スーパー耐久に参戦する新興チーム「Max Racing」に密着! 【動画レポート】

一時はトップに踊り出た田中哲也選手が乗るRC F GT3

そもそもスーパー耐久とは?

 

スーパー耐久シリーズ、通称“S耐”は1990年に発足したN1耐久シリーズを前身とするツーリングカーレースだ。ルーツは市販車をベースに小規模の改造を施したマシンを使った、ジェントルマンドライバー(アマチュア)による草レースである。この一般参加型レースであるS耐は年々人気が高まっており、2018年にはシーズン戦の1つとして、国内では10年ぶりとなる24時間レース「富士 SUPER TEC 24時間」が始まったことで、さらに大きな盛り上がりをみせている。

 

参戦マシンは主に排気量や駆動方式の違いによって分類される。近年は、FIA GT3やGT4、TCRといった国際規格のレース車両の参加も認められており、2019年シーズンは計8クラスで、トータルのエントリー台数は60台にも及んだ。上位クラスではアマチュア+プロの3〜4名のドライバーによってチームを編成。うち1名は必ずジェントルマンドライバーとし、最低義務走行時間はレース時間の20%以上などといったルールが定められている。

 

決勝スタート直前の様子

決勝スタート直前の様子。MAXレーシングは、4番手からのスタートとなった。

 

新興チーム「Max Racing」に密着

 

今回、2019年11月に岡山国際サーキットで開催された2019シーズン最終戦におけるMax Racingの戦いに密着した。

Max Racingは、2018年シーズンよりFIA GT3マシンを使った最上位のST-Xクラスに、レクサスRC F GT3を擁し挑んでいる新興チームだ。チームオーナーのGo Max氏は、ポルシェ カレラ カップへの挑戦を経て、現在はフェラーリ チャレンジ APACに自らフル参戦するジェントルマンドライバーとしても知られた人物である。

 

2019年シーズンのMax Racingのドライバーラインアップは、ジェントルマン枠であるAドライバーには多忙なGo Max氏に代わって田中 徹氏が、BドライバーはGo Max氏が長年ドライビングのコーチとして師事するレーシングドライバーの田中哲也氏、そしてCドライバーは、現役のSUPER GTドライバーでもある佐藤公哉選手という顔ぶれだ。

 

Max Racingは開幕戦の鈴鹿でいきなり2位表彰台を獲得、第2戦の菅生でも2位と好調な滑り出しをみせた。しかし第3戦の富士24時間は諸事情により欠場。第4戦オートポリスでは予選でポールポジションを獲得するも決勝は4位で終えた。第5戦のツインリンクもてぎでは、一時はトップを走るもリタイヤに終わっている。これによりシーズンタイトル獲得の可能性はなくなったものの、せめて1度でも表彰台の1番高いところを目指そうとチーム一丸で臨んだ岡山での最終戦だった。

 

ジェントルマンドライバーとして参戦する田中徹選手

ジェントルマンドライバーとして参戦する田中 徹選手。RC F GT3は、速さはあるとはいえ、乗りこなすには難しいマシンだという。

 

予選4位。その要因とは?

 

土曜日の予選は、Aドライバー 田中 徹とBドライバー 田中哲也のベストタイムの合計によって決まる。Aが1分31秒126、Bが1分30秒134。合計タイムは3分1秒260で、4位という結果だった。ポールポジションの#777 D’stationアストンマーティンヴァンテージGT3とは2.079秒の差をつけられていた。

 

2018年の最終戦からAドライバーとしてチームに加入した田中 徹は、S耐参戦歴は10年以上を数えるジェントルマンドライバーだ。初めてドライブしたGT3マシンには苦労しているという。

 

「とにかく難しいクルマです。これまで乗ってきたマシンよりも速さがあることももちろんですが、このGT3には独特の癖がある。電子制御をあらかじめ予想しての操作が求められます。そのあたりはどうしても自分だけでは解決できない。そういうときにやはり哲也さんの助言が重要になります」

 

インタビューに応じる田中哲也選手

Bドライバーを務める田中哲也選手。4番手スタートではあるものの、着実にラップを重ねれば勝てるチャンスはあると語る。

 

プロドライバー 田中哲也の見解

 

Max Racingにおいて長年コーチ兼ドライバーを務める田中哲也は予選後このように話していた。

 

「2018年からのまだ新しいチームで、ワンメイクであるピレリタイヤとのマッチングにも苦労してきましたが、2019年は少しづつ良くなってきています。1発のタイムと決勝に向けたセットとのバランスをあわせるのが難しくて予選結果はもう一歩でしたが、決勝は長いレースですし、着実にラップを重ねていけば勝てるチャンスはあると思っています」

 

