本邦初のディーゼルPHEV「メルセデス・ベンツ E 350 de」に乗って渡辺慎太郎が感心した理由

メルセデス・ベンツ E 350 de走行シーン。

Mercedes-Benz E 350 de

メルセデス・ベンツ E 350 de

 

 

初代のW124から5代目W210へ

 

2016年にデビューした現行Eクラスのコードネームは“W213”。メルセデスにちょっと詳しい人は「イチニーヨンはさあ・・・」とか「ニーマルイチってやっぱり・・・」など、よくコードネームを口にする。この業界に入ったばかりで右も左も分からない若造の頃は、このコードネームを耳にする度に「かっこつけちゃって」と冷ややかに思っていたけれど、やがて相手もコードネームを知っている場合は実に話が早いことに気付く。

 

例えば「昔のEクラスってよかったですよね」と言われても、それがW123なのかW124なのかW210なのか、いつの時代のどのモデルを指しているのか特定できないからだ。「昔のEクラスってよかったですよね」「え、どれ? いつの?」「いや、あのライトが四角の・・・」「123? 124?」「えっといまでもワゴンなんかも見かける・・・」「ああ124ね、はいはいあれは名車です」となるところが、「W124ってよかったですよね」「あれは名車だからね」で済むわけだ。

 

ただこれは、言う方も聞く方もお互いにコードネームが正確に頭に入っていないと成立せず、うろ覚えだったりするとむしろもっとややこしくなったりする。「W201はイマイチでしたよね」「201? なんで??」「だってコストカットの跡がそこら中に見えたじゃないですか」「ああ、あれね。あれは201じゃなくて210」「W210? そうでしたっけ?」「W201は190だから。名車だから」となる。

 

メルセデス・ベンツ E 350 deのフロントスタイル。

メルセデス・ベンツEクラスのラインナップに加わったディーゼル・プラグインハイブリッドモデル、E 350 de。これによりEクラスは現在6種類のパワートレインを展開する。

 

現行Eクラス最大の特徴は6種のパワートレイン

 

“Eクラス”と正式に呼ばれるようになったのはW124が最初で、その後“最善か無か”から一転してコストを意識して作られた丸目のW210、バイ・ワイヤーのブレーキを採用したもののトラブル続きでそれを途中で廃止したW211、ヘッドライトやリヤフェンダーなどデザイン不評が相次いだ結果に直したW212、そして現在のW213が“Eクラス”として5代目を襲名している。これまでのEクラスと比べて、W213のもっとも特徴的な点を挙げるとするならば、それはおそらくパワートレインではないかと思う。

 

AMGを除くと、現行EクラスにはBSGを搭載するE 200やディーゼルのE 220 d、ガソリンのE 300とE 450、そしてハイブリッドのE 350 eとE 350 deの計6種類のパワートレインが用意されている。このうち、6気筒なのはE 450のV6のみで、あとはすべて4気筒+ターボ。E 200に至っては、排気量わずか1.5リッターである。Eクラスといえば、AMGではなくても6気筒や8気筒が当たり前のように用意されていた時代を思えば、4気筒がメインで2.0リッター以下まで揃える現状のラインナップには少し感慨深いものがある。

 

あちこちでロケをしていると、地元の方が声を掛けてくれることがあって、よく聞かれるのは「これ何cc?」「エンジンは何気筒?」という質問だ。高級車=排気量3.0リッター以上で6気筒以上という方程式がいまだに残っているようで、「1.5リッターです」「4気筒なんですよ」なんて答えると、「え??」と決まって動揺と落胆の表情を浮かべる。期待を裏切ってしまった背徳感から「すいません」となんだかこっちが申し訳ない気持ちになってしまう。

 

メルセデス・ベンツ E 350 de走行シーン。

ディーゼルエンジンとプラグインを組み合わせたハイブリッドモデルは、化石燃料をパワートレインに用いるモビリティではもっとも効率が良いシステムのひとつ。

 

トルクはAMGのE 63に迫る700Nm

 

6種類のパワートレインのうち、350 deは2019年10月末に日本仕様として上陸したばかりのモデルで、日本初のクリーンディーゼル・プラグインハイブリッド乗用車である。ハイブリッドはもはやちっとも珍しくなくなってしまったけれど、そのほとんどがガソリンエンジンとモーターを組み合わせたもの。ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせ、充電も可能なPHEVとしたところが「日本初」を宣言する由来である。

