新型フェラーリ「ローマ」発表会の模様をレポート! “甘い生活”と謳うその理由とは

公開日 : 2019/11/17 11:55 最終更新日 : 2020/04/15 18:12

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フェラーリ・ローマ発表会の模様

Ferrari Roma

フェラーリ ローマ

 

 

フェラーリからの誘いは「新しいGTクーペ」のみ

 

その発表会は、まるでミステリーツアーのようだった。

 

行き先はローマ、車種は「新しいGTクーペ」というだけで、それ以上の詳細は明かされないまま、私たちはローマのヴィットリオ・ヴェネト通りに建つウェスティン・エクセルシオール・ホテルまでやってきた。

 

おそらく勘のいい向き、とりわけ映画好きであれば、ここまでの情報でその後の流れがなんとなく予想できたかもしれない。しかし、映画に疎い私には、フェラーリのニューモデルとこのホテルの間にどんな関係があるのか、皆目見当がつかなかった。

 

ポルトフィーノのクーペ版か?

 

もうひとつの手がかりは、この発表会を前にして熱狂的なフェラーリ・ファンの間で噂されていた「ポルトフィーノのクーペ版が登場する」というものだった。なるほど、それであれば「新しいGTクーペ」という情報と完全に符合するが、単なる“クーペ・ポルトフィーノ”であれば申し訳ないがあまり魅力はない。なぜなら、リトラクタブル・ハードトップを持つポルトフィーノは、屋根さえ閉めればフィックスドヘッドクーペと同等の使い方ができたからだ。

 

謎は一向に解消されないまま、発表会当日を迎えた私たちはフェラーリが用意した大型バスに乗り込んでホテルを出発した。

 

フェラーリ・ローマ発表会場の入口

車名も知らされないまま到着した、スタディオ・オリンピコ・ディ・ローマ。1960年に開催されたローマ・オリンピックの会場跡だ。

 

およそ30分走って到着したのは、テヴェレ河添いに建つスタディオ・オリンピコ・ディ・ローマ。つまり、1960年に開催されたローマ・オリンピックの会場跡である。その敷地に、SF90ストラダーレ発表会(あのときはフィオラーノ・サーキットが会場だった)のときと似たような巨大な白いテントが組まれていて、バスを降りた私たちはそのなかに吸い込まれていった。

 

まるでタイムトンネルのように長くて暗いトンネル(いまにして思えば、あれは確かにタイムトンネルだった・・・)の先には真っ黒い壁に銀色のプランシング・ホースが掲げられており、そこを左に曲がるといよいよ発表会場に着いた。

 

フェラーリ・ローマの発表会場

1960年代に見られたローマに住む裕福な人々の暮らしを表現したという会場内。そうした雰囲気の中、メインステージが設けられていた。

 

会場はローマの裕福な人々の暮らしを表現

 

薄暗い会場には、ローマのバールによくある木製のテーブルやイス、そしてソファなどがゆったりと並べられていた。そして会場内にいくつもあるスクリーンに1960年代と思しき白黒の写真が次々と映し出されていく。そのほとんどは、当時のローマの裕福な人々の暮らしぶりを表現したもので、ときおり、フェラーリの運転席に腰掛けた貴婦人の写真も登場する。そこにモータースポーツやF1などの影響は皆無。それよりもずっとリラックスしていて、どこか退廃的な空気が漂っている。端的にいって、これまでのフェラーリの発表会とはまったく異なる発表会場だった。

 

フェラーリ・ローマ発表会のプレゼンテーション

アンベールする前にカプチーノを飲みながらニューモデルのコンセプトを話しはじめた、エンリコ・ガレリア(右)。その隣に座るのは、チーフデザイナーのフラビオ・マンゾーニ(左)。

 

ローマは特別な場所

 

気がつけば、正面ステージの反対側に用意された巨大なバーカウンターの前に、チーフ・マーケティング&コマーシャル・オフィサーのエンリコ・ガリレラが立って挨拶を始めた。長身でハンサムな彼はバーカウンターで出されたカプチーノを手にひとしきり話をすると、まるで映画俳優のように中央の通路をゆったりと歩いていく。その様子を捉えたビデオ映像が会場に用意されたいくつものスクリーンに映し出されていた。

 

「ローマは特別な場所です」とガリレラ。

 

