メルセデスGクラス 悪路テスト! 新型の進化を試す【ラダーフレーム特集(動画レポート)】

メルセデス・ベンツG550走行シーン1

Mercedes-Benz G550

メルセデス・ベンツ G550

 

 

オーバースペック界の覇王、Gクラス

 

オトコはオーバースペックが大好きな生き物だ。タフなゴアテックスのジャケットを晴れた日の日常着にし、水深300mまで潜れるロレックスをケースに入れて大切に眺め、プロ用の白い望遠レンズを装着したキヤノン一眼レフで子供の運動会を撮る・・・。そんなオーバースペック至上主義オヤジにとっての究極グルマが、メルセデス・ベンツGクラスではないだろうか。

 

どんなにハイスペックでイケているシロモノであっても、アップルウォッチやテスラ、ZARAに代表されるファストファッションには食指が動かない。彼らが重要視しているのは、スペックや見栄えの良さもさることながら、その背景にある歴史、ウンチク、伝説と言ったものだからだ。マニアが頑なに“ゲレンデ”と呼ぶGクラスは、イチゲンさんがおいそれと近づけないエクスクルーシヴな価格すら、返ってウケているのである。

 

一時はディスコンの噂も流れたGクラスは、2018年にフルモデルチェンジを行って延命を決めた。現在の国内導入モデルはG550とG350 d、そしてメルセデスAMG G63の3モデル

 

オーバースペック界の、まさに覇王として君臨しているGクラスのキモと言えるのが、ラダーフレームの存在である。車体の前から後ろまで、ビシッと2本の鉄筋が通っており、この上ないタフネスを裏付けている。「ラダーフレームだけなら他のオフローダーでも備えているよ」とか言ってくる人に対しては、スイッチひとつで個別にメカニカルロックできる前、中央、後ろのデフが、水戸黄門の印籠3連続〜! みたいに襲い掛かる。

 

ともあれ、民間人が買える背高系、究極のオーバースペック車は、今も昔もGクラスで決まり、なのである。

 

本来は軍事用途に開発された経緯をもつだけに、走る場所を選ばない抜群のユーティリティが特徴。確かに街中ではオーバースペックだろう

 

欲しかったのは永遠の命

 

Gクラスの鋼鉄製ラダーフレームの肉厚は4ミリ。と聞いても“?”な感じかもしれないが、一般的なモノコックボディがフロアで1.5ミリ、ボディはその半分くらいといえば、Gクラスのフレームの屈強ぶりがわかってもらえるだろうか。

 

本格オフローダーが決まってラダーフレームを備える理由は耐荷重性の高さと、適度な捩じりを許容する点にある。この特性は現代車のほとんどに用いられているモノコックボディとはまるで逆の性質。このためラダーフレームはクルマの動力源が“馬”だった時代から用いられている太古の方式であるにもかかわらず、今なおこれに変わるものがないというわけだ。

 

G550ではV型8気筒ツインターボのガソリンエンジンを採用、最高出力422ps/最大トルク610Nmを発揮する

 

さてメルセデスGクラスである。現行モデルは2018年、40年近い歴史の中で実質的に初となるフルモデルチェンジが行われ、新型になっている。ドアハンドルやスペアタイヤカバーといった数点のパーツを除き完全刷新されているのだが、変える必要がないと思われていたGクラスを、今回メルセデスがわざわざ変えた理由は、今のタイミングであれば今後につながるアップデートが入れられる、と踏んだからだろう。具体的にはフロントの足まわりが古典的なリジッドアクスルから独立懸架に変わり、インフォテイメントシステムに関しても、他の最新メルセデスと同様の横長2枚モニターに置き換わっている。

 

この2つのアップデートが何を可能にするのか? 完全自動運転まで見据えたディスタンスパイロット・ディストロニック(アダプティブACC)が最大の狙いだろう。フレームやボディを刷新することで、PHEV化に備えたバッテリー置き場の確保なども当然していると思われる。『銀河鉄道999』の星野鉄郎は永遠の命を手にする直前でやめてしまうわけだが、Gクラスは迷うことなく永遠(この先とうぶんの間)の命を手に入れたというわけである。

 

フルモデルチェンジによってフロントサスペンションはダブルウィッシュボーンに変更した他、安全装備の充実もトピック

 

オフでも流儀は変わらない

 

角ばったボディをワックスでピカピカに磨き上げ、紀伊國屋へ行ったり、幼稚舎に通う子供の送り迎えに使っていても新型Gクラスの永遠の未来・・・はもちろんのこと、秘めたる高性能のほんの触りすら理解できるはずがない。ラダーフレームは捩ってナンボなのだ! ということで今回我々は、山梨県は早川町のオフロードコースにG550を持ち込んでみた。

 

