新型ランドローバー ディフェンダーのチーフデザイナーを大谷達也が直撃【インタビュー】

新型ディフェンダーのデザイナーにインタビュー、ジェリー・マクガバン氏

新型ディフェンダーのチーフデザイナーに訊く

 

新型ディフェンダーの日本発売を機に来日したランドローバーのチーフデザイナー、ジェリー・マクガバンにインタビューするチャンスを得た。ちなみに、およそ70年振りに新型へと生まれ変わったディフェンダーのセールスは好調で、先行予約モデル“DEFENDER LAUNCH EDITION”はわずか4日間で予定台数の150台を完売。現在は先行予約モデル第2弾“DEFENDER STARTUP EDITION”の受注が行なわれているところだ。

 

ただし、2代目ディフェンダーのスタイリングは、1948年にランドローバーの名でデビューした当時とは大きく異なっている。新旧で共通しているのはボディサイドのシンプルな面構成くらいで、立派さという面でもクオリティ感という面でも新型は先代を大幅に凌いでいるように思う。

 

新型ディフェンダーのデザイナーにインタビュー、ジェリー・マクガバン氏

ジャガー・ランドローバーでチーフデザインオフィサーを務め、新型ディフェンダーのプロダクトを担当したジェリー・マクガバン。

 

Land Rover Chief Dsign Officer:Gerry McGovern

ランドローバー  チーフデザインオフィサー:ジェリー・マクガバン

 

「新型ディフェンダーの形状はとてもシンプルで、ボディの断面は際立ってクリーンに仕上げました」とマクガバンはいう。

 

「ボディを構成するラインはどれもすっきりとしていて全体のスタイリングを邪魔していません。これと質の高いデザインを両立させるためには、ボディパネルは目に見えて洗練されている必要がありました。そこで新型では何時間、何日間、何ヵ月間もかけて表面の仕上げを確認し、生産部門のスタッフと生産の実現性について検討するなど、緻密な作業を繰り返しました。初代ディフェンダーはボディパネルの面作りが不正確で波打っていましたが、そういうクオリティは現在では受け入れられません。もしもそんなものを製品にしたら、私はクビになっていたでしょう(笑)」

 

新型ディフェンダーのデザインは、まさにマクガバンが理想とするものだろう。注意深く検討されたプロポーションや精度の高いボディパネルのおかげで、特別なデザイン要素なしでも充分に個性的なスタイリングに仕上がっている。マクガバン率いるデザインチームの優れた手腕なしに、新型ディフェンダーは完成しなかったはずだ。

 

新型ディフェンダーのデザイナーにインタビュー、ディフェンダーのフロントスタイル

昨年の11月に代官山で開催されたランドローバーのポップアップストアに展示された新型ディフェンダー。

 

旧型ディフェンダーの走破力は軽量さゆえだったが・・・

 

その一方で、私は一抹の寂しさを感じていた。

 

私にオフロード走行の基礎を教えてくれたのは初代ディフェンダーだった。1990年代初頭、私はランドローバーに招かれてスコットランドを2度ほど訪れたことがある。いずれもスコットランドの道なき荒野をランドローバーの各モデルで進みながらオフロードにおけるクルマの操り方を学ぶプログラムだったが、ここで参加車両がスタックするたびに救助に駆けつけたのが初代ディフェンダーだった。

 

そして私自身もプログラム中に何度かディフェンダーのステアリングを握ったが、当時のレンジローバーやディスカバリーと比べてもディフェンダーの踏破能力はずば抜けて高く、滑りやすい岩場だろうと深い泥道だろうがディフェンダーだったら難なく走り抜けられたことを思い起こす。

 

なぜ、ディフェンダーのオフロード性能は他を圧していたのか? オフロード性能を決める要因としては、アプローチアングル/デパーチャーアングル、ロードクリアランス、ホイールストローク、四輪に無駄なくトルクを配分できる4WD機構など様々あるが、同じランドローバー製品のなかでもディフェンダーが傑出していたのは、車重の軽さに最大の理由があったはず。軽ければこそ、ディフェンダーはそのシンプルなメカニズムにもかかわらず、レンジローバーやディスカバリーさえ出し抜く走破性を発揮できたのである。

 

新型ディフェンダーのデザイナーにインタビュー、ジェリー・マクガバン氏

新型ディフェンダーのプロダクト及びコンセプトについて、デザイン観点からプレゼンを実施。合理的なデザイン理論と先代をリスペクトするエモーショナルな語り口が印象的だった。

 

新型が獲得した進化はオフロードにも活きる

 

ところが、新型ディフェンダーはこの“軽量さ”が少なくとも外観からは感じられない。それどころか、どちらかといえば重厚に見える傾向さえある。その点をマクガバンに指摘すると、こんな答えが返ってきた。

 

「まず思い起こしていただきたいことは、新型はオリジナル・ディフェンダーよりもずっとオフロード性能が高い点にあります。これはヒルディセントコントロールなど高度に洗練されたテクノロジーによって実現したものです」

 

「もうひとつ心にとめておいていただきたいのは、安全性を中心とする法規制の問題です。フロントの衝撃吸収構造、サイドのエアバッグ、様々な歩行者保護に関する規定などはオリジナル・ディフェンダーが開発された当時は存在しませんでしたが、新型には装備されています。さらにいえば、オリジナル・ディフェンダーは1日乗っていたら腰が痛くなりました。そうしたことも現在では許されません」

 

冷静に考えれば新型ディフェンダーは決して重くない。ロングホイールベース・ボディの場合、全長5m、全幅と全高はほぼ2mながら車重は2.2トンを切っている。軽量なアルミモノコックボディを新たに採用した恩恵だろう。

 

そうした事実とともに私が自分を恥じたのは、普段は自動車技術の進歩を前向きに捉えている私が、ディフェンダーの車重増を正当に認められなかった点にある。安全性、環境性能、快適性への要求が高まる一方の現在、自動車の車重が増加傾向にあるのはある意味でやむを得ない側面がある。

 

新型ディフェンダーのデザイナーにインタビュー、ジェリー・マクガバン氏

新型ディフェンダーの完成度について絶対的な自信を覗かせるジェリー・マクガバン。新型ディフェンダーの国内におけるデリバリーは2020年秋以降になる見通しだ。

 

オリジナルをリスペクトしつつ新型はバリューを提供する

 

重要なのは、エンジニアたちがこうした課題に果敢に立ち向かい、車重が重くなりながらもより安全で省燃費かつ環境負荷が小さい新型車を生み出している点にある。その点を理解すればこそ、私は安易に「昔のクルマはよかった」と口にしないことにしている。ところが、ディフェンダーに限っては先代への愛着から冷静な判断がゆらぎ、知らず知らずのうちにノスタルジーを優先していたようだ。まったくもってお恥ずかしい話である。

 

しかし、マクガバンはあくまでも最新のクルマ作りに肯定的だった。彼らは安全性の進化を支持し、高品質化を追求し、テクノロジーの進化に賛同している。

 

「私も皆さんと同じようにオリジナル・ディフェンダーをリスペクトしています」とマクガバン。「けれども、時代は変わりました。新型ディフェンダーはまず安全であり、そのうえでオンロードでもオフロードでも高い性能を発揮する必要がありました。そのような要素をすべて盛り込んだ新型ディフェンダーは、オリジナルを上回るバリューのクルマに仕上がったと自負しています」

 

自動車の未来に夢を馳せる楽しさ。そんな喜びを、マクガバンたちは新型ディフェンダーを通じてもう1度教えてくれたような気がする。

 

 

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)

 

 

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