スマート EQをアジアで初公開! 電気自動車ブランドに完全移行したスマートの“生きる道”

スマートEQフォーツーのフロントスタイル

smart EQ fortwo/forfour

スマート EQ フォーツー/フォーフォー

 

 

原点回帰のポップな雰囲気

 

メルセデス・ベンツ日本は、2019年10月23日に「第46回東京モーターショー」でスマートEQ フォーツー、およびスマート EQ フォーフォーを披露した。

 

スマートがメルセデス・ベンツの電動車向けサブブランド“EQ”ファミリーに加えられたのは2018年のこと。今後スマートの全モデルはBEVに移行すると発表された。今回はあくまで欧州仕様の参考出展ではあったものの、EQの名を冠したアップデート版スマートがアジアで公開されたのはこれが初めて。

 

完全電気自動車ブランドとして歩き始めたスマート。現在はフォーツー、フォーツーカブリオ、フォーフォーの3モデルを展開している

 

ラインナップは2人乗りの「フォーツー」、そのオープントップモデル「フォーツー カブリオ」、4人乗りの「フォーフォー」の3モデル。フォーツー、フォーフォーそれぞれに異なるフロントデザインを採用し、フロントグリルはボディ同色とすることで初代のもっていたカジュアルでポップな雰囲気を生んでいる。

 

ヘッドライトにはLEDをオプション設定し、リヤコンビネーションライトにもLEDを採用した。内装ではセンターコンソールを一新。側面の隠し引き出しに代えて、セレクターレバー前方に大きな収納スペースを設けた。8インチタッチスクリーンを用いるインフォテインメント機能やバッテリーの充電状態などを遠隔から確認できるスマートフォン連動アプリなど、デジタル面を最新にアップデートしている。

 

スマートEQのインストゥルメントパネル

8インチタッチディスプレイを搭載し、最新のインフォテインメント系にも対応。セレクターレバー前方にはスマートフォンなどを収納できるスペースを増設した

 

航続距離は約150km

 

スマート EQにはダイムラーの完全子会社アキュモーティブ製のリチウムイオンバッテリーを搭載。3つのモジュールと96個のセルという構成で、容量は17.6kWh。後続距離はWLTPモードで最長159kmという(フォーツーの場合。カブリオは最長157km、フォーフォーは最長153km)。最高速度は130km/h。

 

スマートEQのサイドビュー

フォーツーの航続距離は最大159km。これはドイツのドライバーの1日平均走行距離の数倍にあたる数字だという

 

リヤに搭載した同期モーターの最高出力は82hp、最大トルクが160Nm。コンパクトな車体ゆえ、フォーツー クーペの0-60km加速は4.8秒と機敏な加速を見せる。

 

オプション設定している22kW車載充電器(急速充電対応)は、三相充電が可能であれば、バッテリー状態10%から80%まで40分以下で充電できる。

 

スマートEQフォーツー・カブリオのリヤビュー

レーダーを活用した回生ブレーキも搭載。先行車がある場合は自動的に減速するなど、コースティングとブレーキングの切り替えを調整し、可能な限り多くのエネルギーを電気に変換する

 

アプリと連動して広げるクルマの世界

 

スマート EQの最大の特徴は、アプリの積極的な活用だろう。たとえば駐車した場所の確認や施錠・解錠のチェックなど、ベーシックなものはもちろん、プライベートシェアリングを簡単にするready to share(スマートフォンを使って友人の所有するスマートのドアロック解除できる)や、ready to pack(買い物中のユーザーにすべての荷物が積めるか、どのように積めばいいかを知らせる)などのユニークなプログラムもある。

 

スマートEQのアプリ使用イメージ

アプリと連動することで、たとえばApple Watchでバッテリーの充電状態などをチェックすることも可能

 

ready to shareでは、利用者が無償で利用できる「無料」グループ、利用者に1分ごとの料金を個別に設定できる「有料」グループを設定することが可能。支払い機能の運用は現在ドイツのみで実施しているが、ready to shareのサービス自体はドイツ、フランス、イタリア、スペインの4ヵ国で展開している。

 

スマートEQのアプリ使用イメージ

プライベートシェアリング向けや、荷物の積載についてのティーチング機能など、アプリを通して様々なスマート EQの使い方を提供する

 

時代がスマートに追いついた

 

スマートの歴史はほんの四半世紀だが、道のりは波乱万丈だった。1970年代、ヨーロッパでは都市交通の問題である大気汚染とともに、交通渋滞が深刻化していた。1972年にメルセデス・ベンツのエンジニアであったヨハン・トムフォルではこう発言している。

 

「未来のクルマは既存の概念に疑問を呈し、技術面でラジカルかつ画期的なアイデアを提示するものでなければならない」

 

1980年代初頭には、平均乗車人数1〜2名という小型車の研究が進み、1981年に「NAFA(NAhverkehrsFAhrzeug=輸送車両)」というコンセプトカーが誕生した。全長わずか2.5m、全幅1.5mの近距離用超小型2シーター。これがスマートのルーツといえる。

 

NAFAフロントイメージ

全長わずか2.5m、全幅1.5mの近距離用超小型2シーターのコンセプトカー「NAFA」。スマートやAクラスのルーツ的存在

 

ダイムラー10年越しの構想が、具体性を帯びることになったのは1994年。他業種への参入として自動車に照準を合わせていた時計のスウォッチ・グループ(当時はSMHグループ)が、ダイムラー(当時はダイムラー・ベンツ)と共同出資で合弁会社MCC(マイクロ・コンパクト・カー)を発足。スウォッチのようにポップなシティコミューターを目した2人乗りの超小型車が、「スマート」の名前で登場したのが1998年のことだった。

 

スマートBRABUSイメージ

BRABUS仕様や屋根やフロントウインドウ、ドアを持たないクロスブレードなど、様々な特別仕様車を提案してきた

 

2000年には日本での販売を開始、その翌年には車幅を狭めて軽規格に適合させた「スマートK」も登場した。トリディオンセーフティセルと呼ばれる強固なスチール製ボディフレームに樹脂製のパネルを組み合わせた軽量小型の車体を、直列3気筒SOHCターボでぐんぐんひっぱるピープルムーバーは画期的でユニークで新しく、ダイムラーがかねてより研究してきた構想が見事に昇華したように見えた。

 

スマート・ロードスターイメージ

ライトウェイトスポーツを提案した「スマート ロードスター」。いまも根強いファンが少なくない

 

都市交通そのものの概念をスクラッチ&ビルドするための起爆剤となるはずのスマートは、エンスージアストや趣味人に愛された。クルマとしての完成度も高かった。しかし社会がまだ間に合っていなかった。短距離モビリティが共存すべき鉄道やレンタカーとの協力体制は得られず、スウォッチは手を引き、ロードスターや三菱との提携による4人乗りなどを試みるも、販売は伸び悩んだ。そして誰もいなくなった。

 

それでもダイムラーはスマートを見捨てなかった。数は少ないながらもEVを投入し、運転を楽しめるハイパフォーマンスモデルにも挑戦し、小さなアーバンモビリティのあり方を世に問い続けていきた。そしていよいよ、完全なる電気自動車として生まれ変わり、デジタルのチカラを積極的に活用するスマート EQにたどり着いた。

 

スマートEQのリヤカットイメージ

都市型モビリティとして、進むべき道がようやく開けたスマート EQ。CASEやMaasとどのように絡んでいくか、注目の存在となる

 

都市交通を円滑化するためのひとつのツールとしてのモビリティ。スマートが長年提案し続けていたことが、デジタルの進化でようやく実現する。そういう時代がやってきたのかもしれない。