6輪のF1マシン「ティレル P34」が鈴鹿サーキットを激走【鈴鹿サウンド・オブ・エンジン 2019 Part.2】

ティレルP34の走行シーン1

Tyrrell P34 × Pierluigi Martini

ティレル P34 × ピエルルイジ・マルティニ

 

 

SSOE 2019最大のトピック、6輪F1「ティレルP34」が来日

 

鈴鹿サウンド・オブ・エンジン(SSOE)2019の最大の目玉が、1977年型ティレル P34のデモランだ。1976年のモンツァでTカーとして登録され、77年にロニー・ピーターソンのレースカーとして南アフリカGPからドイツGPまで活躍。さらに同年の日本GPでもピーターソンのTカーとしてプラクティスのみ出走したという履歴をもち、唯一無二の6輪F1マシンとして未だに高い人気を誇る。

 

ティレルP34に乗車するピエルルイジ・マルティニ

唯一無二の6輪F1マシンとして異彩を放つティレルP34がSSOEに参加するため来日。オーナーは1980〜90年代にミナルディF1で活躍したピエルルイジ・マルティニで、自らステアリングを握り鈴鹿サーキットを走行した

 

この個体のオーナー兼ドライバーは、198090年代にミナルディF1のエースドライバーを務め、1999年にはBMW V12 LMRでル・マン24時間を制したピエルルイジ・マルティニ。15歳の時にモナコGPで見て以来、憧れだったというP34を彼が手に入れたのは2017年のこと。以来P34熱は加速する一方で、昨年にはP34/2も入手。その知識、情報量、情熱共に世界一のP34コレクターと呼ぶに相応しい人物である。

 

日本のファンの前で走れるならという理由で実現

 

今回のデモランは、鈴鹿からのオファーに対し「現役時代から世界で一番好きなサーキットを、P34が好きで熱心な日本のファンの前で走れるなら是非」とマルティニが快諾し、実現したもの。完璧に整備されたP34/5と、そのメンテナンスを手がける元ミナルディのF1メカニックたちを引き連れての来日となった。

 

ところがだ。金曜のプラクティスで走ろうとエンジンを始動したところ、コスワースDFVのメタリングユニットからガソリン漏れが発生。走行不能に陥ってしまったのだ!

 

ティレルP34の修理シーン

搭載するフォードDVFエンジンがガソリン漏れを起こし走行不能になったティレルP34。その修理をハナシマレーシングの花島氏が手掛けた

 

そこで救いの手を差し伸べたのが、ヒストリックF1で有名な久保田克昭のマシンのメンテナンスを手がけ、DFVに造詣の深いハナシマレーシングの代表、花島広樹。当初は懐疑的だったイタリア人も、すぐに原因を突き止め、わざわざ静岡のガレージまでパーツを取りに戻って修理する花島の姿に態度を改め協力的に。

 

そして土曜の昼に再びDFVが咆哮をあげるとピット内は拍手と歓声に包まれた。こうした光景に出くわすのもまた、ヒストリックカーイベントの醍醐味といえる。

 

残念ながら日曜日に再びガソリン漏れが発生(ヨーロッパと日本のガソリンの質の差が原因らしい)したため、走行は土曜日のみとなってしまったが、F1パイロットならではのスムーズで鋭いドライビングで鈴鹿の東コースを周回し、集まった多くのファンを唸らせた。

 

ティレルP34の走行シーン3

1976年と77年にF1GPを戦ったティレルP34は、空気抵抗を低減するためにタイヤを小径化。トレードオフとなる接地性能と制動性能を補うための6輪化を実施した。そのユニークな姿は根強い人気をもつ

 

P34の素直なマシン! ドライブは簡単

 

P34のドライブは簡単だ。とても素直なマシンなんだ」とマルティニは語る。マニアの方なら、1977年後期仕様なのにフロントのトレッドが狭いことに気付かれるかもしれないが、実はこれはP34の生みの親である故デレック・ガードナーが、現代のエイヴォンタイヤが理想のグリップを発揮(当時の不調の要因のひとつが開発の止まったグッドイヤー・タイヤだった)しているのを受け、本来P34のあるべき姿にセッティングし直したものだという。

 

タミヤ模型所蔵のティレルP34とピエルルイジ・マルティニ

SSOEにはタミヤ模型が所有しているティレルP34が展示されたが、ピエルルイジ・マルティニはこの個体に会うのを楽しみにしていたという。自身が所有するP34のレストアの参考にと大量に撮影していたのが印象的

 

会場には、今回のP34の来日に合わせ、タミヤ模型が所蔵しているP34の特別展示も行われたのだが、「今回の来日の楽しみのひとつ」だったというマルティニは、実車を前に写真を撮りまくって大興奮。なんでも所有しているP34/2をオリジナルの1976年仕様に戻す計画があるのだそうで、メカニックたちと各部の寸法を測ったり、ディテールを議論したり、なかなかマシンから離れようとしなかったのが印象的だった。

 

 

REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA

PHOTO/モビリティランド/淺井浩次(Koji ASAI)/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA