りのダッシュボード周り

 

ドライバーズシートに座って妙に落ち着くのは、ステアリングや各種スイッチ類などの基本的な意匠がコンチネンタルGTと変わっていないという安心感が大きいかもしれない。またセンターの12.3インチ・タッチスクリーンや、デジタル化されたメーターパネルを含め、インフォテイメント環境がやっと最新スペックに追いついたことは、素直に歓迎したい。

 

一方、センターコンソールに備わるウイング状のエアベントや、ドアトリムにオプションで選べる3Dテクスチャーレザーといった、フライングスパーならではのディテールも上手く溶け込んでいる。ちなみにこの3Dレザーに加え、コンセプトカーのEXP10スピード6でお披露目されたダイヤモンドカット仕様の3Dウッドパネルも間もなく用意されるという。当然、然るべきエクストラが発生するのだが、EXP10スピード6の発表以来「自分のクルマにも付けて欲しい」というオファーが世界中から多く寄せられたそうだ。

 

ベントレーフライングスパーのW12エンジン

フロントに搭載される6.0リッターW12ツインターボは、635ps&900Nmを発揮。トランスミッションが先代のATから8速DCTに変更されたのも大きな違いだ。

 

635psを誇るW12ツインターボに8速DCTの組み合わせ

 

635ps&900Nmを発揮する6リッターW12ツインターボTSIユニット、8速DCT、AWDと基本的なコンポーネンツはコンチネンタルGTと同じ。ホイールベースは先代に比べ130mmほど長くなっているが、これは全長が5316mmと先代に比べわずか1mmしか長くなっていないことからも分かるとおり、その大部分がフロントアクスルの前進によるもの。また車両重量は各部の軽量化も甲斐もあり、先代よりも123kg軽い2437kgに抑えられてはいるが、当然のことながらGTと比べれば170kg以上重い。

 

でもそこでフライングスパーを単なる“コンチネンタルGTのストレッチサルーン”と判断するのは早計だ。

 

右足に軽く力を入れるだけで、なんの抵抗もなく“スッ”と滑るように走り出すベントレーらしいマナーはいつもどおり。コンチネンタルGTに比べるとボンネット位置が若干高いのだが、ノーズが下がっているためか見晴らしはいい(その分、話題のボンネットマスコットはフライングBの頭がわずかに見える程度だが)。

 

ベントレーフライングスパー正面からの走行

快適性はもちろん、ロングホイールベース化の影響もあり、極めて高い直進安定性を実現しているのも特筆すべき点だ。

 

静粛性は明らかに先代よりも向上

 

街中や高速道路を走っている限りには、デフォルトの“ベントレーモード”と“コンフォートモード”の差はあまり感じない。ワインディングなどでペースを上げた時にベントレーモードの方が足まわりが若干締まったように感じる程度だ。

 

聞けば、コンチネンタルGTに比べてベントレーモードのセッティングをコンフォート寄りにしているそうで、その辺りにもフライングスパーの立ち位置がうかがえる。無論その乗り心地、ハンドリングやエンジンパワー、レスポンスといったパフォーマンスには文句を言う隙もないのは言うまでもない。また最初にコンチネンタルGTに乗った時は、どこかぎこちなさが感じられた8速DCTも熟成が進んだのか、しっとりと滑らかな印象。加えて先代よりも静粛性がさらに向上しているおかげで、高級感を一層引き立ててくれている。

 

センターコンソールのダイヤルを回して“スポーツモード”に変えてみる。すると途端にエグゾーストノートが野太く大きくなり、エアサスが“キュっ”と締め上げられるのが手に取るように分かる。

 

ベントレーフライングスパーのコーナリング

先代とは比較にならないほどコーナリング性能は向上。48Vシステムと改められたAWDシステムの効果は極めて大きい。

 

効果絶大の4WD&48V電動スタビライザー

 

このスポーツモードが活きるのは、やはりワインディングだ。ステアリングを切ると“スッ”と鼻先が向きを変え間髪を入れずリヤも素直に、かつしっかりと追従する。そしてすぐ反対に舵を切ってもフラットライドを維持したままで不快なヨーは残さない。ちょっと頑張ったくらいではタイヤのスキール音すらさせず、澄ました顔でコーナリングを終えてしまうほど、シャシーのポテンシャルは高い。

 

フライングスパーには状況に応じて自在に前後配分を変えられるAWD(通常はFWD) 、48V電動スタビライザーのベントレーダイナミックライド、60%エアボリュームを上げた3チャンバーエアサスペンション、トルクベクタリングといったGTでも実績のあるデバイスが備わっているのだが、それに加えて新たに採用された。

 

4WS(低速時に逆位相、高速時に同位相となるのだが、その作動を感じることがないほどスムーズ)の恩恵が大きい。感覚的にはまるで2ドアのGTをドライブしているようで、2トンオーバーの車重やリヤシートの存在を忘れてしまうくらいにクイックかつ素直なフィーリングなのだ。

 

ベントレーフライングスパーのリヤからのコーナリング

リヤ周りのデザインは力強く上品。ベントレーのもつスポーティな伝統をモダンに解釈し仕上げている。

 

4ドアサルーンの形をしたスーパーグランドツアラー

 

また「ビッグエンジン、ビッグターボの組み合わせには付き物のターボラグを解消した」というW12ツインターボは吹け上がりも鋭く、低回転域から豊かなトルクを提供してくれるので、ゆとりと自信をもってドライブできる。スポーツモードでさらにレスポンスが向上するDCTをバドルシフトしながら走っていると、ついつい嬉しくなって飛ばしてしまいがちになってしまう。

 

そこで改めて確信したのは、フライングスパーは“コンチネンタルGTのストレッチサルーン”などではないということだ。モナコの街中見せるお淑やかな表情も、ニースの山奥で見せたワイルドな表情も、紛れもないフライングスパーの素顔。そのスタイリングが象徴するように、あらゆる面において“2つの顔”をもつ4ドアサルーンの形をしたスーパーグランドツアラーなのである。

 

まさに硬派なスポーツカーブランドとして生まれ、今では世界屈指のラグジュアリーブランドに成長したベントレーの100周年を飾るにふさわしいモデルと言えるだろう。

 

 

REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)

 

 

【SPECIFICATION】

ベントレー フライング スパー

ボディサイズ:全長5316 全幅1978 全高1484mm

ホイールベース:3194mm

トレッド:前1670 後1664mm

車両重量:2437kg

前後重量配分:53.7対46.3%

 

エンジン:W型12気筒DOHCツインターボ

総排気量:5950cc

ボア×ストローク:84×89.5mm

圧縮比:10.5

最高出力:467kW(635ps)/6000rpm

最大トルク:900Nm/1350〜4500rpm

トランスミッション:8速AT

 

サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク

ステアリング:電動パワーアシスト(可変式)

ブレーキシステム:前後ベンチレーテッドディスク

ローター径:前420×40 後380×30mm

キャリパー:前後10ピストン

タイヤサイズ(リム幅):前265/40ZR21 後305/35ZR21

 

最高速度:333km/h

0→100km/h加速:3.8秒

 

CO2排出量(WLTP):337g/km

燃料消費量(WLTP):14.8L/100km

 

車両本体価格:2615万8000円(税込)

 

 

【関連リンク】

・ベントレー公式サイト

https://www.bentleymotors.jp