ドリフト王者の川畑真人が世界一長い耐久レース「サンダーヒル25時間レース」に挑戦!【PR】
公開日 : 2019/12/26 14:55 最終更新日 : 2019/12/26 14:55
「チーム トーヨータイヤ ドリフト」の川畑真人が雨中で激走!
ル・マンやニュルブルクリンクなど世界に冠たる24時間耐久レースよりも1時間長く、「世界最長」を謳うのがサンダーヒル25時間レースだ。
その舞台となるのは、サンフランシスコから北へ約250km、カリフォルニア州のウィローズという小さな町の外れにあるサンダーヒルレースウェイパーク。1周約3マイル(4.8km)なのだが、まるでローラーコースターのような激しい起伏と逆バンクがついたコーナーが多いのが特徴だ。
2019年のサンダーヒル25時間には、日本人ドライバーとして唯一、川畑真人が参戦を果たした。川畑は「チーム トーヨータイヤ ドリフト」の一員であり、D1グランプリシリーズで数々の王座獲得経験を誇るドライバーだ。日本を代表するドリフト巧者が、耐久レースでどんな走りを見せてくれるのだろうか。
アウディR8 LMS GT4で目指すはクラス優勝
川畑が加入するのは「Flying Lizard Motorsports(フライングリザード・モータースポーツ)」という、カリフォルニア州ソノマ郡に本拠を置くレーシングチームだ。アメリカン・ル・マン・シリーズではポルシェからワークスサポート待遇を受け、幾度もクラス優勝を獲得した耐久レースのスペシャリストである。
フライングリザードは、2015年からはトーヨータイヤとパートナーシップ契約を結ぶと同時に、サンダーヒル25時間への参戦を開始。LMP2マシンも混走するレースにおいて、ポルシェ 911 RSRで4年連続の総合優勝を果たしているのだから、そのチーム力の高さは推して知るべしだ。
実は川畑は、サンダーヒル25時間は2回目の参戦となる。2018年、川畑は別のチームで日産GT-Rをドライブした。本格的な耐久レースに挑戦するのも初めて、そしてサンダーヒルレースウェイを走るのも初めてだったにも関わらず、決勝レースでは安定した走りでチームに貢献。高い評価を与えたチームの首脳スタッフからの推薦で、強豪のフライングリザードからの今参戦につながったという経緯がある。

2007年、2013年、2015年にD1グランプリのシリーズ王者を獲得。2017年には初めて開催されたFIA認定の世界大会「IDC(インターナショナル・ドリフティング・カップ)」で総合優勝を果たした。
「2018年は、レースに出ないかと声をかけられた時は期待と不安が半々でした。でも2019年はぜひやってみたい!と思いました」と語る川畑。
2019年、フライングリザードはアウディ R8 LMS GT4で「GTチャレンジ」クラスの制覇を目指す。この「GTチャレンジ」クラスはGT3もしくはGT4相当のマシンが対象で、タイヤはトーヨータイヤのワンメイクとなり、プロクセスRRという日本では未発売のコンペティションタイヤが指定される。
なお、トーヨータイヤはこのサンダーヒル25時間のオフィシャルパートナーも務めている。今回のレースでは45台中、22台がトーヨータイヤを履いたのだが、彼らのために大きなテントを構え、タイヤの組み換えやバランス取りなどのサービスを行なっていた。プロフェッショナルだけでなく、グラスルーツのスポーツをサポートするトーヨータイヤにとって、プロからアマチュアまで幅広いドライバーが参加しているサンダーヒル25時間は格好のレースとなっているようだ。
川畑は木曜日にサンダーヒルレースウェイに入りチームと合流した。念入りにシート合わせを終えてクルーからコクピッドドリルを受けた後、夕方から1回目の練習走行に臨む。「R8はトーヨータイヤのCM撮影で少し転がしたことがあるだけ」という川畑。GT4マシンは初ドライブとなるため慎重にマシンの習熟に努める。

R8は「フロントの入りがいい」と川畑。2018年にドライブしたGT-Rニスモよりも好印象だ。
「R8は変な癖がなくて、とても乗りやすい」とマシンとの相性も良いようで、チームメイトのベストが1分56秒台だったのに対して、川畑は1分58秒~2分00秒で安定して走行を重ねることができた。まずは上々の滑り出しだ。

金曜日は、夕方から雨が降り出しウェットコンディションでの走行となった。
翌金曜日は2回目の練習走行と予選が行われた。夜間走行中に雨が降りはじめる場面もあったものの、川畑は危なげのない走りでセッションを乗り切った。ドリフトのように意図してテールをスライドさせることはないが、滑りやすい路面でのコントロール技術の高さはフィールドの異なる耐久レースでも大きな武器となっているようだ。
ドライからウェットに目まぐるしくコンディションが変化した予選においてフライングリザードは2分11秒425をマークし、「GTチャレンジ」クラスの首位と総合6番手を獲得した。

