「アンプラグド・パフォーマンス」が掲げるEVチューニングの未来【東京オートサロン 2020】
公開日 : 2020/02/08 17:55 最終更新日 : 2020/02/08 17:55
UNPLUGGED PERFORMANCE
アンプラグド・パフォーマンス
今後の展開に注目が集まるテスラ専門チューナー
「我々はメルセデス・ベンツにおけるAMGのような存在を目指す」
彼らが数年前に声高に訴えていたのを思い出す。アンプラグド・パフォーマンスの代表を務めるベン・シャフナー氏の言葉だった。彼らはカリフォルニアにあるテスラ・デザインスタジオと隣接する場所に本拠を構え、テスラ自体とも深い関係を持つというEV専門チューニング・ブランドだ。
旧くからのクルマ好きにとっては、さぞかし新人類的考え方を持つのかと思った。しかし意外にも彼らは、20年近く内燃機関のチューニングに取り組んできていた。新人類的考え方を持つテスラを、旧来のクルマ好きに認めさせる活動なのかもしれない。

アンプラグド・パフォーマンスはテスラ モデル3に対して、カーボン製エアロパーツ、オリジナル鍛造ホイール、コイルオーバーサスペンションキット、アジャスタブル・スウェイバー、アジャスタブル・アーム、大型カーボンセラミックブレーキキットなどを用意した。インテリアにはフルバケットシートや4点式ハーネスも装備。パワートレインはノーマルのままだ。
テスラ モデル3をアグレッシブに装う
2020年の東京オートサロンに展示されたアンプラグド・モデル3は、そうした考え方が反映されたものだった。軽量カーボン素材を使ったエアロパーツに、メカニカルな車高調、アンチロールバー、大型ブレーキシステムなど、やり方は旧来と変わらない。
昔ながらのステッチを持つフルバケと4点式ハーネスなんて、どこか懐かしささえ感じさせる。彼らはパワートレインを一切触らずにモデル3の潜在能力を高め、簡単に言うならナンバーの付いたクラブマン向けのサーキットマシンに仕立ててきていた。

パワートレインは純正のまま。モデル3パフォーマンスの場合、2基のモーターが独立して前後に駆動配分を分配する4WDを採用する。アンプラグド・パフォーマンスはこの先進機構と、昔ながらのチューニング術との共存共栄を目指す。サーキットでのタイムアタックを重ね、今後も煮詰めていくという。
EVチューニングの在るべき姿のひとつを提示
モデル3に限らずEVというものは、その重心や重量配分、トルク曲線などが内燃機関とは大きく異なる。そうした意味で、空力特性や足まわり、ブレーキのセッティングを新しい概念を持って煮詰めることには大きな意義があると言えそうだ。EVならではの利便性や航続距離、出力性能などは本家テスラに任せておいて、徹底的にフットワーク性能を煮詰めるチューナーに徹する。
「速さはもう充分。あとは内燃機関のドライビンセオリーを知る人間に、違和感を感じさせないフィーリングを」という活動である。アンプラグド・パフォーマンスの活動は、サーキットユーザー云々に限らず、EVをより普及させるカギを握るかもしれない。単純な速さだけでなく、そのドライバビリティに魅了されてEVに手を出す人間が増えれば、EVの未来はさらに光り輝くに違いない。
REPORT/中三川大地(Daichi NAKAMIGAWA)
PHOTO/降旗俊明(Toshiaki FURIHATA)