インタビューに応じる佐藤公哉

Cドライバーの佐藤公哉選手。2019シーズンはSUPER GT300クラスにも参戦。決勝前、慎重に、だけど全開で行きます! と現役プロドライバーらしく自信に溢れたコメントを残した。

 

Cドライバーの佐藤公哉は、ヨーロッパでフォーミュラレースを重ね、2013年にはF1若手合同テストに参加しF1をドライブした経験ももつ。2019シーズンはSUPER GT300で、マザーシャシーの86をドライブした現役GTドライバーだ。そんなプロからみたS耐の魅力をこう話す。

 

「参加台数も多くて、レベルも高い。ジェントルマンドライバーが腕を磨くにはいいカテゴリーだと思います。プロとアマが混走することで、いい意味で緊張感があって、長時間の耐久レースですから何が起こるかわからない。レースですからそれで得をすることもあれば、もちろん損をすることもある。そこが面白いですね。最終戦ですからいいリザルトを残したい。今日は慎重に、だけど全開でいきます」

 

レース中のMAXレーシング RC F GT3

スタート直後、田中 徹選手のミスにより順位を落としたものの、その後すぐに4位へと順位を挽回した。

 

決勝は3時間の耐久レース

 

日曜日の決勝レースは3時間の耐久レースだ。2度のドライバー交代が義務付けられており、第1スティントを田中 徹が、第2スティントを佐藤公哉が、第3スティントを田中哲也が担当する作戦だった。

 

午後13時33分、決勝レースがスタート。田中 徹がスタート時のミスで1つ順位を落とすも、すぐに4位へと順位を挽回。順調にラップを重ねていく。最低義務走行時間をクリアした23周目にピットイン。佐藤公哉へとドライバー交代を行う。このときチームは、ピット作業短縮のため左側2輪のみタイヤ交換する作戦をとった。これは前をいく#1 GTNET GT3 GT-Rを追い抜くためのものだった。佐藤は猛追をはじめ7秒以上あったギャップをみるみるととめていく。20周ほどラップを重ねた頃には、その差は1秒をきっていた。

 

RC F GT3で戦線するMAXレーシングのレース中盤の模様

佐藤選手によれば、RC F GT3は高速コーナーこそ得意とするものの、ストレートが伸びないとマシンの特徴を語る。

 

佐藤は冷静に振り返る。

 

「うちのマシンは高速コーナーは速いのですが、ストレートスピードが足りないので、相手のミスがなければ追い抜くのは難しい。チャンスがあればと狙ってはいました」

 

ちょうどその頃、#62 LEXUS RC350のタイヤが外れるトラブルが発生し、FCY(フルコースイエロー)に。そして、セーフティカーが導入された。

 

レース中のMAXレーシング レクサスRC F GT3

田中哲也選手により、一時はトップにたったMAXレーシング。しかし、その後は・・・。

 

レース中盤、チームは大きな賭けに出るも

 

レースの残り時間は約1時間半。チームは瞬時の判断で、佐藤をピットインさせ、第3スティントの田中哲也へとドライバー交代を行った。実はこれは大きな賭けだった。それが功を奏しレース後半にはトップに立つ。#9 MP Racing GT-Rをドライブする影山正美とのデッドヒートが繰り広げられ、往年のレースファンにとってもたまらない展開になった。ゴールまで30分を切ったタイミングでも、Max Racing 田中哲也はトップを走っていた。しかし、95周目にピットインを余儀なくされる。ガス欠寸前だった。ふたたびコースインし、最終的に111周を重ねて4位という結果に終わった。

 

「あのセーフティカー導入のタイミングでドライバー交換した時点で、残り1時間半を無給油で走り切れないことはわかっていました。ただ、もしまたFCYやSCが入る展開になれば、それはどうなるかわからない。トップとの差が大きくひらいていましたから、優勝を狙うためにはああいった攻めた作戦が必要だったと思います。ミスはなかったし、チームは本当によくやったと思います。負けたけれど満足しています」とレース後、田中哲也は晴れ晴れとした表情でこう話した。

 

レース中のMAXレーシング RC F GT3

4番手スタートで、4位ゴール。悔しさは残るものの、レース運びには満足していると、レース後に田中哲也選手は語ってくれた。

 

Max Racingは最終戦4位、年間シリーズポイントも4位でS耐参戦2年目のシーズン終えた。Max Racingはプロのレーシングチームではない。ジェントルマンドライバーであり、チームオーナーであるGo Max氏の、SUPER GTへの挑戦の一歩であり、そして若い世代にもクルマの魅力を伝えたいという思いの結実なのだ。Max Racingの挑戦はこれからも続いていく。

 

 

REPORT/藤野太一(Taichi FUJINO)

PHOTO & MOVIE/宮門秀行(Hideyuki MIYAKADO)