感動のレイニー復活とブーツェンの激走【鈴鹿サウンド・オブ・エンジン 2019 Part.3】
公開日 : 2019/12/01 06:30 最終更新日 : 2019/12/01 06:30
Wayne Rainey & Thierry Marc Boutsen
ウェイン・レイニー & ティエリー・ブーツェン
不世出のライダー、レイニーが26年ぶりに鈴鹿を走る
今年の鈴鹿サウンド・オブ・エンジンで忘れられないシーンがある。それが「WGP US Legends Wayne is Back」と題されたプログラムだ。
ウェイン・レイニーといえば、ヤマハ・チームのエースとして1990年から92年にかけて3年連続でWGP 500ccクラスのチャンピオンを獲得。しかしながら1993年のイタリアGPでレース中に転倒。第六頚椎損傷で下半身付随となってしまった伝説のチャンピオンである。
そのレイニーが、なんと26年ぶりに鈴鹿サーキットでライディングを披露したのだ!

「WGP US Legends Wayne is Back」と題されたプログラムでは、3年連続でWGP500チャンピオンを獲得したウェイン・レイニーが、ハンディキャップがあってもライディングできるように改造したヤマハのYZF-R1で鈴鹿サーキットを走った
ケニー・ロバーツとエディー・ローソンも登場!
きっかけとなったのは、今年の鈴鹿8耐で22年ぶりにライダーとして青木琢磨が復活を遂げたことだったという。その成功を受け鈴鹿サーキット側からレイニーに打診をしたところ、快諾。青木の主宰するSSP(サイドスタンドプロジェクト)の協力を受け、足が不自由でも乗れるように改造を受けたヤマハYZF-R1(しかも当時を彷彿とさせるマールボロ・カラーだ!)が用意されることとなった。
あわせて会場には、1978、79、80年のWGP500ccクラス・チャンピオン、ケニー・ロバーツと、1984、86、88、89年のWGP500ccクラス・チャンピオンであるエディ・ローソンも登場。「また3人で走れるのは嬉しい」とレイニーの復活に華を添えた。
「今回のような機会を与えてもらって本当に感謝している。息子は今年26歳。私が引退した時はまだ生後10ヵ月だったから、彼は初めて私がバイクに乗る姿を見るんだ」と語るレイニー。その声が少し震えているような気がしたが、周りのサポートを受け彼の乗るYZF-R1がゆっくりと走り出した瞬間は、見ているこちらも思わずウルっとくるほど感動的だった。

写真左からケニー・ロバーツ、エディ・ローソン、そしてサーキットでのアクシデントにより車椅子での生活を余儀なくされているウェイン・レイニーと青木拓磨。いずれ劣らぬレジェンドライダーたちがSSOEに集った
そして少しずつ、感触を確かめるようにペースを上げていくレイニーに、ロバーツとローソンも合流し3人が並んでコースを走ると、スタンドからは割れんばかりの拍手が巻き起こった。それはまたWGPの歴史に新たな1ページが刻まれた記念すべき瞬間でもあった。
往年のライダーが往年のマシンで走行を披露するのはヒストリック・イベントの醍醐味だが、こうした時空を超えたドラマもまた、ヒストリック・イベントに相応しい試みであると感じられた。
元F1ドライバーのブーツェンはスーパーラップを披露
そんな感動の復活劇と共に会場を沸かせたのが、ゲストとして来日した元F1ドライバのティエリー・ブーツェンだ。
1981、82年に全日本F2で、さらに1987年から92年までF1で鈴鹿サーキットを走った経験を持つブーツェンは、自身も1988年のオフシーズン・テストで乗ったウィリアムズFW12そのものをはじめ、元チーム・タイサンのポルシェ962CやF3000マシンのローラT93/50などをドライブした。
あまりヒストリックカー・イベントに顔を出すことのないブーツェンだが、現役時代から定評のあったスムーズで的確なドライビング・センスはまったく衰えておらず、日曜日のグループCデモレースではポルシェ962Cで1分59秒010を叩き出すスーパーラップを披露。
本人は「まだ60%の走り。本気を出せば55秒は確実」と余裕を見せていたが、ラップ毎にタイムを更新していく気迫溢れた走りにグランドスタンドは大いに沸き、スタンディングオベーションがおこるほどだった。
このように、レース・プログラム以外でも多くの話題やドラマに溢れていたのも今年の鈴鹿サウンド・オブ・エンジンの特徴といえるだろう。
REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
PHOTO/モビリティランド/淺井浩次(Koji ASAI)/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
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