スーパーSUV ウルスの祖「LM 002」誕生まで(1977-1986)【ランボルギーニ ヒストリー】

ランボルギーニLM002のフロントスタイル

Lamborghini LM 002

ランボルギーニ LM 002

 

 

ランボルギーニがオファーを受けた2つのプロジェクト

 

1970年代も半ばを迎え、12気筒のカウンタックや8気筒のシルエットといったミッドシップモデルが市場に投じられるようになると、ランボルギーニは世界から注目される存在となる。ニューモデルの開発や生産の提携について、さまざまなオファーが舞い込むようになるのもこの頃で、当時ランボルギーニを率いていたロセッティにとっては、それはまさに願ってもない話だった。この時、ランボルギーニがオファーを受けたプロジェクトこそが「BMW M1(E26)」、そしてアメリカの軍用車メーカーであるMTI(モビリティ・テクノロジー・インターナショナル)が製造したオフロード走行車を再設計し、ランボルギーニのブランドで再生産する、いわゆるミリタリープロジェクトのふたつだった。

 

BMWからオーダーによりランボルギーニが製作したM1

BMWからのオファーによってランボルギーニが設計を担当したM1。エクステリアデザインはジョルジョット・ジウジアーロ率いるイタルデザイン。

 

BMW M1の基本設計を決めるも・・・

 

チーフエンジニアのバルディーニ、そして一度はランボルギーニを去ったものの、ロセッティの願いで再びコンサルタントとして開発チームに戻っていたダラーラを中心に、このふたつのプロジェクトは進行していった。BMW M1は、ダラーラが最も得意とする分野のモデルであり、軽量な角断面鋼管によるスペースフレームや不等長ダブルウイッシュボーンサスペンションなどの基本設計を決定し、ボディデザインはジョルジョット・ジウジアーロ率いるイタルデザインに委ねられ、あとは生産体制を整えるのみだった。だが、ここでランボルギーニは深刻な資金不足に陥り、最終的にBMWから提案された買収策も拒否。M1プロジェクトはランボルギーニに何も利益も残さない結果となってしまった。

 

ランボルギーニ・チータのフロントスタイル

リアにクライスラー製5.9リッターV型8気筒エンジンを搭載したプロトタイプ「チータ」。軍用車として開発されたものの、オーダーを受けることなく終わってしまう。

 

軍用車として生み出された「チータ」は後のヒントに

 

さらにもうひとつのMTIとのプロジェクトは、クライスラー製の5.9リッターV型8気筒エンジンをリアに搭載し、それに3速ATを組み合わせて4輪を駆動、チューブラーフレームに4輪独立のサスペンションを採用するという、いかにもランボルギーニらしい構成のプロトタイプを設計した。別会社によって製作されたそれは「チータ(Cheetah)」とネーミングされ、1977年のジュネーブ・ショーでワールドプレミアされる。だが、このミリタリービークルは、軍に採用されて初めてビジネスとして成立するものであり、結局軍用車としてオーダーを受けることはなかった。このチータもまた、利益を生み出すことはないままに終わってしまう。

 

だがチータの存在は、ランボルギーニにひとつのニューモデル開発のヒントを与えてくれた。現代ならばSUVと呼ばれるであろう、オンロードやオフロードなど走りのステージを選ばず機動力に富み、しかもランボルギーニらしい高性能でダイナミックなデザインを持つモデルを、新たなプロダクトとして市場へと投じてみたいという意欲がランボルギーニには生まれたのである。

 

ランボルギーニLM002の走行シーン

プロトタイプのチータがリアエンジンだったのに対して、LM 002はフロントに搭載。しかもカウンタック譲りのV12が積まれた。

 

カウンタック譲りのV12を積む「LM 002」

 

プロトタイプのチータから始まり、ランボルギーニはLM 001、LMA、LM 002、LM 002 ラリーカー、LM  003、そしてLM 004といったモデルを企画し製作している。この中で唯一、1986年からセールスされたのはLM 002で、これはチータのようにリアではなく、フロントにカウンタック LP 5000 QV用の5.2リッターV型12気筒エンジンを搭載したモデル。フロントのボンネット中央が大きく盛り上がっているのは、ダウンドラフト型のキャブレターを使用しているためだ。チータでエンジンが搭載されていた部分は4人分の簡易座席を備えるラゲッジスペースへと変化している。4WDシステムはハイとローの副変速機を持つパートタイム式で、センター、フロント、リアの各デフにはすべてリミテッド・スリップ・デフが備わっている。最高速度は210km/h。それはオフロードの王者と誰もが認める数字だった。

 

ランボルギーニLM002のリヤスタイル

現在ラインナップされるスーパーSUVウルスの原型とも言えるLM 002。その存在価値は今になってこそ大きく映る。

 

LM002のDNAは今、ランボルギーニがSSUV=スーパースポーツ・ユーティリティ・ヴィークルと称するウルスへと継承され、世界中のカスタマーから高く支持されている。それは、1998年に新たにランボルギーニの親会社となったアウディがあるからこそ経営が安定し、幅広いモデルラインナップを生み出す直接の理由となっていることは言うまでもない。

 

 

【SPECIFICATIONS】

ランボルギーニ チータ

発表:1977年

エンジン:V型8気筒OHC

総排気量:5898cc

最高出力:134kW(183ps)/4000rpm

トランスミッション:3速AT

駆動方式:4WD

車両重量:2042kg

最高速度:167km/h

 

ランボルギーニ LM 002

発表:1986年

エンジン:60度V型12気筒DOHC

総排気量:5167cc

最高出力:331kW(450ps)/6800rpm

トランスミッション:5速MT

駆動方式:4WD

車両重量:2700kg

最高速度:210km/h

 

 

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)