筆者は新型Gクラスのオンロードにおける走りはすでに体感済みである。ありきたりな表現で申し訳ないが、他のメルセデスと同様にビシッと直進し、転舵に素直に追従するようになった。以前は高速道路でも絶えず右に左に当て舵を繰り返し、なかなかストレスフルだったのだが、これが見事に解消されている。オンは完璧、じゃあオフは? というわけである。

 

Gクラスは故郷のオーストリア(そう、このクルマは伝統的にオーストリアのマグナ・シュタイア社が製造している)にあるシェークル山近辺のワイルドな環境で育っている。だから今回のわりとフラットな早川のコースでは “走破不可”なんてあるはずもなく、ギアをLOWモードにするだけで、センターコンソールに備わった3つのデフロック・スイッチに頼ることすらなくズシズシと走り回ることができた。

 

オフロード走行に適したドライブトレインやステアリングの制御を行うGモードを採用。通常の約2倍の駆動力を発生するローレンジも搭載

 

片輪が沼地のようになった場所を走っても、フロントガラスから見える景色が空だけになってしまうほどの急こう配に張り付いても、金庫のようなボディはミシリとも言わない。オフロードに入り込んだGクラスはまるで戦車、タイガーⅠ型の佇まいなのである。

 

長いサスペンションストロークを活かして、あらゆる路面を掴み取り、静々と進んでいく。近年のナンチャッテなSUVはすぐに対角線上のタイヤが大きく持ち上がってしまい、それを空転しないようにブレーキでつまんで何とか脱出する感じだが、やっぱり本物は違う。

 

新型が既にデビューしているが、ランドローバー・ディフェンダーの旧モデルあたりだと、ボディとシャシーがうまい具合に芸術的に捻じれて、軽快な寝技で悪路を進んでいくのだが、Gクラスは立ち技一辺倒(?)、メルセデスの流儀は変わらないのだった。

 

クロスカントリーモデルで重要なスペックとして、アプローチアングル約31度、デパーチャーアングル約30度、ロードクリアランスは約241mmを達成

 

兵器は強いだけでなく安全も大事

 

兵器のようなGクラスで、コンクリートジャングルをゆったりと流して走るのは全く無意味というかお金の無駄遣いのような気もする。もちろん、デフロックとか悪路走破の部分に関しては「ロレックスをケースに入れて眺めているだけ」と揶揄されても仕方がないだろう。4駆だってドライ路面ならほとんどメリットを得られまい。だがしかしGクラスは兵器なので、安全性のアドバンテージは絶大だ。

 

今回のモデルチェンジによって、Gクラスは弱点でもあったアクティブセーフティが大幅に改善されている。一方パッシブセーフティは以前からこの上なく盤石だ。

 

昨今は高齢者の運転ミスやトラックの追突事故のようなニュースが多く飛び交い、パッシブセーフティの部分に注目が集まっている。クルマ系ネットニュースのコメント欄にも「軽に乗るなら普通車の方が安全!」といった、よく考えれば当たり前(!)な書き込みを見かける機会も増えた。だったらフツーの普通車よりメルセデス・ベンツ、どうせならパッシブ王のGクラスまでいっちゃう手はありだと思う。

 

オリジナルのデザインと悪路走破性能を継承しながら、メルセデスらしく最新の電子制御システムを満載。隙のない仕上がりを誇る

 

1600万円は兵器としてはタダみたいな値段だし、自宅の地下に核シェルターを掘るよりはるかに手っ取り早く、周囲に自慢だってできる。それでいて10年以上経っても古さを感じさせず、周囲にも「まだ乗ってんのかよ」と思われない点もGクラスの美点だ。例え懐事情で買い換えられないのだとしても、ボディが傷だらけでも、信念があって乗り続けているのだろうと思われるに違いないのだ。

 

それらGクラスの数えきれないほどのメリットを一手に下支えしているのが、普段は誰の目にも触れることがないラダーフレームである。もしあなたが晴れてGクラスを手に入れたとしたら、たまには車体下も高圧洗浄してあげて、大いに敬意を示すべきである。

 

 

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)

PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

 

 

 

【SPECIFICATIONS】

メルセデス・ベンツG550

ボディサイズ:全長4660 全幅1930 全高1975mm
ホイールベース:2890mm
トレッド:前後1620mm

最低地上高:240mm

車両重量:2450kg

エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
ボア×ストローク:83.0×92.0mm
最高出力:310kW(422ps)/5250-5500rpm
最大トルク:610Nm/2000-4750rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:4WD

ステアリング形式:電動パワーステアリング
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後リジッドアクスル
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後275/55R19

車両本体価格:1623万円(税込)

 

 

【問い合わせ】

メルセデス・コール

TEL 0120-190-610

 

 

【関連リンク】

・メルセデス・ベンツ公式サイト

https://www.mercedes-benz.co.jp/