予選で最速タイムを叩き出したローラB12/80。
総合首位に立ったのはLMP2クラスのローラB12/80で、タイムは1分59秒406。リジェJS-P3といったプロトタイプカーやラディカルSR3といったマシンが名前を連ねる上位クラスとはタイム差が大きく、R8で総合優勝を狙うのは難しい。しかし、BMW M4といった「GTチャレンジ」クラスのライバルに負けるわけにはいかない。川畑も「2019年の目標はクラス優勝」と語るが、クラス2位のBMW M4のタイムは2分13秒975と実力は拮抗しており、油断はできない。
目まぐるしく変わる天候がドライバーに牙を剝く
25時間レースの決勝は、土曜日11時にスタートし、日曜日12時にゴールというスケジュールで争われる。天気予報によると土曜日の昼から夜にかけて雨が降るという。その予報どおり、グリッドにマシンが並べられる頃にはサーキットを覆った鉛色の空から雨粒がこぼれ出し、アスファルトを濡らし始めた。
ウェットコンディションの中、フォーメーションラップがスタート。45台の隊列を先導していたセーフティーカーがピットに入り、25時間の長き戦いの幕は切って落とされた。川畑選手は5人のドライバーを擁するフライングリザードにおいて5番目の走行を担当する。1スティント約1時間の走行を2回ずつ、が各ドライバーに課せられたノルマだ。
スタート後、しばらくして天候は回復。みるみるうちに路面は乾いていき、ドライコンディションでのレースが続く。
クラス首位をキープしていたフライングリザードだが、第4ドライバーの走行中、フロントブレーキからバイブレーションが発生。ルーティーンのピットインの際、フロントブレーキディスクを交換したため、順位を一つ下げてしまった。しかしまだレースは序盤戦。勝負の行方はわからない。
そしてスタートから9時間が経過して日がとっぷりと暮れた頃、いよいよ川畑選手の出番が回ってきた。

5番手のドライバーとしてマシンに乗り込む川畑。
クラス最速の好走を見せるも、まさかのアクシデント発生
一度は止んだ雨が再び降り出し、コース上にはスピンするマシンがそこかしこに出始める難しいコンディション。そんな中、川畑は「GTチャレンジ」クラスのライバルであるBMW M4よりも10秒速いタイムを叩き出すなど、素晴らしいドライビングを披露した。ときには上位クラスを脅かすラップタイムを刻みながら淡々と周回を重ねていく。このままいけば、再びクラス首位に復帰できそうだ。
1スティント目を走り終えた川畑はガスチャージのためのピットインを行い、2スティント目へ。そんなとき、まさかのアクシデント発生を告げる無線がピットに飛び込んできた。川畑がホームストレートの半ばで突然ブレーキングした前走車を避け切れず、左フロントをヒットさせてしまったのだ。

急ブレーキをかけた2台のマシンに行き場を塞がれ、接触してしまった川畑のR8。レッカー車に牽引してもらいコースに復帰した後、自走でピットへ戻った。
なんとか自走してピットに戻ってきたものの、サスペンションのダメージは見た目以上に大きく応急措置は不可能だった。チームはレースの続行を断念。スタートから約10時間、225周で川畑の挑戦は幕を閉じることとなってしまった。

左フロントのサスペンションを破損。ピットで修理を施すにはダメージが大きすぎた。
川畑の走行中、ピットに中継されていた車載映像では、時折カウンターステアをあてながら雨で滑りやすくなっている路面と格闘する川畑の姿が捉えられていた。しかし、決して無理をしていたわけではないという。
「あくまでも自分のコントロールできる範囲で走っていました。耐久レースですから一番大事なのは次のドライバーにたすきを渡すこと。それができなかったのがとにかく残念ですし、チームに申し訳ないです」と川畑は肩を落とす。
チームからは労いの握手。誓うは2020年のリベンジ
「チームプレー」を掲げていた川畑にとって、不慮のアクシデントとはいえ自身のラップでレースが終わってしまったのは到底納得できることではない。しかしチームメイトは川畑を責めるどころか「素晴らしい走りをしていたよ。レースだからこういうこともある。また2020年も彼の走りを見たいね」と川畑を労った。それだけ川畑の雨中の走りは見事だった。
日曜日、12時。雨は夜のうちに上がり、サンダーヒルの丘の上には青空が広がる。眩しく照りつける太陽の下、チェッカーフラッグが振り下ろされた。ピットロードで祝福するスタッフや観客に応えながら、ゴールラインを駆け抜けるマシンたち。そこに川畑の姿はない。
しかし今回の経験は決して無駄にはならないはずだ。「気が早いかもしれませんが、絶対リベンジしたいですね」と、川畑の目はすでに2020年を見据えていた。

チェッカーフラッグは受けられなかったものの、「GTチャレンジ」の出走台数が3台だったため、クラス3位のトロフィーを授与された。右は、普段D1グランプリでも共に活動するスタッフ。このレースでも川畑をサポートすべく、日本から同行した。
REPORT/長野達郎(Tatsuo NAGANO)
PHOTO/Doug Berger、トーヨータイヤ(TOYO TIRE)、長野達郎(Tatsuo NAGANO)
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