「イタリアのライフスタイルを代表する街で、なにより夢があります。たとえばヴィットリオ・ヴェネト通りには素敵なカフェがあって、そこで一杯のカプチーノを楽しんでもいい。ここで時計の針を1960年代に戻してみましょう。この頃、ドルチェ・ヴィータ(邦題:甘い生活)と呼ばれる映画が公開されました。時代を代表する、人生を楽しむことを描いた映画でした。では、ドルチェ・ヴィータの時代を現代に持ち込むとどうなるのか、私たちは考えてみました。つまり、ヌォーヴァ・ドルチェ・ヴィータ(新しい甘い生活)です」

 

フェラーリ・ローマ発表会のイメージ

会場内に書かれていた“ヌォーヴァ・ドルチェ・ヴィータ(新しい甘い生活)。これがフェラーリの新型車「ローマ」のテーマだという。

 

甘い生活と、毎日使えるフェラーリ

 

彼の話の流れから、ニューモデルのイメージがおぼろげながら伝わってきた。そのクルマは、SF90ストラダーレやF8トリブートのようなスーパースポーツカーではない。モータースポーツをイメージさせる装飾が会場内になかったのは、このためだろう。ガリエラがさらにクルマのコンセプトを説明する。

 

「フェラーリが作るのですから、ファン・トウ・ドライブは必要です。ただし、全体を貫くイメージは、控えめなラグジュアリーです。少し控えめで、特別な日だけでなく、毎日使えるフェラーリ。考えていれば、1960年代のフェラーリにはそういうモデルが少なくありませんでした。そこで私たちは、シンプルでエレガントなデザインのスポーツカーを作ることにしたのです」

 

これがフェラーリのニューモデル「ローマ」のテーマだといって間違いない。フェラーリだからもちろんパフォーマンスは高いが、だからといってそれをひけらかすことなく、家族やパートナーとゆったりとときを過ごすのに最適なクーペ。そのイメージを象徴するものとして彼らは映画“ドルチェ・ヴィータ”を持ち出したのだ。映画通によれば、この物語ではヴィットリオ・ヴェネト通り添いの景色が何度となく映し出され、ウェスティン・エクセルシオール・ホテル内の有名なカフェまで登場するのだという。つまり、私たちの宿泊先も演出の一部だったのだ。

 

フェラーリ・ローマのアンベール

車名が明かされた後、チーフデザイナーのフラビオ・マンゾーニとエンリコ・ガレリアにより、新型車「ローマ」のデザインについて解説が続けられた。

 

クラシカルな美しさをもつ「ローマ」

 

発表会はこの後、ステージ上に流麗なスタイリングのクーペが登場し、その名がローマであることが明かされてクライマックスに達する。ここでチーフデザイナーのフラヴィオ・マンゾーニが現れ、ガリエラとの対話形式でローマのデザインコンセプトが説明された。ただし、彼の言葉を聞くまでもなく、ローマの優雅でどちらかといえばクラシカルな美しさは、誰の目にも明らかだった。シンプルな造形のLEDヘッドライトは薄く水平に伸びていて、個性を主張しすぎない。ヘッドライトの下側には粗い格子模様のフロントグリルが設けられているが、その造形もどこかクラシカルだ。このグリルは上端がいちばん前方に突き出していて下にいくに従って奥に引き込まれる逆スラント形状となっているが、これは1960年代に活躍したF1マシンの156、通称“シャークノーズ”をモチーフにしたものという。

 

フェラーリ・ローマ発表会のプレゼンテーション

シンプルでクラシカルな仕立ては最近のフェラーリでは見られなかったデザイン。一方、テールライトは伝統の丸形4灯ではなく、昨今のニューモデルらしいフィニッシュを見せる。

 

ボディサイドのデザインはさらに印象的だ。キャラクターラインは一切なく、シンプルでなだらかな曲面だけを使ってグラマラスで伸びやかなスタイリングを表現している。ポルトフィーノと違ってエアインテークが省かれているが、これがまたクラシカルな美しさを強調している。

 

テールライトはフェラーリ伝統の丸形4灯ではなく、もっとモダンな角形とされたが、テールエンドの曲面に自然と溶け込んだそのデザインはまたしても控えめで、ローマのエレガントなシェイプを締めくくっている。そのテールエンドを、マンゾーニはコーダトロンかという懐かしい言葉で表現した。

 