 

“OM654型”ディーゼルエンジンは220 dが搭載するユニットと基本的には同一で、最高出力194ps/最大トルク400Nmのパワースペックも同値である。両車とも、これに9Gトロニック(9速AT)が組み合わされているが、350 deは9Gトロニックのトルクコンバータ部分にモーターを組み込み、エンジン側にクラッチを設けている。こうすることで、エンジンの駆動力をサポートするだけでなく、クラッチを切ってモーターのみの駆動力で走るEVモードを可能とした。

 

システム総合の最高出力は306ps、最大トルクは700Nmとなり、最大トルクはAMGのE 63(750Nm)に迫る数値を実現している。リチウムイオンバッテリーは13.5kWhで、6kW(30A)の交流普通充電器にのみ対応する。EVモードでの最大航続距離は約50km。ラゲッジルーム下にバッテリーを置くため、荷室容量は540リットルから370リットルへと少なくなってしまった。

 

チャデモなどの急速充電器が使えないので、自宅に交流普通充電器を設置しないと事実上PHEVの恩恵は受けられない。となると、現実的には自宅に駐車場があって電源が引き込める環境と充電器設置工事などが必要になる。現在、メルセデス・ベンツは充電用ウォールユニットの無償提供と設置工事費の10万円サポートというキャンペーンを展開中で、これはPHEVのみならずEQCの販売促進も見据えている。メルセデス・ベンツは日本でも、電動車の普及にかなり積極的な姿勢が窺える。

 

メルセデス・ベンツ E 350 deのメーター。

E 350 deはメルセデス・ベンツの未来に向けた新たなブランドとして展開するEQファミリーの一員。ハイブリッド×スポーツモード、ハイブリッド×スポーツプラスモードではモーターによるブーストが加わり、途切れることのない加速感を味わえる。

 

きめ細やかな“モード”設定

 

試乗車は「E 350 deアヴァンギャルド・スポーツ」で、オプションは“エクスクルーシブパッケージ”(ブルメスター・サラウンドシステム/シートヒーター/ヘッドアップディスプレイ他)のみを装着していた。タイヤ&ホイールは18インチが標準となる。車両本体価格は875万円、オプション他を含んだ合計金額は937万円4000円也。ちなみにE 350 e/E 350 deのPHEVモデルはセダンのみで、ワゴンに設定はない。

 

試乗会スタッフがきちんと充電してくれていたおかげで、走り出してからしばらくはEVモードでの走行となった。E 350 deには通常のドライブモードに加えて、ハイブリッドにも4つのモードが備わっている。

 

ドライブモードはスポーツプラス/スポーツ/コンフォート/エコの4種類で、スポーツプラスではモーターによるアシストが最大、スポーツではモーターアシストが増大し、この2モードはエンジンが常時始動する。コンフォートはモーターアシストとエネルギー回生を最適化し、130km/h以下ではEV走行を優先、そしてエコではエネルギー回生よりもコースティング(惰走)を優先し、160km/h以下ではEV走行を優先する。

 

加えて、ハイブリッド機構ではベースとなる“ハイブリッド”以外に、モーターのみで走行する“Eモード”、バッテリー残量を温存する“Eセーブ”、バッテリーへの充電を優先する“チャージ”の4種類のモード切り替えが可能。“ハイブリッド”以外は、EVしか走行できないエリアへの進入に備えるモードであり、日本なら“ハイブリッド”をデフォルトにしておけばいいだろう。

 

メルセデス・ベンツ E 350 de走行シーン。

システム総合では最高出力225kW(306ps)/最大トルク700Nmを計上。13.5kWhの大容量リチウムイオン電池を搭載し、EV時の航続可能距離は約50kmに及ぶ。

 

モーターとディーゼルの見事な調和

 

モーターだけでも122ps/440Nmの出力とトルクがあるから、力不足だと感じるシーンはほとんどないし、足りない時にはいつの間にかエンジンが始動している。モーターからエンジン単体、あるいはモーターとエンジンの併用など、ふたつの駆動源のやりとりはとてもスムーズで、パワーデリバリーにムラができたりレスポンスが悪いということも皆無だった。右足の動きを逃さず、期待通りの反応と加速を繰り返すから、ストレスフリーのドライブができる。

 