フェラーリ・ローマのコクピット

コクピットは、エレガンスとスポーティの融合をテーマにデザインされているのが特徴。ディスプレイや操作系は最新のシステムを採用している。

 

70%は新設計。そして73kgの軽量化

 

ローマのインテリアを「エレガンスとスポーティさが組み合わされており、イタリアのクラフトマンシップが活かされている」とマンゾーニは説明する。特徴的なのは、運転席と助手席が明確に仕切られていることで、強い包まれ感が得られることから“コクーン・エフェクト”と呼ばれる。なお、ドライバー正面のメーターパネルはフルデジタル式で、16インチのディスプレイは視認性を向上させるため湾曲している。これはSF90ストラダーレと共通のものだろう。

 

最後にテクニカル・オフィサーのミハエル・ライタスがステージ上に現れて技術系の説明を加えた。プレゼンテーション後に彼から直接聞いた話も取り混ぜて紹介すれば、基本的なアーキテクチャーはポルトフィーノと共通のフルアルミボディだが、そのうちの70%は新設計とのこと。とりわけアルミ・スペースフレームには独自の溶接プロセスを用いるなどした結果、ポルトフィーノより73kgも軽い1472kgの乾燥重量を達成した。そのいっぽうで、フィックスドクーペとした恩恵もあってボディ剛性は向上。ライタスによれば「正確な記憶ではありませんが、ポルトフィーノに対して曲げ方向で7%、捩り方向で14%向上しているはずです」という。

 

フェラーリ・ローマのエンジンルーム

ポルトフィーノと共通の3.9リッターV8ツインターボを搭載しているものの、カムシャフトや吸気系、ターボの過給圧などを見直すことで、20psのパワーアップを果たしている。

 

V8ツインターボの最高出力は620ps

 

エンジンは基本的にポルトフィーノと共通のV8 3.9リッターターボだが、吸気抵抗の少ないインテークマニフォールド、カム形状の見直しによる吸気バルブのリフト量増大、過給圧の緻密な制御などといったF8トリブートとよく似た改良を施すことでポルトフィーノ+20psの620psを獲得。パワーウェイトレシオはこのクラスでベストの2.37kg/psを実現したという。ちなみに0-100㎞/h加速は3.4秒、最高速度は320km/h以上と発表されている。

 

トランスアクスル方式のギアボックスはこれまでより1速多い8速DCTだが、内部構造はSF90ストラダーレと共通で、ふたつのクラッチは同心円上ではなく直列に並んでレイアウトされる。このためギアボックス単体で6kg軽量なほか、コンパクトなためにより低い位置に搭載され、車両の低重心化に貢献している。

 

フェラーリ・ローマのリヤ周り

一見すると分からないが、リアウインドウの後方にはスポイラーを備えている。100km/hを超えると135度ほど迫り上がり、70km/hを切ると格納される仕組みだ。

 

リアデッキ上に隠されたスポイラー

 

エアロダイナミクスでは可変制御式のリアスポイラーが注目される。通常時はリアウインドウに溶け込んでいるかのように見えるリアデッキ上の黒いフラップは、車速が100㎞/hを越えると135度の角度で起き上がり、70km/hを下回ると格納される。これ以外にも、車両がより大きなダウンフォースが必要と判断した場合には150度まで立ち上がるが、この判断基準はドライビングモード切り替えのマネッティーノによって決まる。具体的にはスポーツ・モードなどではリアスポイラーがより早く立ち上がるそうだ。

 

フェラーリは「ローマを購入するのは新規顧客が中心になる」と予想している。イタリアでの価格はポルトフィーノを10%上回っているが、ギアボックスなどポルトフィーノにない高価なテクノロジーが用いられていることを考えればこれは妥当なプライシングかもしれない。デリバリーは2020年夏前に始まるという。

 

 

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)

 

 

【SPECIFICATIONS】

フェラーリ ローマ

ボディサイズ:全長4656 全幅1974 全高1301mm

ホイールベース:2670mm

乾燥重量:1472kg

 

エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ

総排気量:3855cc

ボア×ストローク:86.5×82mm

最高出力:456kW(620ps)/5750〜7500rpm

最大トルク:760Nm/3000〜5750rpm

最高許容範囲回転数:7500rpm

 

最高速度:320km/h

0→100km/h加速:3.4秒

0→200km/h加速:9.3秒