さすがのメルセデスもHVやPHEV導入直後は、エンジンとモーターの制御にやや手こずっていたようで、ここまでスムーズではなかったと記憶している。これなら、日本車のハイブリッドから乗り換えても違和感は覚えないだろう。ディーゼルエンジンゆえに、静粛性の高いモーター駆動からエンジンが始動した時に音や振動が目立つのではないかと懸念したけれど、これもほとんど気にならないレベルだった。

 

E 350 de/E 350 eには、“インテリジェントアクセルペダル”なるものが装備されている。アクセルペダルに仕掛けがあって、ふたつの機能を有している。ハイブリッドモードでEV走行している時、「これ以上アクセルを踏み込んだらエンジンが始動しますよ」というポイントでペダルが少し重くなってドライバーへ伝えてくれる。これがひとつ目。

 

もうひとつは、ディストロニックを作動させていなくても、先行車両との車間距離や速度差から危険と判断した場合にペダルに「コンコン」とノックパルスを送ってドライバーに注意喚起するもの。「無駄に燃料を消費しない」「不要な加速や危険な走行はしない」と、クルマに叱られるわけである。ドライバーを100%信用していないところは、メルセデスは昔から変わらない。

 

メルセデス・ベンツ E 350 deと渡辺慎太郎氏。

「W213型Eクラスの完成度は円熟の域に達している」と評価する渡辺慎太郎氏。これだけよくできているのにCクラスとSクラスに挟まれてその存在意義が揺らいでいると語る。

 

CクラスとSクラスに挟まれて問われる存在意義

 

E 350 deのパワートレインの性能や制御に関しては総じて完成度が高く、でもそれは最近のメルセデスの動向や傾向からすればある程度想定内ではあったのだけれど、久しぶりにEクラスに乗ったからなのか、乗り心地がさらによくなったように感じられた。もちろんリチウムイオンバッテリーを搭載し、2080kg(車検証記載値)もある車両重量は乗り心地にいい影響を及ぼしているだろうけれど、サスペンションがよく動いていて、路面からの入力をばね上に伝える前にうまく吸収している。何よりE 350 deには電子制御式ダンパーが付いておらず、コンベンショナルなばねとダンパーのセットでここまでの乗り心地を提供できるとはと感心した次第。例によって知らぬ間に熟成が重ねられているようだ。

 

今回はPHEVのEクラスのみを試乗したが、この分だとW213は全体的に円熟の域に入ってきたのだろう。乗ると決して悪くなくむしろいいのに、最近ではCクラスのほうが販売台数を伸ばしているという。“Eクラス”といえばメルセデスの核となるモデルだったが、どうやらその役はCクラスに奪われつつある。理由のひとつとして考えられるのはボディサイズの拡大化だ。自分はいま、W124のクーペを所有しているけれど、全長も全幅も現行のCクラスより小さい。Eクラスに求められていたボディサイズや居住空間といった物理的要求がCクラスで満たされるようになってしまったのである。

 

こうなってくると大きくなったCクラスと、大きくても誰も文句を言わないSクラスの間に挟まれたEクラスの存在がやや中途半端に思えてくる。価格にしても、廉価モデルのE 200アヴァンギャルドでさえ734万円というたいそう高価な商品になってしまった。さらに最近、Cクラスより下の(=小さい)Aクラスセダンなんてものまで追加される始末である。Aクラスセダンがかつての190 Eのポジションだとすると、CクラスはEクラスでSクラスはSクラスのままだから、現行Eクラスの行き場がなくなってしまうのではないかと危惧してしまうのである。

 

いまのEクラスに足りないものがあるとすれば、それは圧倒的な商品力と確たる存在意義だけかもしれない。

 

 

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

 

 

【SPECIFICATIONS】

メルセデス・ベンツ E 350 de AVANTGARDE Sport

ボディサイズ:全長4923 全幅1852 全高1475mm

ホイールベース:2939mm

車両重量:未公表

エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ

総排気量:1950cc

ボア×ストローク:82.0×92.3mm

最高出力:143kW(194ps)/3800rpm

最大トルク:400Nm/1600-2800rpm

システム出力:225kW/700Nm

トランスミッション:9速AT

サスペンション:前4リンク 後マルチリンク

駆動方式:RWD

タイヤサイズ:前245/45R18 後275/40R18

車両本体価格(税込):875万円

 

 

【問い合わせ先】

メルセデス・コール

TEL 0120-190-610

 

 

【関連リンク】

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https://www.mercedes-benz.co.jp/